広範囲に営業活動を行うには、非常に大きなコストと非常に多くの人員を投入する必要が出てきます。それができる巨大な企業であればいいのですが、全ての企業がそんなことができるわけではありません。
そこで、営業活動を重点的に行う、あるいは戦略的に行うために一定の範囲を設定し、その中で顧客にアプローチしていく「テリトリー制度」が採用されることがあります。活動するエリアを限定し、その中で集中的に営業をかけていくためコストを削減することができ、そのテリトリー内に適した営業戦略を行なっていくことが可能となるため、非常に効率のいい手法として、多くの企業で取り入れられています。
そんなテリトリー制度の中でも、「シングルテリトリー制」と呼ばれる方法がありますが、それをここでは紹介していきましょう。どのような制度なのか、どのような利点があり、欠点はあるのか、こうしたことも整理していくので、もしそれぞれの企業や営業部、あるいは顧客の特性などにマッチしているようであれば、積極的に取り入れることを検討してみてください。
1人で1つのテリトリーを担当します
「シングルテリトリー制」とは、平たく言ってしまうと、設定したテリトリー1つに対して1人の営業担当者が配置されるという制度であり手法のこと。そのテリトリーを任された営業マンは、その範囲内で活動を行い、顧客の開拓や商品・サービスの売り上げ向上を目指すことになります。取り扱っている商品やサービスが特定の層にしか需要がないため顧客の数そのものが少なかったり、比較的小規模の企業相手に営業活動を行う際に、この手法が用いられることが多くなっています。
シングルテリトリー制を採用する場合には、あまり大きなテリトリーを設定することができないため、取り扱う商品やサービスにも左右されるものの、非常に小さなエリアを多くの数に分割することになるでしょう。
仕組み自体はとてもシンプルでわかりやすいのが、何よりの特徴です。そして、営業担当者と顧客が常にマンツーマンの関係になる点も、このシングルテリトリー制の特徴と言えるでしょう。
シングルテリトリー制だからこその利点とは
1人の営業担当者が1つのエリアを担当するシングルテリトリー制ですが、この手法を用いるメリットは、営業担当者がテリトリーについての情報を把握しやすくなる点にあります。
営業担当者が複数いる場合、それぞれの持つ情報量や認識が異なることもあり、それが効率や売り上げに悪影響を及ぼすことも少なくありません。そうした弊害を、このシングルテリトリー制によって取り除くことが可能なのです。
常に顧客とマンツーマンの関係で接するので、信頼関係が築きやすくなるという点も、この手法のメリットとして挙げられるでしょう。信頼関係を築くことができれば、その後の売り上げにも大きな影響を与えるはず。それは当然、良い影響として現れてくることになります。
さらに、営業担当者は、そのテリトリーを担当するのが自分1人であるため、責任の所在が明確となり、その能力を引き出すことも期待できます。
成績が悪くても、それを他人のせいにできないわけですから、モチベーションが上がることは十分に期待できるでしょう。情報や活動状況が管理しやすいというメリットもあります。無駄を省くことにも繋がり、効率アップに寄与するはずです。
少なくとも同テリトリー内で他の営業マンとの競争はなくなるため、足の引っ張り合いやギスギスとした人間関係を避けることにも繋がるかもしれません。また、上でも触れたように営業活動の範囲が非常に限定的となり狭くなるため、効率を高めるのにもこのシングルテリトリー制が役に立つでしょう。
このように、この手法にはいくつものメリットがあります。全てが必ず得られるものとは断言できないものの、試してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。
1人に任されるからこそ生じるデメリットも
ここからは、シングルテリトリー制のデメリットについて言及していきましょう。さすがにメリットばかりとはいきません。デメリットも認識した上で、実際に取り入れるかどうかを検討するようにしてください。
同じテリトリーを同じ営業担当者が回る、これによって起こりうる弊害に、マンネリがあります。営業活動の中身にも変化が出てこないため、既存の顧客に新たな魅力が提供できない、あるいは、潜在的な顧客の開拓や獲得も進まない恐れは否定できません。営業担当者の能力に完全に依存することになる、これもデメリットとして挙げられるかもしれません。優秀な営業担当者であればいいのですが、そうではない場合、そのテリトリーでは目標達成ができない可能性が出てきてしまうのです。
担当者が1人である弊害はそれだけではありません。例えば複数の既存の顧客から同時に問い合わせを受けた時、それに対応するのが難しいというマイナスポイントも出てくるでしょう。複数の、あるいは大量の注文に応じにくいという事態も想定しておく必要があります。担当者が不在であったり連絡がつきにくいということがあれば、それも利益や業績へと悪い影響を与えることになりかねません。
さらに、営業担当者の好みで営業活動の濃淡が出てしまえば、それも目標達成へのあしかせとなる可能性大。営業マンも人間ですから、好き嫌いがあるのは仕方がありません。複数の担当者がいれば、誰かがそれをカバーすることができるかもしれませんが、1人しかいなければ、その人に全てを依存するため、好みによって特定の顧客への営業活動が疎かになってしまうことも考えられるでしょう。また、一つのテリトリーで獲得した営業手法やノウハウを、他のテリトリーへと伝わり広がっていくことが難しいという点も押さえておきたいところ。
シングルテリトリー制も、その中身と特性を見てみれば、このようなデメリットやマイナスポイントが浮かび上がってきます。非常に有効性が高く営業活動の効率にも寄与する制度であり手法ではあるのですが、それぞれの企業が抱える営業マンの能力、また、取り扱っている商品やサービス、さらには顧客の性質なども見極めた上で導入するか否かを検討する必要があることだけは頭に入れておきましょう。