Ｍ＆Ａはタイミングも大切！　常にアンテナを貼ってくれるＭ＆Ａアドバイザーと出会うべし

適正な譲渡価格、的確なアドバイス、直近の事業実績…などなど、Ｍ＆Ａを成功させるための要素はたくさんありますが、実は「タイミング」も極めて大切です。良いタイミングを逃さず掴むためには、常に感度良くアンテナを貼ってくれるＭ＆Ａアドバイザーの存在が欠かせません。今回は、タイミングがかみ合い、早期にＭ＆Ａが成功した例を取り上げます。

買い手企業は「何人か退職予定があるので、退職のタイミングで買いたい」

買い手企業は、広告制作などを行っている制作会社でした。常に人手不足の問題を抱えており、「育てては人が辞めていく。ある意味、人材輩出企業ですよ。もちろん、悪い意味の」と人事担当の方が話していました。「求人誌や求人サイトに出しても、なかなか採用できない。採用コストは毎年上がっている」ということで、人材獲得のためにＭ＆Ａを活用したいと考えたそうです。すでに、社員面接の結果、何人かから退職の意向が出ており、このままでは今ある業務もこなせない。残っている社員に負担がかかり、さらに退職希望者が出てしまうかもしれない、という切羽詰まった状況下でした。数社のＭ＆Ａ会社と数名のＭ＆Ａアドバイザーにリクエストを伝え、返事を待っていました。

売り手企業は「決算を終えたら早々に会社を畳みたい」

一方、売り手企業は、経営者の方が65歳。出版社の下請けを行う編集プロダクションでした。社長さんは年齢を重ねたことで、これまではあり得なかった誤植などのミスをしてしまうようになり、「黒字だけど、このまま恥をさらすくらいなら会社を畳もう」と考えていたそうです。社員は５名。退職金やボーナスを払うだけの余力もあります。Ｍ＆Ａという選択肢は全く考えていなかったそうですが、たまたま一緒に飲んでいた大学時代からの友人が、Ｍ＆Ａアドバイザーになっていました。「あなたの会社、それ売れますよ」という友人の一言で、Ｍ＆Ａという出口を考えるようになります。そしてこのＭ＆Ａアドバイザーが別のアドバイザーに相談したところ、買い手企業として前述の制作会社が手を挙げました。

Ｍ＆Ａのハードルは社員の理解を得られるか？

偶然にもタイミングが合い、すぐにでも話がまとまるかのように思えた両社のＭ＆Ａでしたが、クリエイティブな仕事だからこその、社員のみなさんの仕事へのこだわりが思わぬハードルとなりました。広告制作と書籍制作では、その性質が異なります。デザインソフトを使ったり文字を書くことには慣れていた社員のみなさんでしたが、広告制作の経験はありませんでした。また、本づくりへのこだわりもありました。しかし幸いなことに、社長さんと社員のみなさんには信頼関係があり、社長さんが一人ひとりと面談を行ったことで理解を得ることができました。日頃からコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていた社長さんの功績ですね。結果、最初の両社面談から１か月半ほどでＭ＆Ａを成功させることができました。編集プロダクションとしての業務も一部引き継がれ、今は広告制作と編集プロダクションの業務の両方を行っています。これが広告制作を行っていた社員のみなさんの刺激にもなったようで、離職率も改善傾向のようです。Ｍ＆Ａによって、思わぬ効果を得られたのかもしれません。