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  • 〝巨大プラットフォーマー〟は何をやっているのか!?
    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』 (田中道昭著 日本経済新聞出版社)
  • 〝巨大プラットフォーマー〟は何をやっているのか!?
    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』 (田中道昭著 日本経済新聞出版社)

    2019/05/16  ビジネス野望

    グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン…これら現代を代表する巨大企業を「GAFA」と呼ぶことは、もうご存じでしょう。しかし、注目すべきは米国だけではない! そう、中国のIT企業がものすごい勢いで世界進出を始めているのです。そのしくみ、戦略とは!?

    (徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)

    「GAFA」だけではない! 中国の「BATH」をおさえておこう

     

    模倣からスタートした中国メガテック企業が、今や独自でイノベーションを起こし、新たな価値を創造しています。後発者利益を獲得し、先駆者利益を創造するようになってきた中国勢の一連の流れには大いに注目する必要があります。(田中道昭)

                                                     『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』  より引用

     

    日本ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のビジネスの在り方に注目が集まっていますが、今年のCESで存在感を示していたのは、中国IT企業でした。実際、「JD.com」や「アリババ」が開発したテクノロジーに触れ、そのすごさに驚いた日本人も多いのではないでしょうか? 私(徳本)も期間中何度も2社のブースを訪問し、彼らが考えていることを脳にインプットしました。

    行動的な著者の田中道昭氏は、CESに飽き足らず中国現地を訪問し、本書『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』の中で余すところなく、彼らの最新情報を紹介しています。

    「BATH」とは、中国のIT企業バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの頭文字です。

    今回は本書から米国の「アマゾン」と中国の「アリババ」という2つの巨大企業をピックアップし、学んでいこうと思います。

     

    アマゾンは北米からヨーロッパ、日本を攻略して、アジアで勝利できるかがその未来のカギを握っています。中国で圧倒的な地位にあるアリババにとっては、アジア展開のあと、日本とヨーロッパを攻略できるかどうかがアマゾンに打ち勝つためのカギといえるでしょう。

    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』  より引用

     

    先日、私はベトナムホーチミンを訪問してきましたが、現地ではアマゾンの存在感はほとんどありませんでした。シンガポールの「Lazada」がシェアを高め、東南アジアのECを牛耳っています。このLazadaに出資しているのがアリババ。東南アジアにおいては、アマゾンよりはるかに先行しています。日米ヨーロッパのアマゾンに対して、アリババは中国、アジアで確実にシェアを伸ばしているのです。

     

    アマゾンの強みは何か?

     

    アマゾンは今やただの小売企業ではありません。オンライン書店から創業したアマゾンは、家電やアパレル、生鮮食品などに取扱品目を拡大し、電子書籍や動画配信などのデジタルコンテンツも手がけ、「エブリシングストア」となりました。そして今では物流やクラウドコンピューティング、金融サービスなどへと事業領域を拡大して「エブリシングカンパニー」へと変貌を遂げているのです。

    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』  より引用

     

    アマゾンは絶えずイノベーションを起こしてきましたが、創設者ジェフ・ベゾスは成長をやめようとしません。破壊的イノベーションを自ら起こす企業であり続けようとし、努力を重ねています。このようなことが可能なのは、ベゾスが既存ビジネスとの力ニバリゼーション(シェアの奪い合い)に躊躇しないことが大きな理由でしょう。

    アマゾンは早期にオープンイノベーションの考え方を取り入れ、プラットフォームの構築に成功しました。ストア事業だけでなく、自社の高度なシステムAWSを開放し、多くの利益を稼ぐことに成功しました。

     

    一旦、プラットフォームを握ってしまえばその影響力はどんどん増していきやすく、独占状態や寡占状態が生まれます。だからこそGAFAやBATHはプラットフォームビジネスでしのぎを削っているのです。

     

    アマゾンではオンライン経験とオフライン経験を継ぎ目なく消費者に提供しながら、同時にビッグデータを収集し、それらをAIで解析し、カスタマーエクスペリエンスを高めています。小売EC企業、テクノロジー企業、物流企業といった多面性を持つアマゾンは、「商品やサービスを検討する」「商品やサービスを購入する」というそれぞれの場面でオンラインとオフラインの両方の選択肢を提示でき、さらに「商品やサービスを受け取る」場面では店頭受取、自宅受取、コンビニ等での受け取り、アマゾンロッカーでの受け取りといった選択肢を設け、それを拡充しようとしています。

    私も1月にシアトルでアマゾンゴーやホールフーズ・マーケットをチェックしてきましたが、ストレスない買い物を実現、顧客満足度を高めていたのが印象的でした。

    「マーケティング4.0」時代の顧客対応は「検討・購入・受け取り」というそれぞれの場面において多様な選択肢を提示でき、それらをいかにストレスなくつなぐかがカギになるでしょう。その点、アマゾンはいち早くマーケティング4.0を実現し、顧客を満足させようとしています。

     

    そして、それに立ち向かおうとしているのが、中国の巨人「アリババ」です。

     

    アリババの強みは何か?

