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  • サブスクリプションモデルの新たな局面を解説する一冊
    『サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル』 (日経クロストレンド編 BP)
  • サブスクリプションモデルの新たな局面を解説する一冊
    『サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル』 (日経クロストレンド編 BP)

    2019/08/19  ビジネス野望

    今、多くの企業、ビジネスパーソンが注目する「サブスクリプション」というビジネスモデル。テクノロジーが日々進化するように、このビジネスモデルもまた「進化型」であることを忘れてはならない!

    (徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)

     

    サブスクリプションモデル2.0とは何か?

     

    文字通りの「顧客至上主義」を突き詰めることが、顧客に選ばれるサブスク事業を作るうえで最も肝要になる。(日経クロストレンド)

     

     

    新聞の講読料などで設定されていた「サブスクリプション」型のサービスが急速に拡大し、日本でも話題になっています。NetflixやSpotifyなどのコンテンツ配信サービスだけでなく、最近ではメーカーが参入するなど、サブスクリプションモデルも進化を遂げています。

     

    日経クロストレンドは『サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル』の中で、サブスクリプションモデル2.0を以下のように定義します。

     

    通販企業などが展開してきた頒布会モデルや消耗品の定期購入を”サブスク1.0″とするなら、メーカーの参入、売り切りではなくシェア型、個別にカスタマイズして提供という特徴を持つ昨今の新サービスは、”サブスク2.0″と言えるだろう。

     

    このサブスク2.0において、企業は顧客に3つの価値を提供しなければなりません。

     

    • 新しい消費体験
    • 圧倒的な利便性
    • コスト優位性

     

    成功している企業は、「顧客にフィット」したサービスを目指し、常にサービスを改善させています。サブスクが他のECと大きく異なる点顧客とのコンタクトポイントです。

    事業者は絶えず顧客の使用状況を把握できるため顧客のニーズにサービスをフィットさせ続けることが可能になります。その結果、顧客のチャーンを防げ、継続率を高めることができるのです。

     

    流通・サービス業だけでなく、サブスクリプションモデルにキリントヨタなどのメーカーも参入し、顧客の財布を奪い合っています。サブスクが普及する中で、顧客はサービスへの期待値を高めています。流行りに乗って、サブスクサービスを始めたからといって成功するわけでなく、顧客満足を高めなければ、あっという間に競合に乗り換えられてしまうのです。

     

    驚異の「継続率95%」!高級バッグ借り放題「ラクサス」の強みは?

     

    月額6800円(税別)で高級バッグを借り放題できる「ラクサス」。平均継続率は95%を誇る。顧客を大事に考えるが故に「強制退会」も辞さない。そんなユニークな仕組みが支持を集め、LTV(顧客生涯価値)はいまだ増え続けていて計測不能という。

     

    エルメスやグッチなどの53ブランド、3万個超のバッグを月額6800円で好きなだけ利用できるラクサスの平均継続率は95%という数字を誇っています。顧客はスマートフォンのアプリで、使いたいバッグを選んで予約します。自宅に届いたバッグは会員であるうちは、返却せずにサービスを継続できます。別のバッグを使いたい人は、アプリから簡単に返却し、乗り換え可能です。アプリの利用者は約25万人(現在は30万人に増加)で、そのうち1万8000人が有料会員です。

     

    ラクサスの新規性はバッグを使い放題にした点です。同社社長の児玉昇司氏は本書のなかで、人気の秘密について語っています。

     

    通常のレンタルは自分の意思とは関係なく返却義務が生じる。この返却するという行為を人は嫌がる。例えば、レンタルDVD。売上構成比の半分を延滞料が占めるといわれる。これは返却を嫌がり、後回しにした結果、返すのを忘れている人が多いからだ。

     

    成功しているNetflixもDVDの返却を忘れたことからサービスを開始しましたが、このラクサスも返却という行為に注目したのです

     

    また、顧客行動を分析することで、損をしたくないというユーザー特性を把握します。顧客はサイト訪問から購買までに約5分の時間を使いますが、その間、95%の訪問者がサイトを出入りし、価格比較サイトをチェックしているといいます。

     

    顧客は選ぶ苦しみに時間を費やしていますが、ラクサスは選ぶ苦しみから顧客を解放することで、成功を手に入れたのです。

     

    借り放題なら、自分の好きなタイミングで返却できる。これなら嫌々返却する必要はない。借りたバッグが気に入らなければ、いつでも返却して新しいバッグを借りられるため、届いてからイメージと違って損した気分を味わう心配もない。その代わり、料金は月額制で毎月固定額を徴収する。そんなビジネスモデルにたどり着いた。(児玉昇司)

     

    サブスクリプションサービスは顧客だけでなく、企業側にも大きなメリットをもたらします。最大のメリットはLTVが無限大であることです。継続利用者が増えるほど、ラクサスは安定した収益を得られるようになり、収支計画が立てやすくなります。児玉氏によるとCPA(顧客獲得単価)」や原価が倍になっても、1ポイント継続率が上がるだけで全部取り戻せるとのことです。

    LTVが高まるほど、マーケティング活動にかける予算を増やせ、規模の拡大にアクセルを踏めるのです。

     

    顧客とのタッチポイントを分析する

     

    ラクサスはAIを活用し、チャーンを防いでいます。退会者の83%が使いたいバッグがないと回答していますが、その状況を改善するためにAIを徹底活用しました。

    AIによって利用者ごとに好みのバッグを優先的に表示し、顧客に最適なバッグを提案しています。顧客の潜在的な好みをAIが掘り起こすことで、顧客とのWin-Winの関係を構築しています。

     

    ラクサスは店舗情報のデータベースを保有しており、そのデータと利用者のスマホから取得した位置情報を連携したマーケティング施策にも取り組んでます。ラクサスのアプリの利用者が、グッチやコーチといったブランドの店舗を訪問した場合、その来店情報を基に、アプリのトップ画面の商品を並び替えて、そのブランド商品を優先的に表示し、バッグと利用者の出合いを生み出しているのです。

     

    さらにラクサスは顧客との関係でも常識外の行動に出ました。クレーマーやバッグの使い方が荒い顧客には、なんとレッドカードを与え、退場させてしまうのです。例えば、クレームを受けた担当者が、「相手の言葉使いが汚い」と判断した場合には、一発で利用停止処分となります。また、バッグを貸し出す前に写真を撮影しておき、返却時にも撮影し、ユーザーを選別しています。AIが写真を分析して傷や汚れをチェックし、使い方が荒いと判断した場合には、サービスを停止してしまいます。

    従業員はクレーマーに対応する必要がなくなり、働き方を改善することができました。対応にかけるコストを減らせ、月額6800円でサービスを提供できるようになったのです。

     

    ちなみに、サービスの利用停止を言い渡された顧客の9割は謝罪して、サービスの継続利用を申し出るそうです。驚くことに一度謝罪した顧客は、一転して優良顧客になることが明らかになりました。自信のあるビジネスモデルだからこそ、優良顧客だけが残るのです。

    顧客とのタッチポイントを意識し、小さな改善策を実施することで、ラクサスは成功を手に入れたのです。同社のサブスクリプションの取り組みから、私たちは多くのことを学べます。

     

    サブスクリプションモデルで成功するためには、顧客至上主義を突き詰める必要があります。顧客とのタッチポイントを分析し、小さな改善策を提供することで、顧客とのWin-Winの関係を構築できます。ファンを喜ばすことで、顧客のチャーンを防げ、継続率を向上できるようになるのです。

    この記事を書いた人の情報
    徳本昌大
    徳本 昌大

    複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
     サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
    https://tokumoto.jp/

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