自社の商品やサービスがどれだけ顧客にメリットをもたらすか、それを説明するのは至難の技。決して簡単な作業ではありません。しかし、営業担当者はその難しい作業を自然にこなすからこそ価値があるのです。自社商品がどれだけ顧客にとって有益なものであるのかを自然に訴えるためには、その顧客内部の事情をつかんでおく必要があります。
顧客内部の事情といっても、さまざまなものがあるでしょう。経営状況もあるかもしれませんし、競合他社との関係性もあるかもしれません。企業とはいろいろな悩みや課題を抱えているものです。それを解決するのがまさに自社の商品である、ということを、顧客の内部事情を把握することで効率的に主張しアピールする必要があるわけです。その顧客内部の事情を構成するであろう一つの要素に注目してみましょう。営業活動を助けてくれる要素となることは間違いありません。
顧客企業が取引を行う際の条件を知る
今回注目するのは、顧客が自社など外部の企業と取引を行う時の条件や手続きに関することです。これは顧客が独自に定めた条件やルールであり、外部にはなかなか漏れ出てこないこともあります。しかし、その情報をつかむことができれば、それを利用して営業活動を仕掛けていくことも可能となるでしょう。
顧客は、どのような条件の元に取引先を決定し、実際に取引契約を結んでいるのでしょうか。それを把握することで、その条件に見合った取引相手であることを演出することができるはず。他にもさまざまな条件や、取引を決定するまでのプロセスや環境などが存在しているはずで、具体的な要素等について後述しますが、まずはこうした情報が営業活動の成果に大きな影響を与えることだけは頭に入れておく必要があるでしょう。
全ては、営業活動を効率化するためです。顧客のことを知らずに、自社のことを知ってもらうことなどできません。それは既存の顧客に対しても同じ。今以上の付き合いをしてもらうためには、顧客のニーズをキャッチした上で、それに見合った商品提案をしていく必要が出てきます。ニーズだけではなく、ここで紹介する取引を行う際の条件や環境、その他内部事情を把握することが求められ、それを常に意識しながら、どうアプローチしてくかを検討していくことが、営業部にも営業担当者にも求められるのです。
把握しておくべき顧客の内部条件とは
では、具体的にどの部分に着目し、どのような情報を集めておくべきかに触れていきましょう。どういった方針で取引を決定しているのか、この把握は欠かせません。企業は通常、効率化を重視し取引相手や取引手法を決定しています。企業が欲しいと思った時に手に入れることができ、また、できるだけコストのかからない取引を目指すのは当然のこと。しかし、必ずしも顧客企業がそうした形での取引方針をとっているとは限りません。効率やコストよりも質を重視しているところもあるでしょう。顧客企業がどちらのタイプなのか、はたまたどちらにも当てはまらないのかなどのチェックが必須です。
顧客の購買意欲そのものはどうなのか、この辺りも把握しておく必要があります。顧客の属する業界環境によっても、この購買意欲は左右されるでしょう。成長している業界であれば購買意欲も上がるでしょうし、停滞・低迷していれば、購買意欲はなかなか上がりません。
闇雲に自社商品やサービスを売り込んでも相手は迷惑するだけ。顧客企業の置かれている立場や環境は必ず確認しておく必要があります。
上で少し触れていますが、顧客が他社から何かを購入したり仕入れる際、どのようなプロセスを経てそれが決定されるのか、これもできれば情報を集めておきたいところ。窓口を担当する人が、必ずしも決定権を有しているとは限りませんし、取引に影響を与える人物も他にいるかもしれません。キーパーソンは誰なのか、自社の商品等を実際に使用する人物の影響力はどれほどなのか、こうしたことを把握すれば、より営業的なアプローチもしやすくなるはずです。
もし決定権が、自社の営業担当者と直接コミュニケーションをとる立場にある人であれば、その人の性格や好み、思考といったこともリサーチし、それを営業活動へと活かすという考え方も当然考えられます。そのリサーチ範囲は、顧客の担当者の趣味やキャリアなどまで及び、人間的に信頼関係を築くことで自社の商品にも興味を持ってもらうという戦略も一つでしょう。
最低でもここで挙げた要素についての情報は集めておきたいところです。それらの情報を分析していけば、どのようなアプローチが最も有効であるのかが導き出せるはず。営業活動は、相手の主張や事情などを上手に利用しながら行うこと、これを基本としなければなりません。これさえ忘れずに戦略を考えていけば、必ず顧客と良好な関係を構築し、また、それを継続させることができるでしょう。