     

    アリババの事業の柱となっているのがECサイトであることは間違いなく、企業間取引(BtoB)の「アリババドットコム」、CtoC取引プラットフォームの「淘宝網市場(タオバオマーケットプレイス)」、中国国内のBtoC取引プラットフォーム「天猫(Tモール)」とその国際版「天猫国際(Tモールグローバル)」など複数の事業を展開しています。しかしアリババはこれだけにとどまらず、物流事業やリアル店舗、クラウドコンピューティング、金融事業などにも手を広げています。

    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』  より引用

     

    アリババもアマゾン同様、エブリシングストアへ進化し、今ではエブリシングカンパニーへと巨大化しました。アマゾンは〝自分で仕入れて自分で売る〟「直販型」が主体ですが、アリババは「マーケットプレイス型」が主体です。今話題の通販ライブ動画もアリババがタオバオで開始したものです。

    2018年度のタオバオとTモールの累計流通額(GMV)は4兆8200億人民元(約7110億米ドル、約78兆円)に達しており、これは世界のEコマース企業の中でも突出した数字で、アマゾンの脅威になっています。また、「フーマー」というスーパーマーケットはオンラインとオフラインの融合(OMO、Online Merges Offline)を進めています。著者によればこのサービスはもはやアマゾンゴーを越え、リアル店舗の展開、OMOの推進という点ではアリババのほうが質量共に先行していると言います。

     

    アリババが展開するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」はアリババの財務諸表の中ではEC事業として位置づけられています。フーマーは会員制のスーパーで、利用するにはスマホアプリでの会員登録が必要で、支払いはアリペイで行います。アプリを通じて来店履歴や商品の購入履歴などのデータを取得し、データの蓄積と解析により、フーマーは仕入れを最適化することができます。このため、常に新鮮な生鮮食品を扱うことが可能になっています。

     

    また、商品につけられたQRコードをスマホで読み取れば商品の流通経路などをすべて確認することもできます。テクノロジーを活用し徹底したトレーサビリティーに注力することで、消費者から高い支持を得ています。こちらのサービスは宅配にも対応し、店舗から3キロメートルまでの圏内なら、店頭にある商品は無料で30分以内に届けてもらえます。現状このサービスは赤字ですが、アリババはデータの価値が企業資産であると捉え、気にしていません。店頭で買った魚介類をその場で料理人に 調理してもらい、店内で食べることができる「グローサラント」も人気になっています。アリババはカスタマーエクスペリエンスを高めることを徹底的に意識し多くの中国人をファンにしています。

     

    モバイル決済「アリペイ」金融事業においては、アリババがアマゾンを完全に凌駕しています。アリババはECサイト事業や物流事業と金融事業を三位一体で伸ばしてきました。グループ企業であるアント・フィナンシャルが提供するモバイル決済サービス「アリペイ」がプラットフォームになっています。もはや、アリペイがなければビジネスが成り立たないほどです。これはアリババが中国の巨大テック企業から、中国13億人の生活を支える社会インフラのジャイアントへと脱皮を果たしたことを意味します。アリババは、実質的な資金量もメガバンク並みになり、中国経済になくてはならない存在になっているのです。

     

    アリペイのスマホアプリは直接的にアリババグループの銀行、証券、保険、投資信託などの金融サービスが使えるようにもなっていますし、アリババグループのEC事業のサービスもアリペイのアプリから利用可能です。そのほか、公共サービスもアリペイのアプリから使えるようになっています。このように、人々の生活になくてはならない決済手段となったアリペイのアプリが、アリババグループのサービスなどへの入りロになっているところは見逃せません。ここは、アリババの非常に大きな強みになっており、またアマゾンとの決定的な違いでもあります。

    『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』  より引用

     

    なお、アリババはアリペイを介して蓄積した大量の購買データや決済データ、グループ内のビッグデータを活用し、個人の信用力を定量化・可視化する「芝麻信用(ジーマクレジット)」というサービスも生み出しています。また、アリババはAWSを目標に「アリババクラウド」を展開し、中国市場ではシェアナンバーワンになっています。「アリババクラウド」が成長することで、多くの企業がアリババに取り込まれていくはずです。著者田中氏の「5ファクターメソッド」を見るとアリババがもはや国家のような存在になっていることが理解できます。

     

    アマゾンとアリババ、その方向性の違いとは?

     

    アリババのミッションは「社会問題の解決」にあると田中氏は指摘します。創業者のジャック・マーはこれまで「中国のために」「世界をよりよい場所にするために」といった発言繰り返し、そのほとんどを実行に移し、実現させてきました。つまりアリババは「中国を豊かにすること」を意識し、ECや金融、物流サービスで社会問題を解決しているのです。

     

    一方、アマゾンは多くの企業を消滅させ、アメリカの地域経済を破壊しています。「デス・バイ・アマゾン」という言葉が有名になるほど、アマゾンの独り勝ちが続いています。

    アマゾンへの評価が分かれているのに対し、中国人は皆、アリババのジャック・マーを神にたとえ、称えます。ジャック・マーが共産党員であることを明らかにしたことで、直近のアメリカへの展開は難しくなりましたが、自らのビジョンやミッションを実現するスピードを考えると、アリババから今後も目を離せません。

     

    本書はアリババの動きを詳細にレポートしたはじめての和書であり、また、その他の企業についても著者独自のフレームワークの「5ファクターメソッド」=「道(戦略目標)/天(タイミング)/地(市場・業界構造)/将(リーダーシップ)/法(マネジメント・収益構造)/」で、各社の戦略が一目瞭然になっています。

    米国の「GAFA」と中国の「BATH」…最強のプラットフォーマーの事業形態と戦略を知るには最高の良書でしょう。

    この記事を書いた人の情報
    徳本昌大
    徳本 昌大

    複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
     サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
    https://tokumoto.jp/

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