現代の依存症「行動嗜癖」とうまく付き合い、時間価値を上げろ!
「スマホを見ていたらもうこんな時間」「暇なときは思わずゲームを開いてしまう。」などスマートフォン、ソーシャルメディア、ゲームに依存する若者が増え、これらが社会問題になっています。なぜ私たちは依存してしまうのか。それらとうまく付き合っていく方法はあるのでしょうか。
(徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)
ジョブズをはじめとするテクノロジー企業家たちは、自分が売っているツール――ユーザーが夢中になる、すなわち抵抗できずに流されていくことを意図的に狙ってデザインされたプロダクト――が人を見境なく誘惑することを認識している。依存症患者と一般人を分ける明確な境界線は存在しない。たった1個の製品、たった1回の経験をきっかけに、誰もが依存症に転落する。(アダム・オルター)
「スティーブ・ジョブズは自分の子供達にiPadを使わせないようにしていた。」という話は有名ですがiPhoneのアプリやゲーム、ソーシャルメディアなど、ほとんどのテクノロジー系プロダクトは、タバコと同じく、依存症になるようにデザインされています。
行動嗜癖とは、このようにアルコールやドラッグやタバコなどの物質を伴わない依存症のことを指します。アダム・オルターの僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかたには行動嗜癖の恐ろしさが紹介されています。
マイクロソフト社が2000人の若い成人被験者を対し、コンピューター画面に出てくる一連の数字や文字に注意を集中させるという実験を実施したところ、ソーシャルメディアで過ごす時間が長い被験者は、そうでない被験者に比べて、集中して課題をこなす能力が低くなるという結果に。
依存症を抱えると生活の質が低下し、仕事や遊びで力を発揮できず、他人との交流も希薄になる可能性も。重度の依存症と比べれば心に与える傷は軽度ですが、積み重なればしだいに人生の価値を著しく損なっていくことも十分に考えられます。
小学校高学年あたりから始まると言われるスマートフォンとソーシャルメディアへの依存。これによって人間の特性である「共感」する力を養う時間が奪われてしまうと言います。
1979年から2009年の間に発表された72本の研究論文を分析した結果、大学生の共感力が下がっていることが明らかになりました。彼らは他人の目線で考えることができず、他者への配慮をあまり示せないとのこと。ある調査では、10代の少女の3人に1人が、「(自分を含め、同い年くらいの子は)ソーシャルネットワークのサイトでは他人に意地悪になる」と答えるという驚きの結果も。
2015年に行われた調査によるとスマートフォン依存症の人は世界で2億8000万人。しかし、依存症ではなくとも軽度の行動嗜癖はかなり一般的に広がっていると著者は警告を発します。
神経科学者は長年、依存症状を刺激するのはドラッグやアルコールのような物質だけで、行動はまた別の反応であると確信していた。特定の行動をすることが快感になるとしても、薬物乱用に伴うような破壊的な切迫感にはつながらないと考えていたのだ。だが最近の研究では、依存行動と薬物乱用の反応は同じであることがわかっている。どちらの場合も、脳の奥深くにあるいくつかの領域がドーパミンを放出する。ドーパミンがドーパミン受容体にくっつくと、強烈な快感が生じる。
行動に依存する脳は2つの仕事をします。
① 多幸感を放出するドーパミンの量を少なくすることと、
② ドーパミン生成量が少なくなった状態への対処方法を必死に探すこと
常習者が依存対象を追い求める一方で、脳は快感を得るたびにドーパミンの放出量を減らすという、負の無限連鎖ができあがっていき、依存状態から抜け出せなくなるのです。ゲームやソーシャルメディアに依存する時間が増えるのも、この脳の仕組みによるものです。
では、どうすれば、ソーシャルメディアやスマートフォンの依存から抜け出せるのでしょうか?
デジタルデバイスやソーシャルメディアのプラス面を最大化する一方で、マイナス面を最小限にすることで、生活の質を高められます。依存状態から逃れるために、スクリーンから離れる時間を作って、自分が好きな人や仲のいい友達に直接会うようにしましょう。デジタルデバイスとリアルな人間関係を両立させることで、孤独を防げ、人生をエンジョイできるようになります。
現代ではiPhoneなどのデジタルデバイスなしで生きていくは難しいのが現状です。事実、メールやニュースアプリやソーシャルメディアを上手に使うことで、私たちはパフォーマンスを上げたり、離れた人とのコミュニケーションを上手に行えるメリットもあります。
スマートフォンやソーシャルメディアに依存せずに生活の質を高めたければ、それらと適度に距離を起き、リアルな人間関係を重視すべきです。
連載記事『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』②(アダム・オルター著 上原裕美子翻訳 ダイヤモンド社)はこちら
複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
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