営業部門で設定する目標や予算は、現実的なものでなければ意味がありません。この現実的とは、簡単に達成できてしまう目標や予算というわけではないので、ここは勘違いしないようにしてください。
難しい目標でも構いません。それが飛び抜けてハードルの高いものであっては現場の士気にも関わるのでマイナスの効果しか出てこないでしょうが、実際に市場状況や世の中の流れ、他社や業界との関係、こうしたものも考慮しながらリアルな目標や予算を設定しなければ、そのハードルを越えるための具体的な方策というのは見出せないのです。
現実的な目標や予算を設定するために必要な要素の一つである「季節指数」について紹介していきます。商品やサービスを消費者や顧客に提供する際には当たり前の概念となりますが、しかし、これにどれだけフォーカスするかによって目標や予算の内容が変わってくるため、非常に重要な要素となることを改めて認識しておく必要があるでしょう。
季節ごとに変わる売上を考慮し予算を設定
多くの商品やサービスは、季節や時期によって売上が変化します。ビールやアイスは夏の方が売れるわけですし、逆におでんやお鍋などは冬にニーズの最高潮を迎えます。もちろん、クーラーで冷えきったオフィスで仕事をするために敢えて夏に温かい食べ物や飲み物などを購入するという人もおり、必ずしもニーズがゼロとなるわけではないかもしれませんが、そのような極端は話ではなく、季節や時期に売上が影響を受けるのは紛れもない事実なのです。
暑い・寒いだけではなく、例えば日本の伝統や文化、あるいはイベントなどに関することも影響してくるでしょう。バレンタインの時期にはチョコレートの需要が上がります。ハロウィンの時期にはマスクや衣装などの業界は売上を伸ばすわけです。節分の時期には恵方巻きの需要が高まるため、例えば米や海苔、それに関連した業界は売り上げを伸ばすことになるでしょう。
梅雨の時期や紅葉の時期にニーズが高まる業界や産業、商品やサービスといったものもありますが、そうしたものも含めて、季節や時期というのはあらゆる商品やサービスの売上を左右する要素となるのです。
営業部の目標や予算は、こうした季節や時期を無視して設定することはできません。むしろ、それぞれの季節や時期を考慮して詳細な目標や予算を設定することが求められてくるでしょう。
こうした売上の変動は、過去の実績から読み取ることができるはず。思いもよらなかった売上の変化があることも、もしかしたらあるかもしれません。なぜこの時期にこの商品が売れるのか、仮にそれが簡単に説明できないようであれば、その秘密や理由を探る作業も必要となるでしょう。その上で、詳細な目標や予算を設定していくことになります。
月ごとに目標を立てることは重要ですが、それを年間の売上や利益の目標を単純に12で割り算出するのはNG。これまで説明してきたように、過去のデータや市場動向なども参考にした上で、根拠のある月別の目標や予算を算出しなければ営業活動の具体的戦略も見出すことができず、競合他社に遅れをとってしまうことになるでしょう。
季節指数を算出し予算額を決定する
季節や時期ごとに変化する売上や利益、これが月ごとにどの程度変化するのかを数値化したものを「季節指数」などと表現することがあります。数字は嘘をつかないと言われることがあるため、この季節指数を算出しておけば、具体的かつ現実的な目標や予算を設定することができるのではないでしょうか。
季節指数を算出する方法はいくつか考えられます。しかし、過去のデータがあるのであれば、それを参考にして割り出した方が手っ取り早く、そして正確でしょう。過去3年から5年の実績データをもとに、それぞれの月でどれだけの売上や利益があったのかを整理します。まずはそれぞれの月の平均売上や平均利益を算出しましょう。
それを元に次期の売上や利益目標を設定してもいいのですが、月の平均売上(利益)を年間の平均売上(利益)で割ると出てくる数字を季節指数と設定し用いると、より簡単に時期の売上や利益目標が計算しやすくなるはずです。こうして算出した季節指数と次期の年間の売上目標や利益目標を掛け合わせれば、それぞれの月の売上目標や利益目標を割り出すことができるわけです。
もちろん、同じ月や季節・次期だからといって必ずしも例年通りの結果になるとは限りません。猛暑もあれば冷夏もあります。厳冬もあれば暖冬もあるでしょう。景気のアップダウンや風潮・ブームによって消費行動も変わってきますから、そうした点も考慮しながら、さらに詳細で現実的な目標や予算といったものを割り出していかなければいけません。