さまざまな趣味の書籍が揃うことで有名な書店「書泉」が、今年度流行るに違いない趣味を選ぶ、「2019年度 書泉トレンド趣味大賞」に「講談」を選出しました。
「書泉トレンド趣味大賞」は、書泉のスタッフが流行すると予想する趣味10点の関連書籍をPOPと共に展開し、店頭での売れ行き、お客様からの問い合わせ状況などから、反響が最も大きかった趣味を選出する企画です。
この企画で『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)の執筆などにより講談の魅力発信・普及に貢献したとして、講談師・神田松之丞さんが表彰されました。
落語に比べて聞き慣れない講談。なぜ今トレンド趣味大賞に選ばれるほど、注目されるようになったのでしょうか。
実は誰もが知っているあの有名社長も勉強し、経営に取り入れていました。その落語とは異なる魅力を持つ講談について探っていきたいと思います。
大衆演芸といえば落語と思われがちですが、講談は落語と双璧をなす伝統大衆芸能として存在しました。
講談は講談師(または講釈師)と呼ばれる人が、歴史ものを中心とした物語を面白く聴衆に聞かせる朗読劇のようなものです。
演じるネタは軍記物(太平記、真田軍記など)や政談(大岡裁きなど)や、有名な事件や合戦などの歴史物語です。
おもに歴史ものを読んで聞かせるため、落語の演目が「出し物」と呼ばれるのに対して、講談は「読み物」と呼ばれます。
落語は、登場人物になりきり会話中心で物語を語る、アクターの要素が強いでしょう。
それに対し講談はあくまでストーリーテラーに徹します。
講談ではまくし立てるようにネタを語り、早口のような語りの中にも、講談特有のテンポとリズムがあり、聴衆を飽きさせません。つまり、話術を学ぶのに最適なのです。
落語が話の「間」を重要視するのと対照的に、講談はしゃべりの「調子」と呼ばれるリズムを重視します。
また落語には話しにオチがつきますが、講談は特にオチはありません。
講談特有の小道具が、高座に置かれる釈台とハリセンです。
釈台が置かれる理由は、講談は「読み物」を語る芸なので昔は本を置いて語ることがあり、
その名残だと言われます。
ハリセンは、小気味よく釈台を叩いて話のリズムをとるために使用。
また、話の山場では何度もたたき上げて効果音としての作用も発揮し、大きく一つパンッと叩いて、話の舞台転換を知らせたりもします。
また、落語家にとっての扇子のように万能小道具として使われます。
経営の神様とされ、国内外でその功績を語り継がれる「松下幸之助」と講談の関係が深いことはご存知でしょうか。
幸之助は父親が米相場で失敗したため小学校を中退し、9歳の時に丁稚奉公に出されました。
働くことが優先で、とても勉強できる環境ではなかったでしょう。
そこで時松下幸之助は、世間で流行っていた講談本を読んで、読み書きを覚えたとされています。
当時の講談本には全ての漢字にルビが振ってあり、やさしい漢字から難しい漢字まで読めるようになっていました。
幸之助少年は夢中になって講談本を読み、読み書きも同時に覚えていったことでしょう。
そして講談本の内容は軍記物などをはじめとする成功譚。幸之助は講談で学んだことを後に社員教育で活かしています。
幸之助は講演、講話をする時に講談ネタから入って話を広げました。その話はまさに講談のようにメリハリを効かせて軽やかに進められます。
幸之助は話術には物語性と、リズムが大切ということを講談から学んだわけです。
ストーリー性があると、話がすっと心に入って印象深くなる。幸之助は講談を参考に言葉を巧みに操って、社員の心を掴んでいきました。
そして数十年の時を経て、今また、密かな講談ブームがきています。
それは、講談の潜在的な力と魅力に気づく人が増えてきた証拠です。
講談には先人の成功譚が多く語られています。多くの成功譚を知っていると知らないのでは、ビジネスを続けていく上で否応なく立ちはだかる様々なターニングポイントの際に取るべき措置や行動も違ってくるでしょう。
また、どんな場所でも聞く人々を魅了する話術を磨き、講演や社員教育にも活かせる。
今ブームの講談で、スマートにビジネススキルを身につけましょう。
【文責:編集部】