書評家・ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。コロナウイルスが深刻化し、ここ東京でもロックダウンが噂されています。しかし、こんな状況でもテクノロジーは進化しています。ウイルスが蔓延する中で、ますますAIやロボティックスにシフトするはずです。学ぶ時間がある今こそAIの知識を学び、自分の武器をつくるべきです。
では、私たちビジネスパーソンは、どう動けば良いのでしょうか?野口竜司氏の「文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要」にそのヒントが書かれていたので、今日は本書を紹介します。
文系こそAIを勉強しろ!
『「AIはExcelくらい誰もが使うツール」となります。文系・理系を問わず、Excelは本当に多くの人が使っている表計算ソフトです。少し大げさかもしれませんが、そのExcelと同じように、Alも多くの人が扱うことができる一般的なツールになりつつあります。ほんの少し前までのAIの世界は、理数系や技術系の「理系AI人材」が引っ張っていました。しかし、AI技術が一般化し誰もがAIを気軽に扱えるようになった今、「AIをどう作るか?」よりも、「AIをどう使いこなすのか?」のほうが大きな課題になりつつあります。そこで重要になるのが、ビジネスの現場も知っている文系AI人材なのです』
著者の野口竜司氏は今後AIが普及する中で、ビジネスパーソンにとって当たり前のツールになると指摘します。AIはやがてビジネスパーソンがオフィスで使うExcelのようになり、ビジネスを理解している文系人材こそAIを使いこなすべきだと言うのです。多くの保険営業パーソンは文系出身者だと思いますが、その文系こそAIを勉強すべきだと著者はいいます。
AIの議論になると人間がAIに勝つ、負けるというスタンスの話になりがちですが、今こそAIと協業することを考えるべきです。AIによって自分の仕事がなくなるのなら、AIを味方にして、新しい職種にチェンジすればよいだけです。これまでの歴史を振り返ってみても、新しい技術が生まれて、それが社会に定着したとき、いくつかの職種がなくなってきましたが、その一方で新しい技術を使ったこれまでになかった新しい仕事が生まれてきています。
当然、取引先の社長にAIの知識を伝えることができれば、相手の信頼を得られ、ビジネスにも良い影響を及ぼします。AIが今後企業に必須のツールになることは間違いありません。
アクセンチュアによると、日本の労働者は「AIが私の仕事にポジティブな影響をもたらす」と回答した割合が22%にとどまり、世界平均の62%より40ポイント低かったそうです。「日本人は世界の他の国の人と比べて、よりAIへの不安を抱いている」といえますが、それはAIについての知識が少ないからです。
AIを恐れるな!
「AI失職」についての、漠然とした恐怖や不安から脱するために、まずはAIへの理解を深めましょう。AIをよく知れば恐怖がなくなるどころか、AIを使いこなす側になることができます。AIを知ることこそ、「AI失職」から解放され、AIを使いこなす「AI職」の道への第一歩なのです。
著者は よいAIをつくるためには企画力が欠かせないといいます。
『これまでいろいろなAIプロジェクトにおいて、とにかく「AIを作ることが目的」になってしまったケースも多かったように思います。本来は、社内でAIを活用してできるだけ大きなビジネス価値を生むことが主目的であるべきです。その際、ビジネス価値を最大にするためには、自ら作ったAIであれ、構築済みAIであれ、それらの「AIをうまく使う」ことがキーポイントになるのです。精度が優れたAIが作れたとしても、ビジネス上のどのシーンでどのように使うかがしっかり設計されていないと、うまく活用が進まず成果もあげにくくなります。最悪のケースは、優れたAIはできたけれど、業務プロセスの中に組み込むことができず、お蔵入りしてしまうことです』
AI作りがカジュアルになり、構築済みAIサービスも増加している今、「AIをうまく使う」人材、つまり、ビジネスや業務知識にくわしく、かつAIにも精通した人材がより重宝されるようになるはずです。AIを作る専門能力がなくとも、ビジネスや業務知識をもった文系人材が、AIの基礎をしっかり学ぶことで「文系AI人材」となり、「AIをうまく使う」人材となることで、ビジネスの可能性を広げられます。せっかくAIを作るのなら、ビジネスに活用できるようにしなければ意味がありません。理系と文系の力を組み合わせることで、自社のAIの価値が高まるのです。
AIを味方にする4つのステップ
AIが世の中に浸透し、人間の業務がAIに置き換わったり、AIによって拡張されていき、人間とAIが一緒に共同して働くシーンが多くなることは間違いありません。人間とAIが共に働くことが前提になった環境において、「AIと働くチカラ」は、非常に重要な能力になります。時代は英数国理社の5教科にプラスし、AIの知識を文系ビジネスパーソンにも求めています。
では、「AIと働くチカラ」を身につけるにはどうすればよいのでしょうか?答えは簡単で、本書に書かれているAIと協業するための4つのステップを踏むだけです。
- AIの基本を丸暗記する
- AIの作り方をザックリ理解する
- AI企画力を磨く
- AI事例をとことん知る
AIについての知識を大量にインプットし、たくさんの企画を生み出すことで、自分の未来の可能性を広げられます。文系には文系のAIのビジネス活用法があるのです。 企画を小さくしないために、AIを導入する際に、「誰のために」×「なぜ?なんのために」AIを使うのか?を徹底的に自問しましょう。それと同時に、本書に書かれているフレームワークや豊富な事例を使えば、多様なアイデアを生み出せるようになるはずです。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
著者:野口竜司
出版社:東洋経済新報社