「人生は50代からもっと良くなる」……それがわかっていたとしたら、40代がしんどくても、きっと勇気が湧いてくるはず。今回ご紹介する本で、それを実感していただきたいと思います。さあ、人生はまだまだこれから!
(徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)
中年期にスランプ(“危機”ではない!)に陥るのは、ごく普通で自然なことだということ。歯が生えるときの歯ぐきの痛みや、体が大きくなるときに起こる成長痛と同じように、ときに痛みを伴ったとしても、それは健全な変化だし、スランプは人生の新しい段階へと自分を押し上げるときに起こる変化なのだ。スランプのときは不満を感じることもあるだろうが、そのことを気に病む必要はない。(ジョナサン・ラウシュ)
もしもジョナサン・ラウシュの『ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する』を40代のときに読んでいたら、私も人生の悩みをもう少し緩和できたかもしれません。
50代以降の幸福度がアップするという事実を知ることで、40代をもう少し有意義に過ごせたかもしれません。ご多聞にもれず私の40代はストレスフルで、特にその前半はアルコールに依存する生活を続けていました。しかし、56歳になった今は、若いときよりもはるかに幸せな時間を過ごせています。
本書を読むことで、その理由が明らかになりました。
一般的に幸福度は青年期から落ち始め、40代から50代にかけて、もっとも下がることがわかっています。40代のころに幸福度が落ちることがわかっていれば、もう少し心穏やかに40代を過ごせるはずです。ミドル世代はたいがいスランプに陥ると著者は指摘しますが、40代の頃は確かに周りの人の業績や成功が気になります。他者と自分を比較することで、必要以上に自分を卑下してしまうのです。
ミドル世代は遺伝子を残そうとするために、ドーパミンが分泌され、果てしない前進を余儀なくされます。様々なことにチャレンジし、失敗を繰り返し、落ち込むことで幸福度が下がってしまうのです。しかし、50代を迎える頃には人生の期待値が低水準になり、幸福度が再び上昇します。様々な体験を重ねることで、解決策も身につき、達成感を得られるようになります。
ハピネス・カーブが上昇するのは、自分の価値観が変化し、満足感を得る事柄が変化し、自分という人間の有り様が変わるからである。自分が変わることで、老年期になってからも思いがけない充足感を得ることができるようになったり、自分の抱える弱さや病気まで受け入れられるようになったりする。
最新の医学や公衆衛生のおかげで寿命が延び、ハピネス・カーブが上昇に転じてからの期間が以前より10年以上も長くなっています。人生100年時代になれば、幸せな時間をより長く過ごせるようになるのです。社会学者のなかには、人生におけるこの新しい段階のことをアンコール・アダルトフッド(大人のアンコール時代)と呼ぶ人もいます。私たち世代は新しい幸せな時間を天からプレゼントされた初めての世代なのです。
高齢者は未来ではなく、「今ここ」に集中します。彼らは過去の思い出に時間を使うように思われていますが、高齢者はどの年代よりも「今ここ」を意識し、強い結びつきのある人と交流しようとします。時間に限りのある人たちは確実によい気分になれるような交流に時間を使うのです。1日1日を大切にし、家族や仲間のよい面だけを見ることで、幸福度を高めているのです。
人生の後半でハピネス・カーブがどんどん右肩上がりになっていくのは、高齢者が心から大切だと思う目標に重点を置くようになるからです。彼らは満足感を得られるような目標を設定したり、満足感を得られるようなものを優先したりして、後悔や失望を生みそうなものを排除しようとしています。
無意識的にポジティブなものに目を向けることで、自分の目に映るものがもっと好きになり、その結果、自分の好きなものばかり目にするようになります。自分が楽しいこと、ワクワクすることにだけ時間を使うことで、幸福度がアップしているのです。
年を取り、知恵深くなることで、幸せになれることもわかっています。知恵がある人は感情をコントロールでき、バランスを上手にとります。自分のことを客観的に見ることで、的確に行動できるようになります。賢い人とは他者のために動け、社会問題を解決できる人なのです。 人生についての豊かな知識、感情の抑制、思いやりの心、謙虚な態度を身につけるなどよい人生を歩むための知恵を備えることが、幸福度のアップにつながっています。
過去のことに対して失望感を抱える一方で、将来に対する期待も失ってしまう。だから中年期は、過去と未来の両方に対して、惨めな気持ちになるのです。(ヘネス・シュワント)
著者は本書を執筆するための調査を通じて、中年期という道のりは、矛盾するさまざまな感情を抱えるものであることを見つけました。調査対象者に10年ごとに区切った人生の満足度を評価し、表現してくださいとお願いすると、20代のころについては、楽しい、ワクワクする、希望がもてる、忙しい、不安、冒険、野心的・自由などの言葉が目立ちます。60代や70代も幸せ、満足、充足感などの答えが得られます。
しかし、中年期のこととなると、回答者からはポジティブな言葉、ネガティブな言葉、どちらでもない言葉などがごちゃ混ぜになって返ってきます。ハピネス・カーブのもっとも低い所では、人生というものの印象は簡単には言い表せないのです。ミドル世代にとっては、期待や現実や自分の性格や選択や年齢など、すべてが押し寄せてきて、互いに複雑に絡み合うことで、頭が混乱します。
中年期に減少していく楽観主義は、将来の生活満足度を上げる要素になることを思いだしてほしい。ハピネス・カーブの長い下降期間は、私たちに失望感を抱かせ、このまま転換期は来ないのではないかと思ってしまう。 20歳の若者は楽観的すぎ、50歳の中年は悲観的すぎる。それが、中年期が辛いものになる理由のひとつだ。繰り返し失望感を味わうという苦境のせいで、予測を大きく誤ってしまう結果だ。
ローラ・カーステンセンは精神面に着目した調査を繰り返し、一般的な常識を覆しました。老人は歳を重ねることで体は衰えていきます。しかし、一方で内面も変化するため、感じ方も変わり、より幸福になれるということを彼女は発見したのです。
ギャラップ社の調査でも年を取ることで、ストレスが減ることがわかっています。ステファン・シュナイダーとジョアン・ブロデリックの調査でも同じ結果が出ました。彼らは50代、60代の対象者に20代に戻りたいかと問いかけましたが、1人を除いて、全員が今のままの年齢がよいと答えたそうです。
若い頃の波乱万丈の生活よりも感情をコントロールできる50代以降の方が、幸福な気持ちを味わえます。 様々な経験を重ねた結果、立ち直る力が強くなり、ストレスや後悔を感じる傾向が減っていくのです。
ストレスや後悔を感じる状況に直面しても、あまり感じずに済むようになる。 だが、変化はそれだけではない。認識面でも変化があるという証拠が数多く報告されている。カーステンセンやそのほかの研究者は、それを「ポジティヴィティ効果」と呼んでいる。
歳をとると人はネガティブな情報よりもポジティブな情報のほうを気に留めることが多くなり、ポジティブな感情を抱けるようになります。カリフォルニア大学のサンディエゴ校のマーラ・マザーによると、高齢になると脳がポジティブなものに重点的に注意を向けることがわかっています。50代から幸福になれるなら、あまり40代で落ち込むのをやめ、この事実を受け入れた方がよさそうです。
実際、私も40代の頃には大いに悩み、何度も落ち込みました。しかし、50代になってから、周りの人に感謝の気持ちを持つことで、幸せな時間を増やせました。ネガティブなものを意識するのをやめ、物事の見方をポジティブなものに変えることで、人生をよりエンジョイできるようになるのです。
複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
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