日本の中小企業オーナーや投資家の方々とお話をしていると、思わぬ失敗パターンが見えてくることがあります。客観的に見ると、「なぜそんなことをしてしまったんだろう…」と感じることもしばしば。今回は、海外進出・海外事業でやってはいけない3パターンをご紹介します。
「現地のパートナーを信用している。だから、契約書は特にない」
「パートナーが裏切るようなことはない。だって良いやつだもん」
そう言って、契約書を交わしていないケースがあります。これは、絶対にやってはいけないパターンです。現地のビジネスパートナーとの信頼関係があるからこそ、契約書はしっかりと交わした方が良いでしょう。
本当に信頼関係があるなら、「じゃあ、契約書を交わそう」の一言くらい言えて当然ですよね。その場で完結するような仕事や約束事なら口頭のやり取りだけでも良いのですが、事業は多くの場合、関係性を長く続けることが前提です。末永いお付き合いをするためにも、契約書は絶対に交わすことをおすすめします。
契約書は、現地の言語と英文の2言語で交わす方が良いと思います。例えば、インドネシアでは最高裁で「インドネシア語以外の契約書は無効」とする判決が出ています。多くの新興国でも似た傾向があるかもしれません。必要に応じて日本語にも翻訳し、現地の法律に精通した人にリーガルチェックをしてもらうことも大切です。
契約書は、「万が一」に備えてトラブルにならないように、あらかじめ約束事を取り決めておくものです。トラブルになってからの対応ですと、海外の場合「時すでに遅し」ということも多くありますから、法的に効力のある方法で契約書をぜひ交わしてください。
「この方法で大丈夫だよ。だって去年も、その方法でできたからね」
と安心していると、予想と全く異なる結果が待っているかもしれません。
特にASEANなどの新興国の国々では、法律や規制がコロコロと変わります。毎年変わるのは当たり前。早ければ数カ月に一度。もっと早ければ、ほぼ毎月変わります。あまりにもコロコロ変わるので、だれも正確な情報をキャッチアップできない。なんてこともあります。実際に、「ルールはそうだけど、現場の運用は違う」ということも多くあります。情報が末端まで行き届いていないということですね。
これは、新興国に限った話ではないかもしれません。日本だって、細かく言えば法律や条例などは次々と新しいものもできていますからね。ただ、新興国はその変化が激しい気がします。「先月はできたけど、今月はどうかわからない」くらいの気持ちで臨む方が、精神衛生的にも良いでしょう。何事も、やってみないとわからないのです。
「契約書には、『着手金の50%は、プロジェクトが廃止になった場合返還される』旨の記載がある。だから大丈夫」
そう書かれていても、お金が契約書のとおりに戻ってくる可能性は五分五分です。「戻ってくればラッキー」くらいが正しいかもしれません。
「いや~、もう使っちゃったんだ」
「親が病気になっちゃって…」
「………(音信不通)」
返金を求めたとしても、これらの反応をされることが多いでしょう。一度支払ったお金は、二度と戻ってこない。そう考えていた方が、後から怒る必要もありません。金額によっては一部戻ってくるかもしれませんが、労力に見合うかどうかですね。裁判などをするケースもありますが、「結局お金もかかり、労力もかかり、ストレスもかかっただけだった」という人も多いですから、対応はよくよく考えた方が良いでしょう。経験を学びとして捉え、切り替えて次に進んだ方が良いこともあります。
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。
https://news.mynavi.jp/series/cryptocurrency
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