時代が急激に変化する中、「過去の常識」が通用しなくなっています。大量生産時代のマインドセットを捨て、新しい考え方を身につける必要があります。今回はそんな時代を生き抜くためのヒント満載の1冊をご紹介します。
(徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)
目次
20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い、いわゆる「優秀な人材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう。一方、このようなオールドタイプに対置される、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材=「ニュータイプ」が、今後は大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな人生」を送ることになるでしょう。(山口周)
私のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」では、これまでに山口周氏の書籍を何度もピックアップしてきました。今回ご紹介する『ニュータイプの時代』も、多くの学びを得られました。
20世紀の後半から21世紀の前半まで、50年ほどのあいだ「望ましい」とされてきた思考・行動様式の多くは、今日、急速に時代凝れのものになりつつあります。 いわゆる「優秀さ」は文脈依存的な概念であることに注意が必要です。どのような時代にあっても、その時代において「望ましい」とされる人材の要件は、その時代に特有の社会システムやテクノロジーの要請によって規定されることになります。これはつまり、世の中の要請に対して相対的に希少な能力や資質は「優秀さ」として高く評価され、逆に過剰な資質や能力は「凡庸さ」として叩き売られる、ということです。
人類は原始時代から20世紀の後半まで、ずっと「問題が過剰で解決策が希少」という時代を生きてきました。人材育成の基本的な目的は「問題解決能力の向上」に置かれてきましたが、今は過去の常識が通用しなくなっています。
私たちは人類史の中で初めて「問題が希少で解決策が過剰」という時代に突入し、この時代にあった能力を養う必要があるのです。
まず、「問題の発見」と「問題の解決」を組み合わせることが求められます。「問題」そのものが希少になっているわけですから、問題の「発見能力」を鍛えるようにしなければなりません。「現代は問題解決者の価値が減り、問題発見者の価値がアップする」ことを理解し、そのための能力を身につけるべきです。
山口氏はこれから求められる行動様式を以下のようにまとめています。
「オールドタイプを抜け出し、ニュータイプにならなければ、価値を提供できなくなる」……ならば、私たちはこれまでの学び方や行動様式を変えなければなりません。
なぜ、ニュータイプが求められているか?
山口氏の語る6つのメガトレンドから学んでいきましょう!
私たちは「モノが過剰で、意味が希少な時代」を生きています。過剰である「役に立つモノ」を生産し続けようとするオールドタイプが価値を失うことになる一方で、希少な「意味」を世界に対して与えるニュータイプは大きな価値を生み出していくことになります。
ありとあらゆるモノが過剰になり、「問題」が希少化してくると、必要な能力が「問題の解決」から「問題の発見」にシフトします。誰も気づいていない問題を見出し、経済的な枠組みの中で解消する仕組みを提起する「課題設定者=アジェンダシェイパー」が、ニュータイプとして大きな価値を生むことになると山口氏は述べています。
オールドタイプは、自分の価値を維持するために、さらなる「クソ仕事」を作り出し、組織を混乱させます。彼らは周囲のモチベーションを破壊し、自らも「無意味の泥沼」へと陥っていきます。一方、ニュータイプは「仕事の目的」や「仕事の意味」を形成し、本質的な価値を言語化・構造化します。ニュータイプは人材を惹きつけ、モチベーションを引き出し、大きな価値を生み出す存在になります。
VUCAというキーワードが注目されています。Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字から取った言葉で、現代の経営環境やキャリアなどの社会を特徴付けています。
「VUCA化の進行」は、私たちがこれまで「良い」と考えてきたさまざまな能力やモノゴトの価値に大きな影響を与えることになります。VUCA時代は柔軟性、適応力、実行力を持つことが重要になります。
・「経験の無価値化」
「経験豊富」は価値を失います。環境がどんどん変化していくということは、過去に蓄積した経験がどんどん無価値になっていくということを意味します。変化に適応し、新しい環境から柔軟に学び続ける人が価値を生み出すことになります。
・「予測の無価値化」
社会がより「不安定」で「不確実」になるということは「予測の価値」がどんどん減損していくことになります。このような時代にあって、計画に時間をかけ、立てた計画を実直に実行するという行動様式は極めてリスクが高くなります。今後はむしろ、とりあえず試し、結果を見ながら微修正を繰り返していくという、いわば「計画的な行き当たりばったり」によって、変化する環境に対して柔軟に適応していくことが求められます。
・「最適化の無価値化」
「VUCAな世界」では、環境は連続的に変化し続けているわけですから、どこかの時点での環境に高度に最適化してしまえば、 それは次の瞬間には時代遅れなものになってしまいます。変化していく環境に対して、どれだけしなやかに適合できるかという「柔軟性の度合い」の方が重要になってきます。
かつては、ビジネスにおける成功の力ギはスケールメリットだと捉えていましたが、今日では、スケールはそのままメリットにならないどころか、むしろ競争力を削ぐ要因となりつつあります。
この変化をドライブしている大きな要因は以下の2つです。
その1 限界費用のゼロ化
ジェレミー・リフキンは、さまざまな分野で限界費用がほぼゼロになるという現象が発生していることを指摘し、近い将来において、19世紀から連綿と続いてきた垂直統合型の巨大企業が、その巨大さゆえに有していたアドバンテージ、つまり「スケールメリットによる限界費用の低さ」がもはや成立しなくなると指摘しています。
その2 メディアと流通の変化
昨今、テクノロジーの進化やソーシャルメディアによって、メディアや流通は大きく変化しています。個人事業主が簡単に物作りや情報を発信できるようになり、顧客を獲得しています。大量生産されたモノを求める顧客が減る中で、個人が自分の課題を解決するためのソリューションを持つ個人やベンチャーが、大企業を淘汰し始めています。
S&Pの構成企業は「アメリカを代表する企業」という選択基準で選ばれています。そのような企業の平均寿命が、半世紀前には60年だったのが、今日では20年以下になっています。現代は多くの人が現役として働く期間の方が、企業の平均寿命よりも、ずっと長いという時代がやってきました。
自分のポートフォリオを大きく組み替えていくようなキャリアを志向するニュータイプは、リスクをむしろチャンスに変えていきます。柔軟でしたたかなキャリアを歩んでいくために、柔軟性や変化への適応力を鍛えることが求められています。
オールドタイプからニュータイプへの変化のために必要なことはJ・Dクランボルツの考え方に近いと思います。最後に、彼のプランド・ハップンスタンス(計画的偶発性)の5つの指針を紹介しましょう。
社会構造の変化やテクノロジーの進化にともない、個人や企業は、新しい考え方や成功モデルへの書き換えが求められています。オールドタイプの時代は過ぎ去り、柔軟性、変化への適応力、行動力を持ったニュータイプの人材が求められています。
複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
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