顧客管理を行うとき、その顧客を評価しカテゴリーごとに分ける手法がしばしば用いられます。というよりも、ぜひ顧客のカテゴリー分けは積極的に行うべきでしょう。そのカテゴリーごとに戦略を策定し、それぞれの顧客の特徴に見合った営業活動を展開していくことで効率化を図ることが可能となります。
そうした顧客の評価や格付けを行なっていくと、自社にとって重要と思われる顧客と、そこまで重要視すべきではないと判断できそうな顧客とに分けることができます。大事なのは、そうした評価や格付けを行なった後です。考え方を一歩間違えると自社の損失へと繋がってしまうので注意しなければいけません
ネット販売に見られる「ロングテール現象」
顧客の評価や格付けを行う際に用いられることの多いABC分析。この分析手法によって、顧客を大きく3つのカテゴリーに分類することが可能です。Aは、自社の売上や利益に大きな貢献をしてくれている主力顧客、Bは、Aほどではないが、それなりの貢献をしてくれている準主力顧客、Cは、まだまだ貢献しているとまでは言えない顧客たちと、ABC分析によってこのように3つのタイプに分けることができます。
ABC分析は顧客のみならず、自社で取り扱う商品やサービスにも適用することが可能です。取り扱っている商品をこの分析手法によってABCの3つのランクに分けるわけですが、当然、売上高の多い主力商品と準主力商品、そして、主力とは呼べない商品とに分けられます。
ただ、ここで注目したいのは、主力とは呼べない商品、つまりCのランクに位置付けられる商品たちです。
ネット販売ではしばしば「ロングテール現象」と呼ばれるものが起こります。これは、AやBにランク付けされる商品の総売上よりも、Cにランク付けされる商品の総売上の方が上回るという現象です。通常、ABC分析を行った場合、Aのランクに分類される商品の数が最も少なく、Bはその次、そしてCは最も多くなります。取り扱っている商品数などにもよりますが、商品数が多ければ、このような結果となるでしょう。
これがロングテール現象を生み出す最大の原因。ネット販売では店舗が必要ないのでCのランクの商品も取り扱うことが容易なため、取り扱いをやめない限りは販売し続けることが可能となります。その結果、数の多いCランクの総売上が自社の売上の半分以上を占める、このような現象が起こるわけです。これが、顧客管理にどのような影響を与えるのか、よく考えれば、もうわかるのではないでしょうか。
■ロングテール現象を顧客評価や分析に当てはめる
顧客に対するABC分析と商品やサービスに対するABC分析、両者の共通点は、上で説明した「ロングテール現象」が起こる可能性が否定できないということです。これは、分析後に数字を見ていけば明らかになることなので、判断にはさほど難しさはありません。
ポイントは、Cランクに位置付けされてしまった顧客も、個々で見れば、さほど自社には貢献してくれていないかもしれないが、全体で見たときには自社の売上や利益に大きく寄与してくれている可能性があるということです。ここを見誤ると、Cランクだからと安易に考え、営業活動やアプローチも雑なものになってしまいかねません。そうなれば、そのCランクの顧客は自社から離れていってしまうでしょう。
ABC分析は、切り捨ての対象を炙り出す作業ではなく、あくまでも、営業戦略を練るための評価とランク付けのために行われるもの。これが上手にできれば、Cランクの顧客も、さらに自社に対して大きな貢献をしてくれるはず。むしろ、重視すべき存在となるのです。