経営者の行動を明確にし、プロジェクトをしっかり完了させ、そして経営者と伴走しながら未来を語る……それが「社外役員型コーチ」の役割。経営コンサルタントや顧問とは違う新しいポジションとして、今注目の仕事です。
社外取締役、社外執行役員のように、経営者の顧問アドバイザー的立場として、自らの専門性、豊かなビジネスキャリアを活かして活躍するシニアが増えています。
株式会社プロシードワン代表取締役・IEO国際団体理事の新堀進さんもその一人。
たた、新堀さんの場合、単なる社外役員に留まらない特徴的なスキルを発揮し、「経営者の背中を押す」役割を務めています。
そのスキルとは、「コーチング」のスキル。
実際に私・徳本も、新堀さんのコーチングの影響のおかげで、社外取締役やアドバイザー、また本の著者としての現在の活動があるといってもいいでしょう。
単なる社外取締役ではなく、また単なるエグゼクティブコーチ(経営者相手のコーチ)でもない……。自らのビジネスキャリアを活かしたアドバイスをコーチングのスキルとともに経営者に与えることで結果を出させる人たちのことを、「社外役員型コーチ」と呼ぶことにします。
コーチングに基づいたスキルのひとつに「クリアリング」というものがあります。
クリアリングに関しては、吉井雅之氏の著書『習慣が10割』でも詳しく紹介されています。この本でいうクリアリングとは「その日のうちに、脳のモヤモヤをスッキリさせる」こと。「今日の良かった点」「今日の改善すべき点」「翌日の対策と決意」を寝る前に書き出すことで、翌朝良いスタートを着ることができます。
3つめの「翌日の対策と決意」は、「~したい」ではなく「~する」と意思を込めることで、翌日の行動につながります。今日の良かった点に目を向けると同時に、悪かった点をどう改善すればいいかを考える習慣がつくことで、答えが見つかるようになります。
新堀さんはかつて外資系企業の代表だった時代に、本国のボスと1on1ミーティングを行っていました。会議のたびに、アメリカのボスは以下の4つの質問を毎回新堀さんに投げかけたそうです。
その質問はまさにクリアリングの手法と同じ。
うまくいったこととうまくいかなかったかを列挙し、改善策を考えることを求めたのです。
・今週うまくいったこと
・今週うまくいかなかったこと
・そこから学んだこと 次になにをするか?
・自分自身にいつやるかを質問する。
この4つの質問に答えるうちに、自分の視点が広がり、解決策が見つかります。
つまり「脳のモヤモヤをスッキリさせる」わけですね。
良いこと、悪いことが明確になることで、行動計画ができ、それをいつやるかを決めることで、何にフォーカスすればよいかがわかります。重要事項を明確にし、それに集中することで結果を出せるようになります。
ただ単に相手を勇気づけるのではなく、「経営者としてどんな行動をするべきか」を明確にするのが、社外役員型コーチの役割。「クリアリング」は経営者のサポートとして、大きな力を発揮するでしょう。
「エヴァリュエーション(事後評価)」というコーチングスキルも、社外役員型コーチにはかかせないものです。
これについては伊藤守氏の著書『ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ』で詳しく紹介されています。
仕事の終了時には、必ずエヴァリュエーションをして、「未完了感」を残さないようにします。できたこと、できなかったこと、うまくいったこと、いかなかったこと、すべて、事実は事実として認める。そして、次の仕事に生かせるものは何であるかを整理します。要するに、未来に持っていくものと、持っていかないものを分けるわけです。(伊藤守)
仕事を完了させることを怠る経営者が多く存在します。経営者はどうしても、未来志向になり、新しいことをやりたがります。しかし、次の行動を起こす前に、一旦プロジェクトの棚卸しをすべきだと、伊藤守氏は指摘します。
プロジェクトをしっかり完了させることもまた、社外役員型コーチならではの重要な役割といえます。
業務の完了をサポートし、次に向けての〈ビジョン・メイキング〉を行います。そして、 エヴァリュエーション(事後評価) と新しい目標の設定をセットにすることで、経営の改善を行うのです。
経営者は、ビジョンを作り、それを絶えず確認すべきです。例えば、自社の商品が日本中、あるいはニューヨークでもドバイでも売られているビジョンを描けば、積極的に行動できるようになります。逆に、モチベーションやパフォーマンスが落ちているときは、ビジョンが不明確になっていたり、混乱している可能性があります。社外役員型コーチはそんな時に、経営者のミッションを確認すべきです。
では、このビジョン・メイキングは、どのように行えばよいのでしょうか?
コーチは経営者との会話や問いかけを通じ、さまざまな可能性を思い描くようにします。10年後の会社の未来を質問する、1年後、2年後の会社の姿を確認し、経営者の目を未来に向けさせます。
ビジョンを一度だけ確認するだけでなく、コーチはこのプロセスをなんども繰り返し、経営者のビジョンを明確にすべきです。ビジョンはコミュニケーションによって、鮮明になると言うルールを信じて、 経営者への質問を繰り返しましょう。
社外役員型コーチは、経営者と伴走しながら、絶えず未来を語る人です。時にはリスクを指摘しなければなりません。よい話だけでなく、悪い話があれば、それを避けずに話題にすべきです。
社外役員型コーチにとって大切なことは、事が起こってからコーチするのではなく、事が起こる前にリスクを予測し、それを経営者に知らせる能力です。自分の知識と体験を全て動員し、直感を信じて、経営者への質問を繰り返しましょう。ビジョンを経営者に確認し、リスクを減らすことで、強い組織が生まれます。
いかがでしょう?
単なる経営コンサルタントにはできないサポートを行う「社外役員型コーチ」は、こうしてコーチングのノウハウを自身の経験と合わせ、巧みに活用しているのです。
複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
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