最近は、書店のビジネス書コーナーに「デザイン思考」「アート思考」などの言葉が並ぶようになりました。以前は「PDCAサイクル」「フレームワーク」などをテーマにしたビジネス書が多かった気がしますが、かつての手法ではうまくビジネスができなくなっているのかもしれません。複雑化・多様化する成熟社会では、アーティストたちの思考が役立つようです。
「チームラボ」と聞けば、多くの人がすでにご存知かもしれません。子どもも大人も楽しめる『未来の遊園地』などが有名ですね。未来の遊園地は、森ビルやイオンモール宮崎、キャナルシティ博多、ららぽーと富士見などの他、シンガポールやクウェート、ニューヨーク、カリフォルニア、フロリダ、ドバイ、トリノ、深セン、上海、香港などでも常設されています。
チームラボと言えば、見る側も参加できるアート作品が有名です。相互に関わりを持つ作品は、インタラクティブアートと呼ばれています。例えば、絵を描くとその絵が勝手に動き出し、絵がプロジェクターで投影されてスクリーンに登場したりします。これまでのアート作品は、油絵や水彩画、水墨画、壁画、フレスコ画、浮世絵、写真、映画、彫刻、陶芸など、作る側(芸術家)と見る側(観客)が明確に分かれていました。しかし、インタラクティブアートでは、テクノロジーを活用することで、その垣根を超えて相互に作用します。ウィキペディアによれば、インタラクティブアートの定義は以下のとおりです。
インタラクティブアートは、観客を何らかの方法で参加させる芸術の一形態である。ある種の彫刻では、作品の中や上や周りを歩くことでこれを実現する。コンピュータやセンサーが観客の動きや熱などの入力に反応するようにした作品もある。インターネットアートの多くは、インタラクティブアートでもある。
最近話題のAIスピーカーやIoT(モノのインターネット)、それらを住居に導入したSmart Apartmentなど、テクノロジーやインターネットを日常生活に活用するケースが増えていますが、インタラクティブアートはその先駆け的な表現だったと言えるのかもしれません。私が学生の頃にはインタラクティブアートを作るアーティストの方はすでに増えていましたので、インタラクティブアートが生まれたのは今から20年近く前の話です。
「プロジェクションマッピング」も、チームラボによって広まった広告手法と言えるでしょう。東京駅が改装された際、駅舎に3D投影されて話題になりました。今では、プロジェクションマッピングは広告手法として定着しています。
このプロジェクションマッピングも、新しいもの好きなメディアアーティストたちはいち早く自分たちの作品に取り入れていました。メディアアーティストとは、現代アートやテクノロジーアート、ビデオアートなど、既成概念に囚われない芸術表現を行うアーティストのことです。なんとも定義の難しい領域ですが、革新的でありながらもときどき古典や伝統に回帰したりと、掴みきれない存在の人たちと言えるかもしれません。
武蔵野美術大学建築学科・映像学科、目白大学メディア表現学科、和光大学表現学部などで非常勤講師を務めるメディアアーティストの瀧健太郎さんは、2006年頃にライブビデオソフト「vvvv」使った作品をよく制作していました。「vvvv」は、ドイツで製作されたWindows用ライブビデオソフトで、フリーソフトながら日本のユーザーは当時ごく少数だったはずです。瀧さんの作品群は、オフィシャルサイト『takiscope』で一部を見ることができます。発泡スチロールで立体物を作り、そこに映像を投影する作品もありましたし、当時修繕工事中だった早稲田大学の大隈講堂に投影しようと企てたこともありました。瀧さんは、私の先生でもあります。今では良い思い出ですね。
今では一般的になったYouTubeも、私が学生のときはマイナーな存在でした。瀧さんのゼミ室でよくYouTubeを見ていましたが、2006年や2007年の頃は、本当にくだらない映像作品ばかりがアップされていたと思います。私たちは映像作品を作っていましたので、よく作品保管庫代わりにYouTubeを利用していました。つまり、私たちの作品も本当にくだらない映像作品の一つでした。当時のYouTubeは、「一部のオタクたちのもの」という感じだったはずです。今のように、さまざまなノウハウをわかりやすく教えてくれるような動画もありませんでしたし、ユーチューバーのような職業が生まれるとも考えていませんでした。
メディアアーティストたちの作品に目を向けてみると、思いがけず、最先端のテクノロジーや時代の先の先に触れることができます。彼ら彼女らがなにを考え、なにを提起し、なにを表現しているか。そんな思考の世界にときどき眼差しを向けるのも、良いリフレッシュになり良いビジネスアイディアを生むかもしれませんね。
気が向いたら、学生当時よく見ていた松本俊夫さん(映画監督、映像作家、映画理論家、元日本映像学会会長)や中嶋興さん(ビデオアーティスト)、ナム・ジュン・パイクさん(現代美術家、ビデオアートの開拓者)、瀧さん同様お世話になった相内啓司さん(映像作家、京都精華大学教員)や小瀬村真美さん(映像と写真のアーティスト)の作品についても触れたいと思います。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
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