特注建具の色が違い片道4時間…建築資材営業マンの失敗談。

営業マンの体験談

特注建具の色が違い片道4時間…建築資材営業マンの失敗談。

私は地方の商社で建築資材のルート営業をしていました。その会社を選んだ理由は、地元に拠点があることや大学で流通経済論を学んだことで商社に興味を持ったというものでした。
特に強いこだわりがあって始めた仕事ではありませんが、2年目にはそこそこ結果を出していたので充実はしていました。給料はものすごくいいわけではありませんでしたが、家賃補助が出るのでトータルの待遇に不満はありませんでした。残業も極端に多いということもありませんし、外回りなので休憩を多めに取ろうと思えば可能でした。

営業と言っても、伝票を書いて事務仕事もしますし、急ぎの注文をもらえば配送もします。営業所に倉庫が併設されていたので、在庫管理や発注も大事な仕事です。仕入れから販売、お金の回収までやって営業の仕事が完結します。

最初は先輩の仕事に追いつこうととにかく必死でした。ベテランの仕事は早く正確で鮮やかなので、憧れの気持ちもありました。一方で細かい段取りも非常に熱心に時間をかけてやっていました。例えば、トラックで向かうのが難しそうな建築現場に配達をしなければならないときなどは、現地に行って道路の幅を測ってくるということもありました。手間をかけることでクレームの少ない仕事ができるものだと感銘を受けました。

私も段々と仕事を覚えて一人前として働いていた頃に、事件が起きます。私の担当のお客様が、特注で制作してもらった建具が間違っていると言うのです。それにより工期が間に合わず大激怒していました。確認すると、確かに色の指定が変です。しかし、その見積もりで確認依頼を出していて、発注したのはお客様です。実際に見積もりを出した事務も、おかしいと思ったので念を押して確認したと主張します。

とにかく、正しい商品をすぐに納品しなければなりません。メーカー側にすぐに依頼しました。ただし、メーカーの営業の態度はとても冷たいものでした。「あなたは自分のお客様の注文をなぜちゃんと確認してなかったのですか」と言わんばかりの態度でした。

確かに私は確認してない件ですが、外回りの最中に営業所に届いた注文を確認するのは不可能です。また、後から確認してわかったことですが、間違った原因はメーカーの事務の人が入力誤りをしたことのようでした。その見積もりを、おかしいと思いつつお客様に確認依頼をして、そのまま注文に至ったようです。

ケンカしてる時間はないので真相追及は後回しにして、すぐに制作してもらい私自身が工場に引き取りに行くことになりました。高速道路で片道4時間かかります。仕上がり時間の19時に合わせて到着するように向かいました。その道中もお客様から、まだかまだかと急かす電話が何度もかかってきました。今日中に商品を引き取りますから明日の朝一で配達しますと伝えると、信用できないからすぐに持ってこい、などと言います。雨が降っていて日も落ちて商品を引き取る頃には、私もかなり参ってました。そのまま配達に向かい、お客様の会社に商品を伝票を置いたのは日付が変わってからでした。

会社に戻ると、先輩が残ってまだ仕事をしていました。私の分のおにぎりを用意してくれてました。何も食べていなかったことを察してくれてたのだと思います。

その失敗をきっかけに、仕事の正確さをより強く意識して働くようになりました。成績は上がりました。売り上げの達成率でエースの課長に肉薄したこともありました。しかし、まだ経験も浅い私にはそこまでの売り上げを消化できるほどの仕事力はなく、疲労は限界まで蓄積されていきました。
電話を取っても、自分が会話をしているということがわからなくなったり、文字を書いてたらペンを手に刺してしまったりしました。最終的には、営業車で電車とぶつかる事故を起こしてしまいました。私は命の危険を感じて、次の日に辞職願を出しました。

私は営業という仕事を辞めてしまいましたが、もしかつての私のような若手営業にアドバイスをするとしたら、身の丈に合った仕事をするように言いたいです。やはり、できないものはできないし、数値を追いかければ限りのないのが営業です。浅いキャリアでベテランを肩を並べる必要もないし、必要以上に責任感を強く持つこともなかったと思います。