営業マネジャーが担うべき重要な仕事の一つである、部下の営業担当者の育成。育成に成功すれば営業部全体の効率や売り上げを上げることに繋がり、逆に育成に失敗すれば育たなかった部下に足を引っ張られ、コストだけがかかり利益を十分に生み出すことができません。自社の商品やサービスがよければ、それだけで売り上げが上がるなどというのは幻想で、売り上げや利益が上がるかどうかは営業担当者の能力次第でもあるのです。
ここで紹介するのは、そんな営業担当者の育成に活用される2つの方法、「OJT」と「Off-JT」です。どちらも若く経験のない従業員を育成する方法としては代表的なもの。すでに取り入れている企業もあるかもしれません。まだの場合には、すぐさま育成プログラムに組み込み、部下の育成に活用してみてください。
通常の業務や現場で育成を試みる「OJT」
営業担当者を、より早く一人前に育てたいのであれば「OJT」を取り入れることは必須。
OJTとは、「On the Job Training」の略称であり、つまり、仕事を通じてトレーニングを図り育成していくという意味の言葉であり方法です。営業組織における仕事とは、もちろん営業活動のこと。実際に顧客との面談を行うことも当然それに含まれますし、例えば、アプローチする人や企業の選定、戦略の策定、プレゼンテーションの準備、ツールの作成や用意、こうしたことも含め、実際に営業活動を行うために必要な作業や行動を通じて育成を図る考え方をOJTと呼んでいます。
先輩営業担当者や営業マネジャーなどと一緒に顧客まわりを行うことは、育成という観点から見ても非常に効果的なものとなるでしょう。現場でしか感じられないことも多々ありますし、現場だからこそ身につけられるものもたくさんあるはず。OJTは、そうしたあらゆる知識やスキルを効果的に獲得できる育成方法とも言えるのかもしれません。
OJTは、営業担当者の育成方法の中でも中心的な存在。これを無視して若い従業員を育てることはできないと言ってもいいでしょう。注意点としては、小手先の方法にしないこと。一緒に顧客と面談したり商談・交渉をしたりすることは、確かに経験の少ない営業担当者にとっては価値のあるものとなりますが、それだけではOJTの本来の役割を果たすことができません。簡単なアドバイスや注意にとどめるのではなく、しっかりとコミュニケーションをとりながら、どこに問題や課題があって、それはどうすれば解決できるのかといったことを根拠も含めつつ部下の意識へと植えつけていく作業が必要となるのです。
しっかりとした育成プログラムを作り、その内容や過程、意義といったものを営業マネジャーなど教育・育成する立場の人間が理解した上で取り入れていくようにしてください。
特別な研修などで育成を図る「Off-JT」
上で説明したOJTとは異なる育成方法に「Off-JT」と呼ばれるものがありますが、これはOJTとは対をなしているものといってもいいでしょう。
OJTは、営業活動やその準備などを通じて若い営業担当者を育成する方法でした。Off-JTは、通常の営業活動とは別の研修プログラムなどによって育成を図ることを意味しています。「Off the Job Training」の略称なのですが、つまり、仕事（この場合には営業活動）以外でトレーニングを積ませるという考え方であり方法のことです。
ある程度の規模の企業になると、社内でそのような研修プログラムを用意しているところもあるかもしれません。社外の研修機関が主催しているプログラムなどに参加することで営業ノウハウを身につけさせようとする企業もあるでしょう。いずれにしても、そうした研修に若い営業担当者を派遣するなどして育成を図るのがOff-JTと呼ばれるもの。
営業マネジャーからすると、このOff-JTはとても楽。自ら指導する必要がほとんどなく、ある程度型にはめられた研修を受けてもらうことで、一定の基礎を身につけることができるからです。ただ、これらの点にこそ問題が生じてくるので少々気をつけたいところ。
営業マネジャーが自ら指導しないということは、マネジャーが考えているような営業担当者を育成できない可能性があるということ。「この場面ではこうするべきだ」とマネジャーが思っていたとしても、それを伝えることを怠れば、若い営業担当者はいつまで経ってもそれを理解することができません。また、ある程度型にはめられた研修を受けてしまうことで、臨機応変さを失ったり、予想外の問題に直面した時に対応しづらくなったりするリスクも生じます。
Off-JTを取り入れるのは問題ありませんが、それは育成方法の中でも補助的な役割にとどまると捉え、OJTを中心としたリアルな営業活動を早めに学ばせた方がいいでしょう。若い営業担当者の育成を、Off-JTに頼りすぎるべきではありません。
