素人M&Aアドバイザー奮闘記　EU M&A編　No Attack No Chance

『素人Ｍ＆ＡM&Aアドバイザー奮闘記　ＥＵ Ｍ＆Ａ編』の記事では、ひょんな雑談からEUの銀行M&Aに関わった経緯をご紹介しました。今回はその続きです。一度は破談となったM&A案件でしたが、結局は復活します。そして、予想外の結末を迎えました。企業の売買ですから、M&Aは極めて奥深い世界なのですが、やっぱり奥深いです。

No Attack No Chance　何事もダメ元でまず行動

仲介者との意思疎通が難しく、一度は破談となってしまったEUの銀行M&A。売り手企業が提示した譲渡金額は日本円で30億円ほどでしたが、金額が大きくなると仲介者（特にブローカー気質な人）が増え、話がうまく進まないケースもあります。私から買い手企業には「別を探しましょうか？　」という話をしました。しかし、「できれば買いたい。まだノンネムシートですが、銀行を特定できないですかね？　」というオファーが。

ところが、その時点で入手できていた資料はPDF４枚のノンネムシートだけでした。特定できそうな情報はほとんど含まれていません。

「うーん、特定は絶対無理だな」

と思ったのですが、ダメ元でとりあえずデスクリサーチをしてみました。ＥＵのとある国の銀行だったのですが、大国というわけではなかったので、その国の金融庁のページやまとめサイトを調べてみました。それほど銀行の数は多くなさそうです。またまたダメ元で、その国の調査会社数社にオファーを出しました。返信があったのは２社だけでしたが、そのうちの１社は経営者が日本人でした。「これはラッキー！　言葉の壁がない！　」というわけで、「いつ日本にいらっしゃいますか？　スカイプミーティングでも大丈夫です」とすぐにコンタクトを取りました。

PDF４枚だけのノンネムシートから特定してくれた調査会社に感謝

スカイプで２度ほど打ち合わせをし、都内で一度、調査会社の方ともお会いしました。「特定できるかわかりませんが、帰国後にとりあえず調査を始めてみます」ということになり、しばらく連絡を待ちました。調査会社の方も、私と同じダメ元でも動いてみるタイプの人だったようです。そしてその方の帰国から２週間後、あっさりと

「見つかりました。この銀行です。経営陣へのインタビューを打診中です」

と連絡が届きました。いやぁまさか特定できるなんて、正直ビックリですよね。まずは候補先と思われる銀行リストを作成し、順々に電話でインタビューを行ったそうです。詳細なノウハウは開示できませんが、運よく実力のある調査会社と出会うことができました。その約１か月後に、銀行の現経営陣へのインタビューを行ってもらいました。

順調と思いきや…しかし成果に至らないことも多いのがM&A

事前に提供されていた銀行の財務諸表を見る限り、資金が入用な状況でした。買い手企業の買収の意思はハッキリしていましたから、あとは現経営陣へのインタビューで売却の意思確認をしたいと調査会社に依頼しました。ところが、現経営陣からの回答は

「実は決算後に大口の投資家が表れまして、今は売る意思はないんですよ。確かに一度は売却の意向を固めて、数人のエージェントには情報提供したんですが。すみません」

というものでした。残念ながら、EUの銀行M&A案件はここで終わってしまいました。しかし、このM&A案件に関わったことによって、その国の金融庁や商工会議所との関係ができ、まだ法改正の結果待ちですが、M&Aではなく新規銀行設立の話も生まれました。それに、買い手企業の経営者との信頼関係もより一層深まりました。もともとM&Aの仲介手数料をあてにして動いていたわけではなく、一友人として動いていただけですので、成果としては十分ですね。なにも経済的なメリットだけがM&A案件に関わるメリットではないと私は思います。