新型コロナ感染症の拡大によって私たちの生活は大きな変化を余儀なくされました。これまで固定的と思われてきたものが崩れ、新しい常識「ニューノーマル」が次々と生まれていく。そのような変革の時代。これまでの成功体験が役に立たず、クリエイティブな思考が必要な時代。そこで生き残るには思考の柔軟性が欠かせません。しかし、私たちの思考は何もしないとどんどん固定的になってしまいます。その理由とは
私たちの脳は省エネモードで動いている。
よく「人は脳の本来の力の3%しか使っていない」などという記述を目にします。
私たちの脳にはまだまだ潜在的な能力があって、日常の中ではほとんど使われていないというのです。
ではなぜ脳は本気を出さないのか?
それはエネルギーを節約するためです。
あたまを使うとお腹がすきますよね。脳は体の中で最もエネルギーを消費する器官です。
脳が持っている能力をすべて使おうとしたら、その消費量は膨大になってしまいます。
だから脳は常に省エネモードで稼働しようとしています。
例えば、私たちの脳は1度見たものは2度目以降よく見ません。
過去に見た情報を使って見たつもりになってしまうのです。
このようなブログ記事の原稿を書き終わって、人に見てもらうと、自分では気づかない誤字や脱字が必ずあります。
自分では何度見直しても気づかない。
その理由はまさに脳が一度見たものを見ようとしないから。
脳は過去の情報を上手に使うことで、見ているふりをする。つまり処理をさぼっているのです。
これはエネルギーの効率という視点では確かに優れているかもしれません。
しかし、問題もあります。
世の男性は恋人や奥様が髪型を変えたのに気づかずに怒られた経験があるでしょう。
過去の情報は時に役に立たないのです。
なのに脳は、過去の情報を使って処理を行ってしまう。
その結果、新しい状況に対応できないことが出てきてしまうのです。
あなたの行動を決めるビリーフシステム
脳の省エネ運転は見ているものだけでなく、私たちの思考にも及びます。
もしあなたがピーマンを嫌いだったしたら、ブッフェでピーマンが入った料理を見ても、
「この料理を食べようか、食べまいか。決定する要因は何だろう」
そんなことを考える前に、すっと通り過ぎてしまうでしょう。
あなたが物事を判断する時、いちいち事の詳細を確認して精緻に検討することはほとんどありません。
脳は過去の経験や思考の結果をもとに、瞬時に、自動的に判断していきます。
このような物事を自動的に判断し行動を決定する機能をビリーフシステム(信念体系)と呼びます。
ビリーフ(信念)は生まれてからこれまでの間にあなたが得てきた情報が蓄積されてできています。
例えば子供の頃、人前のスピーチで失敗し、みんなに笑われたというような経験があったとしたら、あなたのビリーフには「私は人前で話すのが苦手だ」という情報が書き込まれています。
だから誰かに、次のイベントでスピーチを頼まれたとしても、あなたは断るでしょう。
それが実際には大きなチャンスにつながるとしても、ほとんどの場合、そこまで深く検討せずに自動的に判断してしまうのです。
このビリーフは情報が積み重なればなるほど強固になります。
頑固一徹という言葉がある通り、一つの事にこだわり、それを続けるほどに強力なビリーフができあがります。
強固なビリーフは可能性を狭める
もちろん、技術やスキルについて一つの事を極めることは非常に重要です。
しかし、思考のレベルにおいては必ずしも一つの事にこだわることが良いとは言えません。
先ほどのピーマンの話にあるように、あなたの今のビリーフシステムで重要だと思われないものは視界にすら入らないのです。
あなたがこれまでやってきた方法や考え方に固執すればするほど、新しい可能性は見えなくなってしまいます。
今回のコロナショックのように社会に大きな変化が生まれている時に、新しいものを取り入れ、つくりだす力がなければ、環境に淘汰されてしまう可能性が高いことは歴史が証明しています。
ではあなたが思考の柔軟性を取り戻すためにはどうしたら良いのでしょう。
その一つの方法が、あなたのリアリティを壊すことです。
休みは絶対に家で寝ていると決めていたけど、何か習い事をはじめてみるなど、
これまでに自分が絶対にやらないと思っていたことにあえて挑戦する。
自分とはまったく考え方の違う人たちと交流する。
そんな、あなたが積み上げてきたビリーフが崩れるような体験をするのです。
今までガチガチに固まっていた固定観念が決してすべてではなく、別の可能性があるということに体感的に気づいた時、あなたの脳は新しいビリーフをつくるために活性化します。
そして、今よりも柔軟で多様性を持ったビリーフシステムがつくりだされ、あなたの可能性の扉が大きく開くことになるのです。