定番の缶詰ながら、近ごろテレビや雑誌で取り上げられて人気爆発中の「サバ缶」。調理が簡単で長期保存できるだけでなく、骨や血合いなどに含まれる栄養も丸ごと摂れるというのも魅力です。今回は、そんなサバ缶に含まれる健康への効果についてご説明します。
サバ缶に含まれる不飽和脂肪酸のひとつEPA(エイコサペンタエン酸)は、GLP-1という消化管ホルモンの分泌を促すといわれています。GLP-1には、インスリン分泌を促して血糖値の上昇を防ぐ効果があるほか、脳の食欲中枢にシグナルを送り食欲をストップしてくれるといううれしい働きもあることがわかっています。いわば「やせホルモン」として知られているこのGLP-1を増やすには、EPAを摂ることが大切。EPAを手軽に補えるとして注目を集めているのがサバ缶、というわけです。
人の身体には、脂肪を蓄える「白色脂肪」と、脂肪を分解して熱を発生させる「褐色脂肪」、白色脂肪が褐色化した「ベージュ脂肪」の3つがあります。EPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)を含む魚の油には、白色脂肪を褐色化してベージュ脂肪に変化させ、肥満を改善するという研究結果もあります。
糖尿病が進むと、赤血球の柔軟性が失われて血液の粘度が高くなる、いわゆる「ドロドロ血液」の状態になります。このとき心臓は全身に血を巡らせようとするため、血圧が上昇。こうした高血圧を防ぐには、DHAを補って赤血球の柔軟性を高める必要があります。DHAには、年齢とともに失われていく血管の弾力を維持し、硬化を防ぐ働きもあります。
一方EPAには、血液中の中性脂肪濃度を低下させて動脈硬化を防ぐ、血液が凝固する「血栓」を作りにくくして血液の流れをスムーズにする、血圧を下げるなどの働きがあります。しかし食生活の欧米化により、日本人の魚の摂取量は減少。EPAの摂取不足にともなって心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性疾患が増えています。そのような病気を防ぐためにも、サバ缶のようなEPAを含む食品を積極的に摂るのがおすすめです。
他にもDHAやEPAには、脳の情報伝達を助けたり、脳内の神経を保護したり、脳細胞を活性化させたりという働きがあります。特にDHAは脳の血液脳関門を通過できる数少ない物質であり、記憶をつかさどる海馬と呼ばれる部分に多く存在します。「50歳を過ぎて、そろそろ認知機能の衰えが気になる……」という人も、サバ缶なら手軽にこれらを補うことができます。
加齢とともにもろくなりがちな骨の健康を維持するのにいい成分が含まれている、という点も見逃せません。サバ缶に含まれる骨の部分はやわらかく調理されているため、不足しがちなカルシウムを補うのにぴったり。また、血合いの部分にはカルシウムの吸収をサポートするビタミンDが含まれています。
ちなみに、塩分が気になる人は味噌煮や味付けのサバ缶ではなく水煮を選ぶのがおすすめ。酒のアテとしてそのまま食べるのもよし、野菜に和えるのもよし。お茶漬けのトッピングにしたりカレーやみそ汁の具にしたり、という活用法もあります。
サバ缶を日々の食事に上手く取り入れ、健康をキープしましょう。
【文責:編集部】