企業の営業部門は、営業活動を行うためのテリトリーを設定し、そこに適切な人材を配置して業績アップを図る戦略をとることがしばしばあります。これはテリトリー制などと呼ばれる手法で、無駄なコストを省ける、各地域にあった営業戦略を練ることができる、それによって効率を上げることができるなどのメリットがあり、営業活動を行う上では非常に重要かつ有効な手法となっています。
この有効性を大いに享受、また、拡大していくには、人材配置を適切に行わなければいけません。この人材配置は、それぞれに分けられたテリトリーの特性や性質といったものに左右されます。どのようなテリトリーにどのような営業担当者を配置すべきなのか、それを大まかにではありますが、いくつかに分類しながらチェックしていきましょう。
また、テリトリー管理を行う際の重要なポイントについても触れていきます。参考にしつつ、営業部門の活性化へと繋げていくようにしてください。
シェアや成長率などを考慮して行いたい営業担当者の配置
テリトリーは必ずしも同じ特性を持っているわけではありません。また、競合他社であっても、同じようなテリトリー分けをしているとは限らず、それぞれの企業や営業部門によって大きな差があることも少なくないでしょう。ですから、ここで挙げるのはごくごく一部の例に過ぎませんが、各テリトリーをPPM分析によって4つに分類したとき、それぞれのテリトリーにはどのような営業担当者を配置すべきなのか、これを見ていきたいと思います。
まずは、「スター」と呼ばれる特性を持っているテリトリーから。ここはPPM分析で見たときに、競合他社と比較しても自社のシェア率が高く、また、市場の成長率も上々なため、非常に多くの利益を生み出すエリアです。一方で、経営資源の投下も非常に多くなるため、とても注意深く営業戦略を練らなければならないでしょう。
こんなテリトリーには、ベテランの営業担当者を配置します。競合他社は自社のシェアを切り崩そうとしてきますし、市場が拡大している分、どの企業にもチャンスがあるため、若く経験の浅い営業マンでは負担が大きいのです。
次は、いわゆる「金のなる木」の特性を持っているテリトリー。ここは、市場の成長率で見たときにはあまり高くはありません。しかし、自社のシェアはしっかりと確保しており、ある程度の利益を確保できるエリアとなります。ただ、今後市場の成長率がさらに下がれば、利益の確保が難しくなるでしょう。
こうしたテリトリーには、中堅の営業担当者の配置がベストであると考えられます。すでにシェアは確保しているので、ベテランを無理に投下する必要はありません。しかし、既存の顧客を若い営業マンに丸投げしてしまうと離れてしまうリスクが高まるので、そこそこの経験を積んだ中堅営業マンに任せることが適切な選択となるでしょう。
次は、PPM分析において「問題児」と表現されるテリトリーです。ここは、市場の関心が高く成長率もうなぎのぼりなのですが、自社のシェアが競合他社と比較して非常に低いという課題を抱えているエリア。経営資源を大幅に投入してもシェアの拡大が難しく、なかなか利益に結びつかない地域と言ってもいいでしょう。
こうしたテリトリーに営業担当者を配置するときには注意しなければなりません。基本的には市場が成長中のためシェアの拡大を目指し、営業経験の豊富なベテラン営業マンを配置します。ただ、競合他社にはどうも太刀打ちできない、あるいは、市場は今後停滞か衰退していくだろうと予測する場合には、若く経験の浅い営業マンを配置することも考えられます。
そして、「負け犬」と表現されるテリトリーですが、ここは、成長も見込めずシェア率も低いため、配置する営業マンは若手で問題ありません。撤退対象となるこのテリトリーは、まだその決断をする前なので若手の営業マンで様子を見るという考え方が一般的。このように、自社のシェアや競合他社との関係性、市場の成長率や購買金額などによってそれぞれのテリトリーを判定し、そこに適切な営業担当者を配置していく、これができればテリトリー制のメリットを受けながら戦略的な営業活動を展開していくことができるでしょう。
人材配置と同様に必要になる戦略
PPM分析というのは、あくまでもどのような営業戦略を練っていくのかを考える際に用いる一つの指標に過ぎません。この分析を元にテリトリー設定を行うとも限りませんし、むしろ他の要素を重要視してテリトリー分けをしていくことの方が多いでしょう。ただ、テリトリー制を用いるのであれば、それぞれのテリトリー内の特性をつかむことが重要であり、そこにはPPM分析で分けられる4つの特性のいずれかを持ち合わせているエリアも出てくるはず。そのようなときには、上で説明したことを参考に営業担当者を配置していくことも検討する価値が出てくるはずです。
それに加えて、人材配置を行なった後には、それぞれのテリトリーごとに、あるいは営業部全体で戦略を練っていく必要にも迫られます。競合他社と比較してシェアを十分に確保しているテリトリーでは、それ以上のシェア拡大を望むのは難しくなるため、それ以外のテリトリーにコストや人員を投下するなど、複数のテリトリーを総合的に考えた戦略を練ることも求められるのです。
一つ一つのテリトリーの特性ばかりに意識を持っていかれ過ぎないように気をつけましょう。重点的に営業活動を行わなければならないテリトリーと、優先順位の低いテリトリーが出てくるはずですから、各テリトリーとの兼ね合いによって営業戦略を考えていかなければいけません。
コストをかけないからといって営業部全体、企業全体で競合他社に競争力で敵わなくなるというわけではありません。コスト・リーダーシップ戦略を用いれば、コストをかけずとも競合他社に勝つことはできますし、コスト以外の部分で他社よりも優位に立つことを目的とした差別化戦略や、重要なテリトリーに経営資源を大幅に投入する集中戦略などという考え方も選択肢としては出てくるでしょう。これらを組み合わせることもテリトリー制においては可能となります。
テリトリー管理は状況により改変等の検討もすること
各テリトリーの特性を把握しながら営業担当者の配置を行っていき、そしてそれぞれのテリトリーに適した戦略、あるいは営業部全体での戦略を練っていくことが重要なテリトリー制ですが、このシステムは、市場や環境の変化によって見直す必要が出てくる点も押さえておきましょう。最初に設定したテリトリーや営業担当者の配置が、その後もずっとベストであるとは限らないのです。
テリトリー内のニーズの変化、顧客や消費者の増減、そもそも流行り廃りなども敏感に感じ取る必要が出てくるはず。そうしたものを勘案しながら常にテリトリーの見直しや配置する営業マンの刷新の必要性を探っていきます。最初は検討から始まりますが、もし必要性が高いとなれば躊躇なく改変し、よりその時のニーズや状況、環境にマッチしたテリトリーの設定と人材配置になるようにしなければいけません。