自社の商品を手に入れ活用・利用している顧客たち。この顧客たちと自社との関係性をしっかりと評価し、そして格付けをすることで、今後の営業方法にも大きな影響を与えることになるでしょう。
顧客を評価しランクを分けるために用いられる「ABC分析」。これはあくまでも、自社にとって主力である企業と、準主力である企業、そして、まだまだ主力とは言えない企業の3つのタイプに分ける分析手法ではありますが、最初に行う評価や格付けのための手法としてはオーソドックスなものであり、まず用いるべき分析方法です。
ただ、ABC分析で顧客を主に3つのカテゴリーに分けただけで終わってしまっては意味がありませんし、それぞれを主力・準主力・それ以外と単純に判断してしまうのもまた、物足りない評価・格付けとなってしまうでしょう。他にどのような考え方で、このABC分析を上手に活用していくべきなのか、それを考えていく必要が出てきます。
過去の同様の分析データとの比較を
企業としてまだ出来立てである、あるいは、今回初めて顧客管理の一環としてABC分析を活用したというのであれば必要ありませんが、もし以前に、同様の分析手法を用いて顧客を評価・格付けしているのであれば、それとしっかりと比較をしなければいけません。
他の分析手法にも同じことが言えますが、過去のデータと直近のデータを比較することで見えてくることがあるはずです。例えば、ランクが変わった顧客企業もあるでしょう。過去の分析ではAランクだった企業が、直近の分析ではBランクへと落ちてしまった、そういう企業も出てくるかもしれません。逆に、ランクが上がった企業も出てくる可能性があります。
ランクは変わらないものの、自社の売り上げへの貢献度が落ちたり、顧客全体で見たときに、売り上げの割合が落ちたりした企業も出てくるかもしれません。当然、その逆の変化も考えられます。どのように変化をしているのかによって考え方や見方は変わってきますが、この変化を捉えることがまずは重要です。過去の同様の分析によって出てきたデータとの比較をしないと気づかない点ですから、言い換えれば、今回のABC分析によって導き出された評価や格付け、そしてデータも今後の変化に気づくための材料として、しっかりと保管しておくことが求められるのです。
比較した上で詳細な格付けと分析を
過去のABC分析のデータと今回のABC分析のデータを比較すると、上で示したような変化を感じ取ることができます。その上で、新たな格付けやランク付けもしておくことをおすすめします。
例えば、Bのカテゴリーにランク分けされている顧客を全て同列に扱うことは無理があることを理解しなければいけません。Aのカテゴリーから落ちてきた企業もあれば、Cのカテゴリーから上がってきた企業もあるからです。どちらに関しても原因を追求しつつ、それを踏まえた上で、全く異なるアプローチをしていく必要があるでしょう。これは他のカテゴリーにも当てはまることなので、正しいアプローチをするためには、それぞれの顧客企業を分析し、さらに詳細な格付けをする必要があります。
前回も今回もAのカテゴリーにランク分けされた顧客にも、当然違いが出てくるはずです。Aのカテゴリーの下の方からトップに上がった企業と、トップから下へと下がった企業があれば、やはり同じ扱いをすることは難しいでしょう。主力の顧客が、なぜさらにその勢いを増したのか、逆に、まだ主力の顧客ではあるものの、なぜその勢いが衰えたのかを分析し、顧客としての成長度合いの移り変わりによって詳細な格付けをしていくことが求められます。
よくよく分析してみれば、ある企業は自社との取引量も売上額も全く変わっておらず、しかし、他の顧客の取引量や売上額が大幅に伸びたために、勢いに変化があるように見えただけかもしれません。この場合、そのある企業については、たとえランクが下がったとしても悲観的に捉える必要はないでしょう。このように、詳細に分析しながら企業ごとに細かな格付けをしていかなければ本質は見えてきませんから、この作業を慎重に行いながら顧客ごとの特徴を掴むように心がけ、作業を進めていってください。
それぞれの顧客に見合った営業戦略を
上で紹介したような作業を行なっていくことで、それぞれの顧客企業に見合った営業戦略を練りやすくなるはずです。顧客の特徴が掴めてくるわけですから当然でしょう。大事なのは、過去のABC分析の結果と比較をし、その原因を追求していくこと。原因がわかれば、自ずとアプローチするポイントも見えてきます。ランクが上がった企業に対してどのような営業活動をして、そのような結果になったのか、その営業活動手法は他の企業に対しても応用できるものなのか、こうしたことを柔軟に考えられるようにするために行うのがABC分析です。
顧客それぞれにさまざまな事情も抱えていますから、それも考慮しながら営業戦略を練り上げていきましょう。同じような取引額の顧客が2社あり、どちらもCのカテゴリーに属していたとします。Y社は自社と専属的な契約を結び、X社は競合他社とも契約を結んでいる場合、同じCカテゴリーに属してはいますが、アプローチ手法は全く異なったものになるでしょう。
Y社との取引額は、この企業が成長しない限りこれ以上伸ばすのは難しいはずですし、しかし、X社は競合他社からシェアを奪い取ることで急激に取引額を増やせる可能性を秘めていることになるわけです。
単純に自社との取引のみを参考にするのではなく、さまざまな市場環境や顧客特有の事情、競合他社との関係性なども含めて、それぞれの顧客に見合った営業戦略を生み出していく、それが正しい顧客管理のあり方になると考えておかなければいけません。ABC分析を用いた顧客の評価と格付けは、まさに、そのために行うものなのです。