営業組織があれば、そこには必ず上下関係が存在しています。毎年新入社員を採用する企業もあれば、営業マンが1人や2人しかいない組織もあるので必ずしも当てはまるわけではありませんが、通常は営業マネジャーなどと呼ばれる上の立場の者がおり、その下に複数の営業マンがいるという構図になっているはず。もっと細かな役職が存在しているかもしれません。しかし、ここで重視したいのは営業組織を束ねるトップの人物と、その部下との関係性です。
両者の関係性は、主に4つのタイプに分類することができるでしょう。1人の営業マネジャーが、全ての部下と同じ関係性を築けるとも限らない点には注意が必要です。同じ営業マネジャーであっても、部下が変われば関係性が変わることもあるのです。
その4つのタイプの関係性を紹介していくので、営業マネジャーはそれぞれの部下との関係性がどのタイプに当てはまるのかをしっかりと見極めた上で、部下の行動管理を行うとともに、指導や指示の仕方を工夫していきましょう。
信頼関係を築きやすい「緊密行動重視型」
まず紹介するのが、「緊密行動重視型」と呼ばれる関係性です。これは、フットワーク型とも呼ばれ、お互いの関係性が非常に濃く、営業マネジャーが指示を与えれば、指示を受けた営業マンはそれをすぐさま実行に移すことが可能な、そんな関係性のことを指します。
営業マンが目標を達成できないケースが生じたとき、営業マネジャーはその解決方法をイメージできており、また、営業マン側もどこに問題があってどう行動すればその問題が解決できるのか、これをイメージできる状態であるときに、こうした関係性が築きやすいと言われています。
ミーティングなどを行っても細かな指示やトレーニングなどは必要なく、お互いに信頼し合いながら仕事を進めていくことができるため、営業マネジャーの後任として育成していくこともしやすいでしょう。まさに両者の理想の関係と言えるのかもしれません。
上下関係に逆転現象が見られる「奉仕型」
上の例で言えば、営業マンが目標を達成できなかったときに、営業マネジャーはその理由や解決策が見出せないけれども、目標を達成できなかった営業マン自身は、その理由や課題の解決方法がイメージできている場合、そんな両者の間には「奉仕型」と呼ばれる関係性が生まれることがあります。これにも他の呼び方があるのです。それが、御用聞き型。
部下である営業マンの方が優秀・有能であり、上司である営業マネジャーがその営業マンよりも能力が劣るときにこの関係性になってしまうことが多く、つまり、上下関係と実力・能力に逆転現象が見られるのがこのタイプなのです。年功序列が続いてきた日本社会ではしばしばこういう現象が起こり得ます。また、ある程度の経験を重ねた人が転職をし、ある営業組織に属したときにも、この奉仕型の関係性ができあがることがあるでしょう。
営業マネジャーが出しゃばってしまうと関係性は崩れますが、しかし、営業マネジャーが立場(自身の能力)をわきまえ、部下である営業マンの能力を信じ任せることができれば、非常にいい関係性を築くことができるはずです。
営業マネジャーと部下の基本的な形である「企画・提案型」
情報提供指導育成型とも呼ばれる「企画・提案型」の関係性。これは、上司である営業マネジャーと部下である営業マンとの一般的な関係性を示しています。つまり、営業マンが思うような成績を残せないとき、営業マン自身はその解決方法を見出すことができていないが、しかし営業マネジャーはそれを見出すことができている、このようなケースでの両者の関係性をこう呼んでいるのです。
営業マネジャーとしては、まずこの形を目指さなければいけません。営業マンの行動管理を行いながら、そこから得られる情報を元に課題の解決策を見出し、それを営業マンに指導しつつ改善を目指していく。言ってみれば非常に健全な上下関係とも言えるでしょう。
やり方次第で大きな成果を上げることができる「共創型」
目標を達成することができていないわけですから、そこに何かしらの問題があるのは間違いないが、営業マネジャーも営業マンもそれがわからない状態のとき、両者の関係性は「共創型」であると言えるのかもしれません。
共創型提案関係とも呼ばれるこの関係性は、一見、ひどい状態にあると思われがちです。営業マンのみならず営業マネジャーも課題の解決方法を知らないわけなので、そう思われてしまうのも仕方がないでしょう。しかし、この関係性は、お互いに力を合わせて課題の解決方法を見出すことができるため、やり方次第では大きな成果を上げることが期待できる点には注目しておかなければいけません。
特に、大きなプロジェクトや組織として未知数の仕事に取り掛かる際には、この関係性は大きな効果を発揮する可能性を秘めています。営業マンにも大きな権限が与えられることも多く、自ら意欲的に動くことができる環境を与えられることで成長が見込めますし、営業マネジャーも時に営業マンから学びながら、同時に営業マネジャーとしてリーダーシップを発揮することで、その大きなプロジェクトや仕事を成し遂げることが可能となるのです。
営業マネジャーも営業マンも問題や課題の解決方法が見出せず組織として崩壊してしまうリスクもありますが、成功したときの威力は抜群。このような関係性が築ける機会があるのであれば、それが活かされるよう全力を尽くさなければいけません。
どのタイプに当てはまるかを見極めることはもちろん、敢えてどこかのタイプを選択して関係性を築くこともできるはず。営業マネジャーがそこまで計算し関係性を作り上げることができれば、その組織は目標以上の成果や業績を上げることができるでしょう。