「効率のいい営業活動を行うための組織を作ろう」と、言葉で言うのはとても簡単です。言ってしまえばいいのですから。しかし、それを実行に移したとしても、実際に効率のいい営業活動が行える組織が出来上がるとは限りません。ポイントをしっかりと押さえておかなければ、むしろ効率の悪い活動をしかねない営業組織が出来上がってしまう可能性すらあります。
意気込みとは裏腹に意図しない組織が出来上がってしまうのは、判断を誤るからです。組織の編成や構築で簡単な判断などないのでしょうがないのかもしれませんが、思い込みや長期的な視点なく、逆に短期的な視点も持たずに組織を作り上げると失敗してしまう可能性が大きくなってしまうでしょう。
効率よく収益を上げるための営業組織を作るには、どの点に注意をすればいいのかを紹介していきます。それらの注意点やポイントを複合的に捉えながら組織を構築・編成していきましょう。
営業組織の効率化で注意したい安易な改廃
営業所を複数持つような企業では、営業組織を改編する際に、売り上げの低い営業所を廃止することを検討しがちです。もちろん、それも組織の効率化を図るという意味では一つの選択肢となるでしょう。しかし、一度廃止してしまうと、新たにそのエリアに営業所が必要になったときに苦労しますし、従業員の士気も下がりかねません。上の方針一つで振り回されてしまうわけですから当然です。
安易な営業所の改編や廃止は、選択肢としては後回しにしておくべきでしょう。まず行うべきは人の配置やお金の回し方、営業計画や予算の見直しや営業活動手法の見直しを検討すること。それでも、その売り上げの低い営業所があるせいで効率よく収益を上げられていないのであれば廃止も止むを得ませんが、いくら組織の効率化を図るからと言っても安易に営業所を潰すことはあってはならないのです。
これは、商品やサービス、顧客などにも当てはまること。売り上げの悪い商品やサービスを廃止したからといって、必ずしもそれが効率化に繋がるとは限らないでしょう。いわゆる細い客でも長い付き合いによって信頼関係が築かれることも多々あります。効率化ばかりを気にしてそれらをバッサリとカットするようなことがあってはいけません。効率順に、あるいは売り上げ順などに並べて、それぞれ方策を練るのは構いませんが、その先の決断は慎重に行うようにしてください。
市場環境によって慎重に見極められるべき効率化
組織の効率化は、市場環境にも左右されます。つまり、市場を無視して営業組織を改編することはあり得ないということです。
もし自社の商品やサービスが受け入れられる市場環境がまだまだ小さく、これからさらに成長していくだろうと予測できる場合には、営業所の廃止や商品・サービスの極端な選別などの改編はあまりおすすめしません。市場が小さければ売り上げが上がりにくいのは当然のことであり、それは決して営業組織のみが、もしくは商品やサービスのみが原因であるとは限らないからです。
営業所を廃止したり商品やサービスを無くしてしまったりなどして効率化を図るのは、市場の衰退が予測できる時にすべき。これ以上市場が拡大することはないと考えられれば、営業所や商品・サービスを大幅に廃止・縮小していくことは効率化に繋がっていくでしょう。
もちろんその後、どのような組織改編をするのかにもよりますが、少なくともそのための人とお金を確保することができるはずです。
これには市場環境を見極める能力が求められ、簡単に判断することもできません。情報を可能な限り集め、それを正確に分析・整理した上で営業組織の改編と効率化に活かしていきましょう。
効率化は自社の能力を冷静に見極めながら行うこと
市場における自社の立ち位置やシェア率なども、当然考慮して組織の作り直しを図らなければなりません。市場のみで判断すれば、それは自社の能力を無視していることにもなるでしょう。もし他社と比較して自社が優位に事業を進めており、そしてシェアも業界でトップに君臨しているのであれば、そこからわざわざ撤退する必要性は見出せないのではないでしょうか。
市場環境が読みにくい場合には、特に自社の能力を冷静に見極めることが求められます。人やお金をどの程度投げ込めば売り上げや利益の確保ができるのかを慎重に検討し、組織作りを行うようにしてください。
市場環境と自社能力の関係性は、詳細な分析によって見極めていきます。地域によっては自社の能力が発揮されシェアが多く確保できていることもあるでしょう。市場全体は縮小傾向であっても、シェアが多く確保できている地域においてはその地域や商品・サービスから完全に手を引いてしまうのは賢い戦略とは言えません。
どうしてそのような状態になっているのかを分析し、それを他の地域や他の商品・サービスに当てはめていく、これが成功すれば他の地域でも同様にシェアが伸ばせる可能性が出てくるはず。地域性の問題なのか、それとも自社能力と営業組織の問題なのか、このあたりも冷静に見極めてから大きな組織編成へと乗り出さなければ、それに失敗してしまう可能性すら出てきます。
効率のいい組織を作ることは重要ですが、それは1つ2つの要素だけで決定することはできず、あらゆる方向から分析を行い丁寧に検討しながら進めていかなければなりません。それだけは忘れないようにしておきましょう。