M&A案件に関わってみると、実にさまざまなケースがあります。なかなか買い手企業が見つからないことも多くありますし、意外なことに数週間で譲渡まで進んでしまうことも。今回は、滅多に起こらないレアケースですが、複数の買い手企業候補が挙がり、プレゼン型でスモールM&Aを進めた事例をご紹介します。
売り手企業情報
スモールM&Aの案件内容によりますが、このようなノンネムシートの段階でも複数の買い手企業候補が現れることがあります。私の場合、「飲食店のスモールM&A案件があったら、この社長とこの社長にまずは情報共有しようかな」という候補先がいるのですが、このM&A案件の情報を得た際、たまたま飲食店経営者の友人たちと会う機会があったため、情報を少し共有してみました。その場で3名の飲食店経営者から「ぜひ詳しく聞かせてほしい」という返答をもらい、話を進めることになりました。
このM&A案件の場合、売り手企業(店舗)も買い手企業候補も、私とは友人関係でした。私がM&A案件を進める際、もっとも気を遣うのは、信頼関係を壊さないことです。これは、なにもM&A案件に限ったことではないのですが、1案件の成約のために信頼関係を壊しても良いことはないですよね。深く長い信頼関係に勝る資産はないと思います。
一般的に、M&A案件は仲介者が多いほど成約率は下がります。この案件の仲介者は私だけでしたので、かなりスムーズに話が進みました。すぐに各社とNDAを結び、決算書などの詳細情報を開示しました。たまたまですが、3名の買い手企業候補が同席している場でノンネムシートを共有しましたので、だれがどの程度検討段階に入っているのかは、本気度も含め、逐一他の買い手企業候補にも共有しながら進めました。全員友人なのですから、当然のことですよね。そういう手間は惜しんではいけないと思っています。これは、スモールM&Aにおけるマナーと言っても良いかもしれません。
詳細情報を開示してみると、3名の買い手企業候補は、いずれも本気度が高いことがわかりました。そこで、売り手企業と3名の買い手企業候補と相談し、各社からプレゼンをしてもらうことにしました。プレゼン内容は、
など、レストランの将来ビジョンや人事・労務、労働環境のことなどについてです。「ITを導入して、業務負荷を減らしていく」「料理人さんが仕事に集中できるように、事務作業は本社で引き受ける」「今の副店長から、4店舗目の店長候補を抜擢したい」など、各社からさまざまなアイディアや意見が出されました。結果、3名のなかから1社に絞り、事業譲渡を行うことになりました。
その後、店舗は5店舗まで拡大しており、各店舗の店長も退職せずに続けてくれているそうです。売り手だった元オーナーは、現在はときどきコンサルティング業をしながら、セミリタイア生活を楽しんでいます。スモールM&Aが成功したことによって、買い手も売り手も、そしてスタッフのみなさんも幸せになっている気がします。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
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