営業エリアが広範囲に渡り、それぞれのエリアごとに営業活動を行う担当者を配置した方がいいと感じるなら地域別組織を取り入れ、また、商品やサービスを複数抱え、それぞれに専門性を必要とする場合には商品別組織を編成するなど、企業や取り扱い商品によって組織の在り方というのは変わってくるものです。
「顧客別組織」も複数考えられる営業組織形態の1つでしょう。この顧客別組織がどういったものなのか、特徴とともにメリットやデメリットなども取り上げていくので、他の営業組織形態とも比較をしながら、もし必要であると判断できれば組織再編時にこの形を取り入れることをさらに検討してみてください。
顧客が企業や集団の際に採用すべき「顧客別組織」
営業部門は、必ず顧客や消費者と向き合い、そうした人や企業が満足するような商品・サービスを提供しなければいけません。商品やサービスを提供する先が個人ではなく企業などの塊である場合に採用する価値が出てくるのが「顧客別組織」です。
営業を担当する従業員がそれぞれの顧客につき、顧客ごとにその担当営業マンを配置するのがこの組織形態の最大の特徴。顧客が商品やサービスについての詳細を知りたい、あるいは買いたいと申し出てきた場合に、担当の営業マンが出向き、その商品やサービスの説明、販売等を行います。
営業マンが自社で取り扱う全ての商品やサービスに関する知識を有し、顧客に対してその全てを説明・販売できる点が大きなポイント。商品別組織では、同一顧客が別の商品に興味を持った段階で説明・販売する担当者を変更しなければならないため、そうした事態が起こりうる可能性が高いのであれば、この顧客別組織は非常に有効に作用するでしょう。
その他のメリットもありますが、逆にデメリットもあり、それらは後述するものの、商品等の販売対象が企業などであれば、この形態は非常に大きな意味を持ってくるはずです。
サービスの充実性や顧客の満足度が上がる可能性大
顧客別組織の一つのメリットは上でも示したように、担当の営業マンのみで自社で取り扱う全ての商品やサービスの取り引きを行うことができる点であり、これによって窓口を一本化し対応することが可能です。これは当然顧客にとっても大きなメリットとなります。常に同じ担当者と連絡を取り合えるわけですから、問題が起こっても対応してもらいやすくなるのです。
また、自社と顧客の間に信頼関係を生みやすいというメリットもあります。顧客からすれば企業に問い合わせる時には常に同じ営業担当者が窓口となるため、双方にとって関係を深化しやすく、継続した付き合いができるようになるでしょう。顧客や得意先、取引先などの相手企業の抱える問題点、欲しているもの、要望などがあれば、その情報も獲得しやすくなるはず。ニーズに応えるという意味でも、非常に有意義なのがこの顧客別組織体制なのです。
これはつまり、サービスがより行き届きやすく、また、手厚くなることも意味しています。それを重視するのであれば、この組織形態を選ぶ価値が出てくるのかもしれません。
顧客別組織型の営業だからこそ生じる課題とは
顧客との距離が近くなる点は、確かにこの顧客別組織のメリットと言えるでしょう。しかし、下手に関係が親密になってしまうと、それによって弊害が生まれる可能性も否定はできません。顧客から「優遇してくれないか」と依頼されたりすれば、営業担当者もそれを無下にできなくなる可能性が出てきます。営業担当者が企業、あるいは営業部と顧客の板挟みに遭い身動きが取れなくなることも考えられるため、それをどう防ぐかを考える必要がありそうです。
営業担当先を決定するということは、他の顧客とは直接接しないことにもなります。1人の営業マンが複数の顧客の相手をすることは当然考えられるものの、顧客別組織を編成した場合には、どうしてもその数に限界が出てきてしまうでしょう。自分が担当している顧客以外の顧客の情報、得意先の動向、ニーズなどを掴みにくくなり、一様なサービス展開とならない可能性も出てきます。商品やサービス本体は同じであっても、そのあとのフォローの体制や対応などに差があれば、それが問題として浮かび上がることもあるのです。
また、顧客が広範囲に渡って支社などを設けている場合、決まった営業担当者が日本中を飛び回らなければならないケースも出てきます。これではコストが非常にかかるため、効率的な面から考えるとデメリットとなってしまうでしょう。顧客別組織形態にはこのようなデメリットや課題もありますから、メリット面と照らし合わせながら、また、企業規模や商品内容、顧客の特性なども考慮しつつ具体的な組織編成へと活かしていかなければいけません。