現在では誰もが購入することができ、そしてアイデア次第でビジネスでの利用にも強力な武器となる「ドローン」。この〝便利グッズ〟の存在は、私たちのビジネスをどう変えるのか? 私たちはドローンとどう付き合っていけばいいのか?
(徳本昌大氏のブログ「毎日90秒でワクワクな人生をつくる」掲載文を再編集)
現実の物理的世界を地上からも上空からも、表から裏までスキャンする作業を「現実キャプチャー」と呼ぶ。この技術がいよいよ実際に、ビジネスを変えるところまで熟してきた。(クリス・アンダーソン)
『ハーバード・ビジネス・レビュー テクノロジー経営論文ベスト11 テクノロジー経営の教科書』の、クリス・アンダーソンの「ドローン・エコノミー」がとても興味深いです。
私たちはドローンによって、現実をキャプチャーする時代を生きています。Wiredの元編集長で3D Roboticsの代表をつとめるクリス・アンダーソンは、本書でドローンがもたらすイノベーションをわかりやすく解説しています。
10年前、ドローン技術は研究所の中にしか存在しなかったにも関わらず、現在では多くの現場でドローンが活用されています。
5年前、この技術は非常に高価でしたが、いまや、安価なドローンを買ってきて、クラウドにあるソフトを利用すれば、十分にビジネスに役立つレベルの仕事をこなせるようになりました。
カメラを空に飛ばすのがこれだけ安価かつ簡単になれば、商業的にも実用性が出てきます。ドローンが集めるデータは、建設現場だけでなく、農業(収穫マップの作成)、エネルギー(太陽熱発電や風力タービンの監視)、保険(建物の屋根のスキャン)、インフラ(点検作業)、通信などの広範囲の業界で使われています。
産業界は上空からのデータを入手する方法を追い求めてきましたが、ドローンの登場により、安価に人工衛星よりも解像度の高いデータを、より高い頻度で収集できるようになったのです。 人工衛星は、常に地表の3分の2を覆っている雲で視界をじゃまされるというデメリットがありましたが、ドローンを使えば、その問題は簡単に解決できます。
ドローンの場合、頭上からの視野をレーザースキャンに匹敵する精度で”いつでも、どこでも”提供できる。しかも、この技術はまだ生まれたばかりだ。インターネットを現実世界にも拡張していくという、今世紀の大事業IoT(モノのインターネット)において、ドローンは第3の次元、すなわち「上方」への道を確保する。要するに”空飛ぶモノのインターネット”なのだ。
ドローンはただの玩具にすぎないとか、GoProを載せた空飛ぶカメラ程度だと思っている人も多いと思います。実際、ドローン関連ビジネスで最大のシェアを握るのはこの2つの分野です。
しかし、スマートフォンなど過去の「最先端技術の商用化」の実例と同じように、ドローンもビジネス利用のためのソフトウェアが揃いつつあり、本格的に使えるデータ収集プラットフォームになろうとしていることを忘れてはいけません。
あらゆるアプリケーション・エコノミーがそうであるように、これまでは考えもしなかったような、意表を突く独創的なドローン利用法が新しいアプリで浮上してくるに違いない。さらに、意外性はなくとも効果的なアプリについても、時とともに質が向上していくだろう。
ドローンは、典型的な破壊的(ディスラプティブ)イノベーションといえます。
すでに、これまで数人がかりで何日もかけて行っていた作業が、数時間で完了できるようになっています。極めて鮮明な映像データを、これまでの数分のーのコストで取得できたりするのです。また、携帯電話基地局の検査などの危険な作業を人間の代わりに行えるため、現場の安全確保に不可欠の存在になりつつあります。
ドローンはビジネスに文字通り”新しい視点”を提供しています。低い上空からの視界が、作業現場にも工場にも新たな気づきをもたらしているのです。
ドローンは全地球を、ほぼリアルタイムで高精度なデジタルデータにすることで、人工衛星と路上の間にある”手つかずの中層”を埋めようとしている。コストは、それまでの数分のーしかかからない。「道具としてのドローン」という第3の波は、前の2つの波よりもドラマチックだ。まず、規制緩和と技術進歩によって安全性の高い飛行が可能になれば、上空を飛び回るドローンの数がどんどん増えるだろう。
ドローン用アプリ市場が今後、爆発的に成長します。創的なドローンの利用法を考え出す人が増えることで、ドローンの可能性は飛躍的に広がるわけです。
たとえば、山火事の監視と救助にはすでにドローンが利用されています。発展途上国の人々に無線LANを提供したり、医薬品を配達したり、種や益虫をまいたりすることもできます。さらに、自動運転が進化。ドローンによってコックピットに座るパイロットが不要になるだけでなく、あらゆる意味で操縦者がまったく不要になるために、コストを大幅に低減できます。
スマートフォン技術の価格性能比が向上したことで、ドローンも安価かつ高性能になりました。安価で高性能なドローンを製造できるようになったため、マニアでない普通の消費者(1000ドル程度なら購入する)で、具体的な使用目的(空中からの動画・写真撮影)を持つ人々の手が届く商品になったのです。結果として、メーカー側は新しいユーザーを取り込むため、操縦法をシンプルなもの進化させました。
ドローン戦略を描く段階になると、本体よりもアプリ(利用法)について考えるほうが重要になる。本体はそもそも空っぽの容器であり、そこにどんな”仕事”を注ぎ込むかが大切なのだ。写真や動画を撮影させるのか、現場をスキャンさせるのか、モノを運ばせるのか、通信補助手段として活用するのか。そして、データ収集もある。ドローンは何よりも、データ収集に向いている。
ドローンを戦略的に活用するためには、イノベーションをクラウドへと移す必要があります。 “クラウド・ロボティクス”=ロボットやドローンをクラウドに接続することで、ロボットとクラウドの双方がより賢くなります。
今後、ドローンと企業のソフトウエアがシームレスに一体化すれば、結果として全自動でドローンがデータを集め、それをクラウドに送り、データを分析し、その結果がすぐに役立つ形で企業側に示されるようになります。それがほぼリアルタイムに行われるのです。ここから多くの破壊的イノベーションが生まれ、私たちの働き方や暮らしを変えていくはずです。
ドローンによる「地球スキャンの民主化」によって、私たちはいつでも、どこでも、上空からのデータ取得が可能になります。このデータをリアルタイムに活用することで、様々な分野で破壊的イノベーションが起こるのです。
複数の広告会社でコミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、取締役や顧問として活躍中。インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO/Iot、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役/みらいチャレンジ ファウンダー他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。
サードプレイス・ラボのアドバイザーとして勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
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