とても良好な雰囲気で商談は進んでいても、それが必ず契約に結びつくとは限りません。いくら仲のいい男女であっても、そこから恋愛に発展したり、お付き合いを続けていたりしても、いざプロポーズしたら断られるなんてことはいくらでもあるのです。それと同じで、商談の雰囲気と成約に至るか否かは全くの別物と考えておいた方がいいでしょう。
アプローチや商談に関する戦略を必死で考え、ある程度うまくいったら、今度はクロージングの戦略をこれまた必死で考え、その上で契約にまで持っていく必要があります。クロージングは商談の中の一つではありますが、他のプロセスとは分けて考えることが重要になってくるのです。クロージングで活用すれば成約率がアップするテクニックをいくつか紹介します。ただ、使い所や使い方が非常に難しいので、慎重に活用することを心がけるようにしてください。
「両面提示法」
まず紹介するのが、「両面提示法」と呼ばれるもの。クロージング時に活用できるテクニックに「二者択一法」と呼ばれるテクニックがありますが、それとは似て非なるものなので注意しましょう。二者択一法が、2つの選択肢から1つを選ばせることで契約する雰囲気を作り上げるのに対し、この両面提示法は、商品の良い部分と欠点部分の両面を提示した上で、相手を納得させるテクニックのことを言います。
これから売りたいと考えている商品やサービスの欠点部分やデメリットを提示すると不利になりそうに感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。むしろ、疑り深い人物は、良い部分やメリットしか提示しない人を信用しない傾向があるため、そのような商談相手に対しては有効な手法となるでしょう。つまり、「この営業マンは自社の商品なのに欠点もしっかりと伝える人」と思わせることで、さらに信頼感を得るという効果が期待できるのです。
商談を進めていく上で、その相手に対して、「この人は知能指数が高そうだ」とか、「この人は疑り深く、人間性を重視する人のようだ」などと感じた場合には、この両面提示法の有効性が高まります。良いことばかりを言う人を信用しない、その人間の心理を上手く利用したテクニックが、この両面提示法なのです。
ただ、自社の商品の欠点やデメリットを説明するわけですから、その内容によっては「だったら契約しない」と思われてしまう可能性が出てきてしまう点はおさえておきましょう。そう思われないよう、デメリットを上回るメリットを提示できるかどうか、ここがこのテクニックを使用する上での最大のポイントとなります。
「バンドワゴンアピール法」
商談相手側が複数いるケースもあるかもしれません。そんな時に有効となるのが「バンドワゴンアピール法」です。複数いる商談相手のうち、1人との関係性を強く築くことで、この手法を繰り出すことができます。
信頼関係をすでに築くことができている1人の商談相手を利用し、他の商談相手との関係性も築き上げ、徐々に契約へと気持ちを向かわせる、それがこのバンドワゴンアピール法と呼ばれるもの。相手チームの中に味方を作ってしまうわけです。もちろん、その味方となってくれた商談相手は、あくまでも商談相手。結局は相手側の人間なのですが、だからこそ強い信頼関係を結んでおくことで効果も大幅にアップさせることができるでしょう。
パレードなどを行う際、楽器を演奏する人たちが乗る車状のものをバンドワゴンと呼びますが、それが来るとその周りを取り囲む群衆などが一斉に沸き立ち気分が高揚し、その場がお祭り騒ぎとなります。商談相手の1人にそのバンドワゴンの役割をしてもらい他の商談相手もその気にさせる、これがバンドワゴンアピール法なのです。
商談相手の1人との関係性を築く、そして、商談の場でその人に盛り上げる雰囲気を作ってもらう、これを直接的にお願いすることなく行わなければならないため、相当なテクニックを要します。ただ、成功すればその効果は絶大。「いけるかもしれない」と感じたら、そのように積極的に仕向けてみましょう
「結果指摘法」
商談相手は、どのような状況になったら首を縦に振り契約してくれるのでしょうか。この答えは、とても単純です。商談相手にとって、メリットがあればいいのです。そのメリットをしっかりと提示して納得してもらうのが、「結果指摘法」と呼ばれる手法です。
当たり前のことではありますが、ポイントとなり注目しなければならないのは、自社の商品やサービスを手に入れた時のメリットと同時に、手に入れなかった時のデメリットも提示・説明するという点。契約を結べば、自社の商品などを利用することになるわけです。逆に、契約を結ばなければ、自社の商品などを利用することができません。その両方のパターンの結果をそれぞれ提示することで、「なるほど、契約したらメリットがあり、契約しなかったらメリットが得られないだけではなくデメリットが生じるのか」と思わせることができるのです。これが、結果指摘法の最大のポイント。
契約した時に得られるメリットが小さく、そして、契約しなかった時のデメリットも小さければ、これは契約にまで至らないでしょう。このテクニックを使う場合は、契約した時に商談相手が獲得できるメリットを最大化し、契約しなかった時に商談相手が失うものも最大化した上で比較させなければいけません。その差が大きければ大きいほど、相手は「契約しなければ」と思ってくれるのです。
もちろん、こうしたメリットやデメリットを提示する時には根拠が必要になってきますから、そのあたりも踏まえた上で結果を指摘し、契約してもらう方向へと持ち込んでいきましょう。