「M&A仲介は専門家じゃないと無理なのでは? 」「海外企業との越境M&Aなんて、とてもじゃないけどレベルが高すぎる・・・」というように、未知な世界に足を踏み入れるのを躊躇してしまうのは当然のことかもしれません。ですが、挑戦を恐れていては自分の世界を自分で限定してしまうだけです。それってもったいないですよね。今回は、素人ながらM&A案件に足を突っ込んだ私の実体験を少しご紹介します。
私はM&Aの専門家というわけでもなく、特に名刺に「M&Aアドバイザー」「M&A仲介」と書いているわけでもありません。むしろ名刺すら持っていません。もちろん、ビジネス英語はできません。しかしどういうわけか、M&A案件に関わることが多い。紹介だけというケースも多いのですが、かれこれ15件以上はM&A案件に関与しています。M&Aを仕事にしようという気持ちは全然ないのですが…。
2018年の春頃は、EUのとある国の銀行M&Aに関わっていました。親しくしている経営者の友人と雑談しているときに、「銀行を買っちゃいたい」という話になったのがきっかけですが、その友人は2年ほど前から銀行M&Aを考えていたそうです。雑談中に「新しく銀行を作るか」「すでにある銀行を買うか」という話になり、「買った方が速い」「エリアはEUがイメージしやすい」という結論に至り、リサーチを始めました。と言っても、EUにツテなど全くありませんでしたが。
このEUの銀行M&Aとは全くの別件で、別の経営者の友人と雑談をしていました。シンガポールや香港でも会社を経営している友人なのですが、雑談中に「そういえば、銀行の売り情報とか知りませんか? 」という話題を思い付きで話してみました。その場で仲介をしているそのまた友人に打診してくれたので、一晩返事を待つと・・・。
「EUだったら、2件銀行の売り情報がありますよ。ノンネムシートを送ります」
というメッセージとPDFが届きました。
「思い付きでも具体的な話になるものだな~」
と思ったのですが、引きが強いといいますか運が極めて良いのでしょう。早速仲介契約とNDAを結んで、話を進めることになりました。しかし、ここから大変なのがM&Aです。
このM&A案件については、私は買い手企業サイドのM&Aアドバイザーとして関与しました。買い手企業サイドとして、財務諸表や組織図などの提供を求めたのですが、一向に資料が届きません。しかしその一方で、売り手企業サイドのM&Aアドバイザーからは、英文の会社のプロフィールやCEOの経歴などの資料提出のリクエストがバンバン届きます。それに漏れなく即レスで対応していたのですが、買い手企業であるこちらからのリクエストにはほとんど対応してくれませんでした。売り手企業サイドのM&Aアドバイザーを紹介してくれたのは私の友人でしたので、
「うーん、ちょっとこのままだと困りますね。財務諸表くらいは出してもらわないと、話が前進しないですよ」
とやんわり伝えたのですが、
「売り手の方が強気なので、すみませんが従ってください」
という返答が…。
これが何度もくり返されると、普段温厚な買い手企業の経営者もお冠に。一旦、このEUの銀行M&A案件は破談となりました。仲介者が多いと、意思疎通が難しくなり、話が進まないことも多くあります。私の場合、「買い手と直接」か「売り手と直接」でない限り、M&A案件には関わりません。
次回以降の記事で、このM&A案件の続きをご紹介します。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
https://news.mynavi.jp/series/cryptocurrency
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