M&Aの定義はさまざまで、広義では事業譲渡もM&Aの手法の一つとされています。会社をM&Aする場合、デューデリジェンスなどのプロセスを経る必要がありますが、事業譲渡であればややハードルは下がります。今回は、会社のM&Aではなく、一部門の事業譲渡を行った40代社長のSさんにインタビューを決行。売却理由などを語っていただきました。
― Sさん、本日はありがとうございます。まずは自己紹介を簡単にお願いします。
Sさん:私は東北と関東を拠点に仕事をしています。主にはコンサルティングなのですが、便利屋や印刷屋、マッサージ店などもしていました。今回お話するM&Aは、マッサージ店の事業譲渡を行ったときの話ですね。M&Aアドバイザーには、中島さんに入っていただきました。
― そうでしたね。懐かしいです。4年くらい前(2015年)ですよね?
Sさん:確かそうですね。当時は、月の半分を東北、もう半分を都内でという感じで仕事をしていました。やっぱり都内の方が情報量も多いし、情報の質も違うんですよ。できれば関東に出てきたかったんですが、家族は東北だし、東北でいくつか実店舗も経営していたのでなかなか決められなかったんですよね。
― マッサージ店は、ほとんど奥様が運営されていたんですよね。
Sさん:そうですね。私が月の半分は東北にいないので、やむなくですが。利益はずっと出ていたんですが、妻の負担になっていたことと、正直その事業にもう飽きていたんです。コンサルティングの仕事に集中したいというのもあって、それで中島さんと雑談しているときに「売っちゃおう」って思ったんですよ。
― え? 私との雑談がきっかけだったんですか? 今知りましたよ。
Sさん:実はそう(笑)。なんか「買い手が現れたときが売り時」って中島さんは話してて。
― そんな偉そうなこと言ってたんですか…。
Sさん:その言葉のおかげで、今はやりたかった仕事に集中できていますよ(笑)。
― 私に店舗を売却したいという相談をしてくれて、その後、わりとすぐに買い手が現れたんですよね。
Sさん:そうですね。1か月もかからなかったと思います。事業毎に損益計算書やキャッシュフロー計算書を作っていたので、情報の開示はスムーズにできました。これも妻のおかげですね。譲渡希望額を中島さんに伝えたら、「高い! その半分ですね。自分が買い手だったら、その値段で買いますか? 」と言われたのですぐに直しました(笑)。苦労したのは、働いてくれているスタッフにいつ、どう伝えるかでした。幸い、買い手の方が「1年くらいはアドバイザー的に残ってほしい」と言ってくださったので、しばらくは改装費を出資してくれた新オーナーとのオーナー2人体制ということにして、私は新しいオーナーさんとスタッフの信頼関係ができるように努めました。1年が過ぎた頃に、アドバイザーとしても私は抜けて完全に譲渡しました。
― 理解のある買い手さんで良かったですよね。
Sさん:そうです。運が良かったですね。事業意欲旺盛な方だったので、すぐに2店舗目も出店したんです。今ではもっと増えてるみたいですよ。
― 事業譲渡が完了したときは、どんな気持ちでしたか?
Sさん:ほっとしましたね。大人数ではなかったですが、利益は出てたとはいえ、毎月給与や報酬を払い続けられるかという不安は少しはありましたし、私は不在の間、妻に負担をかけていることもプレッシャーでしたから。今では妻は子育てと趣味に集中できていますし、私もコンサルティングの仕事に集中できています。毎日充実してますよ。
好きで始めたマッサージ店でしたが、いつしか飽きが来てプレッシャーになっていたSさん。事業意欲・拡大意欲のある新オーナーと出会えたことで、SさんやSさんの奥様、マッサージ店のスタッフのみなさんもより充実した日々を過ごせているようです。M&Aは、どこか乗っ取りのようなネガティブなイメージが付きまといますが、実際は関わった人が幸せになれるんですよね。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
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