「PDCAサイクル」という言葉は、ビジネスパーソンであればほとんどの人が耳にしたことがあるはずです。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)をくり返すことで、事業や業務を継続的に改善していくビジネス手法のことです。この「PDCAサイクル」、果たして今でも役に立つのでしょうか?
「PDCAサイクルなんて、全く役に立たない」とまでは言いませんが、すべての経営課題がPDCAサイクルによって解決されるなんてことはありません。妄信的にPDCAサイクルを導入している人もいるかもしれませんが、それによって経営課題が解決され、「仕事がうまくいった! 」というケースがどれほどあるのでしょうか。
PDCAサイクルが役立つのは、「正解が明確な場合」に限られると私は思います。つまりある程度、事業や業務の「型」ができており、その方法をブラッシュアップしていけば良い、という場合です。予測がある程度可能で、実績値を取りやすい既存事業などであれば、PDCAサイクルは役立つでしょう。
しかし、予測不可能な新規事業の場合、PDCAサイクルはほとんど役に立たないかもしれません。むしろ、PDCAサイクルが決断を遅らせ、思考を固めることで悪い方に作用してしまう可能性すらあります。日本企業は、「カイゼン」は得意ですが、新しくなにかを発想することは不得意です。消費者のほしいものが明確だった成長社会時代には、PDCAサイクルはうまく作用していたかもしれませんが、現代のような成熟社会時代では、消費者の趣味嗜好は多様化し、ある程度満ち足りた生活ができている消費者自身、なにがほしいのか明確に認識していません。
現代人は「わかりやすい症候群」だと言われています。すぐに答えを求めがちです。「で、結論は? 」というやり取りにもそれが表れていますし、スマホなどですぐに検索できることも影響しているのかもしれません。
ですが、人生においても、会社経営においても、一つひとつの事業においても、明確な答えはわかりにくくなっています。PDCAサイクルのような「型」に押し込んでも、万物の答えは出ません。私たちは、「正解はない」という厳しい答えと現実に向き合い続ける必要があります。
『メディアアーティストたちの表現は商業広告の20年先をゆく』の記事でご紹介したように、最近はデザイン思考やアート思考という言葉がビジネスの世界でも注目されるようになりました。メディアアーティストや芸術家たちは、正解のない問いに日々向き合い、作品のなかでその格闘や葛藤、たどり着いた真理を表現しています。芸術表現は、突き詰めれば哲学です。哲学とは、正解のない問いと向き合うことですから、メディアアーティストや芸術家たちの視点や発想は、現代では役立つのかもしれませんね。
有名なビジネスパーソンであるスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクは、そのような「正解のない問い」と向き合ってきた経営者なのかもしれません。彼らの問題意識は、普通の経営者とは異質ですし、視点が高い位置にある印象があります。世界や時代を俯瞰して観察し、より広い問題に対してアプローチしようという思考です。
もちろん、世界中のすべての経営者がスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような視点を持ち、同じような仕事の仕方をしていては、世界は成立しないでしょう。天才はあくまでも天才。稀な存在だからこそ、存在意義があるわけです。世界中の全員が天才になれば天才も凡人になりますし、大手企業の経営者と中小企業の経営者、ベンチャー企業の経営者には、それぞれの役割があります。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような経営者だから優れた経営者なのではなく、それぞれがそれぞれ優れた経営者なのです。
経営者としての成功にも、人生の成功にも正解はありません。「正解のない自由さ」を楽しむことができれば、それだけで成功なのかもしれませんね。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
https://news.mynavi.jp/series/cryptocurrency
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