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  • 実はあまり知られていない仮想通貨の歴史
  • 実はあまり知られていない仮想通貨の歴史

    2019/06/03  マネー

    「仮想通貨」「ビットコイン」などの言葉を目にしたことのある社長さんも多いでしょう。なかには、すでにビットコインを保有している社長さんもいらっしゃるかもしれません。あるいは、ビットコイン以外の仮想通貨やICOに投資し、塩漬け状態や損切りしてしまった人もいらっしゃるかもしれません。多くの人にとっては、「仮想通貨=怪しい投機話」ですよね。今回は、仮想通貨に興味をお持ちの社長さんのために、「仮想通貨って、そもそもいつできたんだ? 」という疑問にお答えします。

     

    有名なサトシ・ナカモト論文

    仮想通貨の誕生は、2008年に発表されたサトシ・ナカモトの論文がきっかけになっています。まだ10年ほどの歴史しかありません。「論文」と聞くと、学術論文のような難しい印象を受けるかもしれませんが、ウェブ上にある暗号技術者たちの掲示板(BBS)で発表されただけです。この俗にいう『サトシ・ナカモト論文』は、インターネット上で簡単に読むことができます。タイトルは『Bitcoin : A Peer-to-Peer Electronic Cash System』で、原文は英語です。

     

    Bitcoin : A Peer-to-Peer Electronic Cash System

     

    この『サトシ・ナカモト論文』が、“画期的な発明”“もはや金融革命的”とまで言われているのですが、長大な論文ではなく、実は注釈を含めても9ページしかありません。

    論文の構成は、このようになっています。

     

    概要

    1.  イントロダクション
    2.  電子通貨の取引
    3.  タイムスタンプ・サーバー
    4.  プルーフ・オブ・ワーク(演算量証明)
    5.  ネットワーク
    6.  ネットワーク参加者への報酬
    7.  使用ディスクスペースの節約
    8.  取引の簡易検証法
    9.  電子通貨の結合と分割
    10.  プライバシー
    11.  数学的根拠
    12.  結論

     

    この『サトシ・ナカモト論文』のポイントは、以下の点だと思います。

     

    • 中央サーバーを置かず、ネットワーク上の端末同士をつなぐ「P2P(ピアツーピア)」の仕組みを使えば、金融機関を経由することなく電子通貨を直接取引することができるじゃないか! 
    • 電子署名のシステムはある程度まで有効だが、二重支払い(二重使用)を避けるため、信頼に足る第三者による監視を必要とする限り、完全なものとは言えないじゃないか! 
    • 取引履歴のつながり(チェーン)そのものを、=電子通貨と定義しちゃう!
    • すべての取引をネットワーク上に公開して、それをネットワークへの参加者が承認することで、取引情報のコピーや改ざんが技術的にきわめて難しく、コストに見合わないものにしちゃう! 
    • ネットワークにつながった善意の参加者の持つCPUパワーの総体が、不正を働こうとする者たちのCPUをはるかに超えている限り、システムの安全は保たれるでしょ!
    • 第三者を介さない、つまり信頼というものに依存しない仕組みを構築することで、低コストで安全に取引できる電子通貨が可能となるんだ! 

     

    言われてみればシンプルな主張なのですが、「通貨は中央銀行が管理するもの」という当たり前のことに対して疑問を持ち、アンチテーゼを掲げたのが『サトシ・ナカモト論文』だったわけです。

     

    実は理論としてはリップル(XRP)の方が古い

    リップル(XRP)という仮想通貨をご存知でしょうか? 厳密にいえば、リップル(XRP)は仮想通貨ではないのかもしれませんが、ややこしくなるのでここでは仮想通貨であると定義します。

     

    リップル(XRP)は、第二のビットコインとなる可能性がある仮想通貨のひとつです。今後、価値が高騰する可能性を秘めています。リップル(XRP)は、リップル社が開発したRTXP(リップル・トランザクション・プロトコル)と呼ばれるシステムのことです。このシステムは、世界中の銀行や金融機関、企業、団体で導入の検討、あるいは検証が行われています。

     

    リップル(XRP)は、2004年にプログラマーのライアン・フガーが発表した論文がもとになっています。『サトシ・ナカモト論文』が発表されたのは2008年ですから、理論としてはリップル(XRP)の方が古いです。ライアン・フガーの論文も、インターネット上で簡単に読むことができます。

    Money as IOUs in Social Trust Networks & A Proposal for a Decentralized Currency Network Protocol

     

    ポイントは、「価値(お金)のインターネット化」です。Eメールは、世界中どこにいても即座に送受信できますが、お金の送金や受取りはそうではありません。銀行の営業時間に制限されたり、海外送金は手数料も高いですし、着金まで時間がかかります。考えてみれば、すごく不便ですよね。これを「もっと簡単に手軽にできるはずだ」と唱えたのがライアン・フガーでした。

     

    ビットコインは、『サトシ・ナカモト論文』発表の翌年に形になったのですが、リップル(XRP)はライアン・フガーの論文発表後すぐには形になりませんでした。しかし、2012年8月になると、ライアン・フガーは実業家のクリス・ラーセンが率いるチームにリップルプロジェクトを託すことになります。クリス・ラーセンは、2011年にビットコインの技術を応用した「コンセンサス」と呼ばれるコンセンサスアルゴリズム(取引承認の方法)を考案したジェド・マケーレブのチームに合流していた人物です。ライアン・フガーからリップルプロジェクトを引き継いだクリス・ラーセンは、ジェド・マケーレブと共に、2012年9月にオープンコイン社を設立し、この会社がリップル社の前身となります。やがて、「リップルネットワーク」という名前で、RTXPは世界中で知られるようになりました。

     

    仮想通貨の歴史は、暗号技術の歴史と密接な関係がある

    「仮想通貨」という名称は、日本国内で使われている言葉です。「暗号資産」という名称に変えようという話も日本国内では出ているそようですね。一方海外では、「暗号通貨(cryptocurrency)」と一般的には呼ばれています。「仮想通貨」と「暗号通貨」、2つの言葉は同じ意味を持ちますが、なぜ「暗号通貨」と呼ばれているかご存知でしょうか? それは、暗号通貨には暗号技術が活用されているからです。

     

    暗号技術の歴史をひも解くと、「仮想通貨」「暗号通貨」の歴史をよく掴めるかもしれません。かつて、その国の政府が解読できない暗号の存在自体が違法とされる時代がありました。その暗号を海外で利用したり、海外の政府や団体などに流出させることは、「武器輸出」と見なされ、逮捕されたり極刑に処されることもあったほどだったそうです。

    そのような有事でも、暗号技術者たちは、人々のプライバシーと自由を保証するという信念を持っていました。そして、権力や体制と戦い続けていたわけです。そんな暗号技術者たちの戦いの歴史が、ビットコインなどの仮想通貨、そしてそれらを支えるブロックチェーン技術につながっています。仮想通貨の歴史は2008年に始まったばかりですが、そのルーツには実は長い戦いの歴史があるのです。こうしてひも解いていくと、仮想通貨が単なる投機や儲け話ではないことをわかっていただけると思います。

    この記事を書いた人の情報
    nakajima
    中島 宏明(なかじま ひろあき)

    2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。

    2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

    マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
    https://news.mynavi.jp/series/cryptocurrency


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