企業の節税の一つとなる「生命保険への加入」について

社会人になると多くの人が加入を検討し、その内の大半が実際に何らかに加入することになる生命保険。

加入者が死亡した場合、あるいは病気や怪我などで入院が必要になり、入院費、治療費が発生する場合に、保険会社から遺族、あるいは本人に保険金が支払われるサービスです。

この生命保険は個人に向けたもののみではなく、企業、つまり法人に向けたサービスも存在しています。

ここでは、その法人向けの生命保険商品の概要と、これが果たして企業の税金対策になるのか否かという点についてまとめていきます。企業経営に携わる立場であれば、こうした知識は必須のものとなるでしょう。

法人向けの生命保険商品とは

法人向けの生命保険商品を“法人保険”と表現することがありますが、これは、企業そのものに保険をかけるものではありません。保険の対象となるのは、あくまでもその企業に勤める個人です。

それは大きく経営陣と従業員に分類することができ、それぞれに保険をかけることが可能となっています。

まず、従業員に用意されている福利厚生保険に関してですが、もし死亡保険に加入していれば、仮にその従業員が死亡した場合に、遺族に対して保険金(死亡退職金)が支払われることになります。

この死亡退職金は、相続税の対象と定められているため、受け取った従業員の家族などは、その保険金額に応じた税金を納める必要があるものの、法定相続人の数に500万円を掛け合わせた額分は非課税となっているため、そこまで大きな負担となることはありません。

ただし、この非課税枠の対象となるためには、従業員が亡くなったあと3年以内に、死亡退職金という名の保険金の支払いが確定されていなければいけません。

従業員向けの法人保険は、死亡に関するものだけではなく、その企業に勤めている間に患った病気や怪我などに関して、保障される医療保険を特約として加えることも可能です。

病気や怪我などで、仕事ができず収入が減ったとしても、こうした保険に加入しておくことで保険金を受け取り、生活不安などを和らげることができるわけです。

ここまでは、企業に属する1個人に対しての保険の概要を説明しました。次に、経営者対象の保険についてですが、経営者などの役員も、従業員と同様の保険に加入することができ、死亡や病気や怪我など、万が一の時には保険金を受け取ることが可能です。

しかし、経営陣にとっての万が一は、他にも考えられるでしょう。その事態を救ってくれるのが法人保険の“貯蓄性”です。

法人保険の重要な役割である“貯蓄性”とは

従業員はもちろん、経営陣の死亡時や病気及び怪我などに対して保険金が支払われる保険内容は、“保障性”を有していると表現できます。つまり、何かあった際に保険金によって家族や本人の生活、治療費などを保障してくれるわけです。

ここで紹介するのは、それと同時に得られる“貯蓄性”です。

100名の従業員がいる企業が、1人につき5,000円を毎月保険料として保険会社に支払っているとしましょう。企業が全て支払うのか、それとも従業員にも一部支払ってもらうのかは企業ごとに異なってきますが、毎月50万円という額を法人保険として支払っていることになるわけです。

ポイントとなるのは、この保険商品を解約した際の保険料の扱いです。もし保険の加入を継続せず解約に至った際には、企業は保険会社から、これまで支払った保険料(解約返戻金)を返してもらうことができます。

企業としては、保険会社に毎月50万円をただただ支払っていたわけではなく、銀行などの金融機関と同様に保険会社に預けているという解釈ができるでしょう。つまりこれが、法人保険における貯蓄性を表しています。

企業を経営していれば、時代の流れやその時々の経済状況などにより、経営不振に陥ることもあるでしょう。資産が減っていけば、やがては倒産を避けることができない場合もあります。

そんな時に、法人保険を解約し解約返戻金を受け取ることができれば、倒産時期を先延ばしすることができますし、あるいは再起のチャンスを伺うために返ってきたお金を活用することも可能となるはずです。

こうした点を考慮しても、法人保険の加入には“メリットがある”と考えることができるでしょう。

法人保険はなぜ節税につながるのか

ここまでは、法人が加入できる生命保険サービスについて説明しました。万が一のことを考えれば加入するメリットがありますし、貯蓄性も備えているとなれば、従業員のみならず企業にとっても非常に大きなメリットを持つ商品であることが理解できるのではないでしょうか。

では、なぜこの法人保険が節税につながるのでしょう。この核心部分について考えてみます。

そもそも、企業が節税するためには、何よりも経費をどれだけ計上できるか、ここが大きなポイントとなってくるでしょう。経費が多くなれば、それだけ(見かけ上の)利益や所得を減らすことができ、課税される税金額も減らすことができるわけです。

ここまで説明すれば、企業を経営している人にとってはわかることだと思いますが、つまり、法人保険に加入し保険会社に保険料を支払えば、その保険料が損金として認められるため、経費の額を増やすことができ、支払う税金の額を減らすことが可能となるのです。

ただ、支払う保険料のうち、損金として認められる金額や割合は、死亡保険の種類等によって変わってきます。それと同時に、解約返戻金の扱いも保険の種類等によって変化するため、ここを確認した上で加入や損金としての計上を行わなければいけません。

もし損金として扱うことが認められなかった場合、その部分に関しては企業の資産としてみなされ、課税対象となってしまいます。

法人保険に加入するということは、毎月決まった額を保険会社に支払うことになるわけですから、これは資産を減らすことになるはずです。ただ、こうすることで課税される資産を減らし、納める税金を減らすことができるわけです。

もちろんこれは、法律的には何の問題もない行為です。このようなことをしても、この行為を対象に、税務署から何か指摘されたり調査をされたりということはありません。

また、解約返戻金の扱いも保険の種類等によって変化すると説明しましたが、解約返戻金が全て益金となるケース(生活障害保証型定期保険など)がある一方で、保険料を差し引いて残った分のみが益金となるケース(長期平準定期保険や終身保険など)もあるため、このあたりも見極めながら保険商品を選択し、加入するようにしましょう。

企業が法人保険に加入する際の注意点

会社を経営する上で、ぜひ加入を検討したい法人保険。上手に活用すれば節税対策になりますし、もちろん従業員や経営者、あるいは企業の万が一に備えるという意味でも、重要な意味や役割を持ってくるでしょう。

ただ、法人保険にも様々な種類があり、保険会社によって商品内容がそれぞれ異なってきます。できるだけ多くの保険会社とコミュニケーションを図りながら、企業や経営者、あるいは従業員にとってベストな選択をするよう心がけなければいけません。

法人保険を有効に活用し、全ての人にとって意義のある企業運営を心がけましょう。

【編集部】

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