営業活動を効率化するため、あるいは活性化するために、組織を新たに組み直す作業は一つの手段となりうるのかもしれません。組織改編によって顧客との距離をできるだけ近づけ、それを商品やサービスの積極的販売へと繋げようと考えることも決して無駄ではないでしょう。
しかし、安易に組織を改編してしまうことには、リスクが伴うことがしばしばあります。そのリスクは負うべきものであるのか否か、これを検討せずに物事を進めてしまうことがないようにしなければいけません。組織を改革する際の注意点、これをまとめていくので、実際にそのための行動に出るかどうかの判断材料としてみましょう。
他社と自社の立場・環境の違いを認識すること
近年、企業と顧客・消費者の距離はどんどん縮まってきています。企業は直接顧客や消費者にアプローチすることができ、消費者側も安心感が強まるため双方にとってメリットがあり、よってこの形態は今後も広がりを見せていくことでしょう。また、企業にとっては流通経路の中間マージン等のコストカットにも寄与し、利益を生み出す面でもこの距離の縮小は非常に大きな意味を持ってくることになるのです。
ただ、そうした近年の流行りや、競合他社が顧客や消費者との距離を縮めるための組織改編を実行したからといっても、安易に追随してはなりません。なぜなら、他社と自社は同じ企業体ではないからです。同業種であっても、実際に取り扱っている商品やサービスは異なり、シェアや市場からの認知度なども異なるはず。組織形態を真似したからといって、必ずしもいい結果に結びつくとは断言できません。
そもそも組織というのは時間をかけ構築されていくもの。現在の組織に問題があるのであれば、その問題点を解決するための策をまずは講じるべきであり、組織を改編しさえすれば全てが解決するという短絡的な考え方は禁物なのです。
自社と他社は違うものであり、その立場や環境も異なるものであることを認識し、それぞれの立場や環境、現在までの経緯を踏まえた上で組織を本当に組み直すのかどうかを考える必要があります。
組織改編により増大する可能性のあるリスク
企業と顧客・消費者との距離を考えた場合、あるいは接点の増加という視点に立った場合、事業部を複数設置し、営業組織を細分化するという体制を構築することは確かに有効な手段となり得ます。
顧客や消費者との向き合い方が変わりますし、その中でも特に顧客などへのアプローチや市場調査等に重点を置いた事業部を設ければ、市場のニーズを吸い上げる、それを踏まえた商品やサービスの企画が可能となる、商品を届けたりアフターケアもしやすくなるというメリットが生まれるでしょう。
しかし、事業部を複数設けるこの組織形態は、確かに顧客のためにはなるものの、従業員の数などを増やさなければならず、非常にコストがかかってきてしまいます。それぞれの事業部を最適化するための設備なども導入すれば、よりコストは増大化してしまうでしょう。
さらには、トップや幹部などとの間に距離ができ、指示系統が崩れ、また、意見の集約などもより難しくなるというリスクも考えられます。
加えて、現場で働く従業員のモチベーションの低下を招く恐れも考えておかなければいけません。組織が変われば、それに対応するためにストレスもかかりますし、もしその組織が活動しづらいものであり、結果が伴わなければ、従業員たちは反発しかねないでしょう。
組織を再構築し組み直すことには、こうしたリスクがつきまとうことを知っておく必要があります。それでもなお検討に検討を重ね、やはり組織改編が必要であると判断されれば断行するべきですが、安易な組織改編は企業組織そのものを破壊する行為になりうることを覚えておかなければいけないのです。
組織の再構築や改編以外の解決策も探ること
市場のあり方が大きく変わった時、また、競合他社が組織を見直し大きな業界変動が行った時などは、どうしてもそれに倣おうとしてしまいがち。その選択が正しい場合もありますが、それよりもまずは、組織を組み直す以外の解決策がないかを探ることが重要です。
上でも説明したように、組織の再構築は簡単なことではありません。見直し後の組織形態によってはコストが大幅にかかってしまいますし、従業員のストレスや不満を誘発するリスクもあります。それで売り上げや利益が上がらなければ意味がないどころか、企業に大ダメージとなってしまうでしょう。
優秀なリーダーのいる企業であれば、その人が企業やそれぞれの部署を把握しており、市場や業界に変動が起こった時にも適切な指示を出しながら対応することができるはず。実際に、組織を新たに構築し直さなくても問題点を解決し、市場や業界から取り残されることなく事業を展開している企業も少なくありません。
営業マネジャーという立場にいるのであれば、そうした点にリーダーシップを発揮するべきでしょう。組織を再構築するのは、その後でも遅くはないのです。
もし実際に組織を見直すのであれば、リスクやコストなども考え、また、現場の従業員などの声も取り入れた上で丁寧にシミュレーションを重ねつつ検討していくべき。一つの判断の誤りが組織全体を沈没させかねないという意識を持っていれば、安易な組織改編以外の解決策へと辿り着けるのではないでしょうか。