文章は、書いただけでは完成とはいえません。
書いたあとに何度か読み返し、誤字脱字を修正したり重複箇所を削ったり、という「推敲」の作業をする必要があります。
今回は、この「推敲」についてご説明します。
推敲という言葉は、唐の時代に賈島(かとう)という人物がロバに乗りながら詩を作っていた際「僧は推す月下の門」の「推す」を「敲(たた)く」にすべきか考えるのに夢中で役人の行列に突っ込んでしまった、という故事に由来しています。
この故事から、文章をより良くするために何度も練り直すことを推敲と呼ぶようになりました。
『スタンド・バイ・ミー』の著者である小説家スティーヴン・キングは、書き上げた文章を削りに削って整えていくそうで、著書『書くことについて』(小学館文庫)の中で
思慮深い削減の効果はてきめんで、驚くほどと言っていい。
と述べています。
村上春樹氏も、著書『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)の中で、しばらく寝かせておいた原稿を徹底的に書き直すのだと書いています。
もしかしたら、すぐれた文章を書く人は、推敲というプロセスをとても大切にしているのかもしれません。
表記ゆれがないか確認しましょう。
例えば、
などです。
表記ゆれを放置してしまうと、「雑」「読みにくい」などのネガティブな印象を読者に与えてしまいます。
手間がかかる作業ではありますが、原稿のクオリティを高めるためしっかり整えていきましょう。
あらかじめ表記ルールを作成しておくと、チェックするときに便利です。
漢字ばかりの文章は読みにくいので、「色々」は「いろいろ」に、「予め」は「あらかじめ」とする、などと決めておくのもいいでしょう。
できれば音読してみて、大まかな部分を直していきましょう。
などの項目です。
大声を出す必要はありません。
小声でブツブツ……で大丈夫です。
細かなところを直すというよりは、ざっくりと呼んでつじつまが合うか、読みにくくないか、他にも気になるところはないかなどを探っていってください。
できればリライト後にもう一度ざっと確認し、きちんと修正反映できているか見直してみましょう。
大まかな確認と細かな部分の確認、を交互に繰り返すことをおすすめします。
などの項目です。
できればこれらの細かな項目は「チェックリスト」にし、これを参照しながら推敲するのがいいでしょう。
自分ではなく他人(部下や家族など)にチェックしてもらう場合、このチェックリストの存在は便利です。
書いた直後は「これで完璧!」と思っていても、ある程度時間をおいて読み返すと誤変換や重複などのミスが出てくるものです。
外山滋比古氏の『知的文章術~誰も教えてくれない心をつかむ書き方』(だいわ文庫)に、まさに「推敲」と名付けられた項目があります。
よほど注意して書いたつもりでも、どこか不注意で間違えていたり、字が抜けていたりするものである。
ある程度時間をおく、というのもコツ。
書いた直後は、自分の文章を客観的にチェックするのは難しいもの。
書いた内容を若干忘れてしまった、くらいの状態で見直すことをおすすめします。
余裕があれば一晩ほど寝かせておいてから目を通すのがいいでしょう。
書いたあとはきちんと推敲する。これを心がけてください。