企業が採用すべき数多くの分析手法。その多くは競合他社に打ち勝つために用いられたり、あるいは自社の商品やサービスなどの売り上げを直接的にアップさせるために用いるものとなっています。
一方で、「PPM分析」も競合他社に打ち勝つ、そして自社の商品等の売り上げを上げることに寄与するものの、直接的に作用するというよりは、経営そのものの効率化を図るために用いられる手法です。
その他の数多ある分析方法とは少々性質が異なるからこそ、それらと同時に活用することで多角的に経営戦略を構築していくことができるでしょう。そのPPM分析はどういったものなのか、それをここで説明していきたいと思います。
PPM分析の持つ役割や目的とは
すでに触れたように、「PPM分析」は経営を効率化するための分析手法です。企業を経営・運営していくためには資源が必要となります。その資源には当然のことながら限りがあるため、どの事業にどれほどの資源を割り当てるかが重要であり、それによって業績や経営そのものにも大きな影響を与えることになるのです。
つまり、PPM分析とはその経営資源をベストな割り当てとなるよう用いるものであり、これを駆使すれば無駄を省き効率のいい経営や運営につながることになります。
PPM分析自体は、アメリカのコンサルティング会社である「ボストン・コンサルティング・グループ」が提唱したもの。実際にこの手法を用い、必要のない事業を縮小、あるいはゼロとしつつ、強みを持つ分野にその減らした資源を割り当てることで業績を回復した企業も数多く存在しています。
一部で欠点や課題があるとされることのあるPPM分析ではありますが、実際に効果を上げている企業もあることから、経営戦略の見直し時には取り入れてみる価値があるでしょう。
企業は大きくなればなるほど無駄も出てくるもの。それを省く目的で利用するのであれば、PPM分析はとても有意義なものとなるはずです。
PPM分析を構成する4つの項目
PPM分析は、図表を作成しながら行っていきます。縦軸と横軸を用意し、縦軸には市場の成長力や魅力度などを設定し、横軸には自社の強みや市場における占有率など設定。そこに4つの項目を配置し、さらにはそれぞれの項目のどの位置に自社の商品やサービスが位置するのかを客観的に観測・分析しながら配置していきます。
PPM分析を構成する4つの項目は、「金のなる木」、「花形製品」、「問題児」、「負け犬」となっています。これらをそれぞれの象限に配置しながら、その象限のどこに自社商品やサービスが当てはまるのかを考えていくわけです。
「金のなる木」は、成長率は低いけれども占有率が高いという特徴を持った商品やサービスのこと。今後の市場拡大が困難であるため、投資割合は控えめにする必要が出てきます。ただ、すでに多くの利益も生み出している分野ですから、経営戦略から外すことはもちろんできません。
「花形製品」は、成長率も占有率も高く、当然、企業が最も投資すべき分野となります。今後の流れも注視しながら、できれば占有率に関しては好調を維持し、投資額が減ったとしても利益が望める「金のなる木を」目指さなければいけません。
「問題児」は、成長率は高いものの、占有率に関してはまだまだの状態の商品やサービス。花形製品に化ける可能性もあれば、負け犬となってしまうリスクも持っており、資源の分配率は高めにするべきですが、そのやり方には慎重さも求められます。
「負け犬」は、その名の通り、成長率も占有率も低く、期待が薄い分野。当然撤退対象となり、多くの投資を行うわけにはいきません。
これら4つの象限のどれに当てはまるのかを考えながら分析を行えば、効率のいい資源分配率やそのための手法が見えてくるはず。これがPPM分析と呼ばれるものです。
PPM分析の流れとポイント
PPM分析を行うためには、まず情報を集めなければいけません。市場のこともわかっていなければいけませんし、その市場で自社の商品等がどのような位置に属しているのか、このデータも収集し、そして分析する必要があります。まずはここからスタートさせてみましょう。現状のデータと同時に、できるだけ将来予測データも集めるようにしてください。
縦軸と横軸を設定し、それぞれの象限を設置します。このとき、横軸をどのように考えていくのかが、このPPM分析の大きなポイントとなります。横軸は自社の強みや市場における優先率ですが、本来は市場では弱い立場であるにもかかわらず強みがあると勘違いし横軸を設定してしまうと、このPPM分析自体が崩壊しかねません。そうならないよう、例えば「クープマンの目標値」などを参考にしながら自社の強みの高低を設定していくといいでしょう。
自社の商品やサービス、事業に関して、その図表の中に書き込んでいきますが、どこにポジションニングを取るのか、これも重要です。売り上げや利益の大きなものは大きな円で、小さなものは小さな円で図表に書き込んでいくと一目でその規模がわかるのでとても便利。
こうして図表を作り上げたら、さらには予測や将来的な展望も、同じように円を用い図表上に書き込んでいきます。
これがPPM分析の流れですが、全ては客観的で収集した情報やデータに基づいていなければいけません。憶測ではなく、そこには根拠がなければいけないのです。そこに間違いがなければ、この分析によってどの分野に投資をしていくべきか、逆に資源の分配率を下げるべき分野はどこかを把握することができ、経営の効率化へと結びつけていくことができるでしょう。