保険営業マンのあなたは「M&A(エムアンドエー)について、どのくらい知っていますか? 最近、中小企業の間でM&Aが活発に行われています。
M&Aの知識は、中小企業の経営者をお客様としている保険営業マンなら、必ず知っておきたいものですよね。
「M&Aって、どういうものなのか?」「なぜ今、M&Aなのか?」……わかりやすくご紹介します。
そもそもM&Aとは?
M&A(エムアンドエー)は、英語の「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の略です。複数の企業をひとつの企業にまとめることをMergers(合併)や統合と呼び、企業が他の企業の株式や事業を買い取ることをAcquisitions(買収)と呼びます。
なかでも「スモールM&A」は、小規模事業のM&Aを指します(「小規模事業」の定義は、「年間売上高1億円未満の企業」「譲渡金額が3億円未満の企業」などさまざまです)。
そう、この「スモールM&A」に関することこそ、中小企業を対象としている保険営業マンが知っておかなければならないもの、ということですね。
そもそもM&Aの定義には、「狭義」と「広義」があります。
「狭義」のM&A
一般的に、「企業や事業の経営権を移転させること」をM&Aといっています。「合併」「株式譲渡」「事業譲渡」などの手法を用います。
「広義」のM&A
経営権を移転せず、「資本提携」や「業務提携」などの方法で協力関係を結ぶこともM&Aに含まれています。
最近では、最初から企業や事業の経営権の移転はせずに、資本提携や業務提携からスタートし、お互いをよく知ってから経営権の移転を行うケースもみられます。ある種の「お見合い期間」のようなものですね。
企業は、社長さんや役員・社員の方々、またそのご家族の支えがあって共に長い時間と労力をかけて築き上げてきた財産です。M&A前の短い時間で、買い手企業が売り手企業のすべてを理解することは難しいですから、お見合い期間を設けてお互いをよく知ることは極めて大切なことだと思います。売り手と買い手の社長さん、またその社員の方々が幸福になるM&Aが新時代のM&Aであり、法人を相手にする保険営業マンが心得ておきたい理念といえるでしょう。
スモールM&Aの「目的」は?
当然のことながら、M&Aには「売り手」と「買い手」が存在します。
•後継者不在のため、事業承継対策が目的
•創業経営者として、譲渡金を得ることが目的
•出口戦略としてM&Aを考えている
•既存事業、あるいは新規事業への選択と集中
•企業再生
など、さまざまな目的が考えられます。
なかでも企業の社長さんにとって深刻で切実なのは、「後継者不在や後継者不足による倒産・廃業を回避するためのM&A」でしょう。
また売却の理由として案外多いのは「事業に飽きた」という社長さんの本音です。
こんな話は他の役員や社員さん、取引している銀行・金融機関、顧問税理士さんにもなかなかできませんよね。でも、保険営業マンであるあなたとは、そういう話題になることもあるのでは?
一方、
•既存事業の規模拡大
•既存事業との相乗効果の期待
•新規事業の獲得
•起業時の選択肢としてのM&A(事業が軌道に乗るまでの時間を買うイメージ)
•人材や技術の確保
などが考えられます。
ゼロから新規事業をスタートするよりも、すでに軌道に乗っている事業をM&Aすることでショートカットを目指す起業家も増えています。経営資源である「ヒト・モノ・カネ」に加えて、情報やノウハウ、時間を買うイメージです。また、許認可が必要な事業の場合、赤字でも買い手がつくこともあります。
M&Aが最近急増している「理由」は?
一昔前までは、M&Aといえば「企業の乗っ取り」やドラマの「ハゲタカ」など、どちらかというとネガティブなイメージが強かったと言えるでしょう。また中小企業では「それって大企業の話でしょ? ウチは関係ないから」なんて思われるフシもありました。
しかし最近は、M&Aや会社の売買の話をすることへの抵抗感が薄くなってきた社長さん、自分事として真剣にM&Aを検討する社長さんも多いようです。
この背景には、いくつかの理由が考えられます。
理由その1
「この先、会社をどうしよう」~経営者の高齢化と後継者不在~
2017年の時点で、社長の平均年齢は60歳を超えました。東京商工リサーチの調査では、経営者の平均年齢は61.19歳です(2017年2月の調査)。若年層の起業が増えない限り、今後も社長の高齢化はますます進んでいくでしょう。
社長の高齢化が進んだことで、これからの約10年間で、全国の70%の中小企業が事業承継(代替わり)の時期を迎えるといわれています。そのうち、後継者が明確な中小企業はわずか30%ほどという統計データもあります。親族内承継が当たり前だったのは一時代前の話で、「子どもがいない」「子どもはいるが継いでくれない」「子どもに継がせたくない」という社長さんが増えており、選択肢のひとつとしてM&Aが考えられるようになりました。
理由その2
「M&Aは怖くない」~M&Aのイメージ向上~
前述のとおりM&Aという言葉には、「乗っ取り」や「身売り」などのネガティブなイメージが定着していました。ITバブルの頃、ヒルズ族と呼ばれたIT社長たちが企業買収(M&A)を盛んに行なったこともそのイメージに拍車をかけたのかもしれません。しかし最近では、買い手にとっては「M&A=経営手段、成長戦略」、売り手にとっては「M&A=事業承継対策、出口戦略」というポジティブなイメージへと変化しつつあります。大手資本の傘下に入ることで、事業拡大を実現できる可能性が高まるかもしれませんし、従業員の雇用維持や福利厚生の充実・待遇改善などの可能性も高まるかもしれません。創業経営者にとっては、自社株式の現金化や代表連帯保証の解除などのメリットも考えられます。会社を売却できることが、ある種のステータスとも考えられるようになってきています。
理由その3
「M&Aで経営を多角化」~新規事業、第二創業・起業としてのM&A~
新規事業への参入や第二創業による「経営の多角化」には、膨大な時間と労力、コストがかかります。事業意欲旺盛な社長さんなら、そのプロセスすべても楽しめるかもしれませんが、新事業が必ず成功するという保証はありません。また、これから事業を始める起業家にとってもそれは同様です。
自力でゼロから事業を立ち上げるのではなく、M&Aによってすでに軌道に乗っている会社や事業を買うという選択肢もあります。そのように、経営戦略や成長戦略としてM&Aを考える社長さんが増えてきたことも、M&Aが急増している理由のひとつです。また、M&Aのための融資に積極的な金融機関がいることもM&A案件の急増を下支えしているでしょう。軌道に乗るかどうかわからない事業に融資するよりも、すでに基盤のできている事業に融資する方が金融機関にとってもリスクが少ないといえます。
理由その4
「IPOよりM&A」からベンチャー企業にの出口戦略としてのM&A
ベンチャー起業家にとって、一番の出口戦略はIPOでした。しかし、リーマンショックの影響でIPOの件数は落ち込み、最近は回復傾向にはあるものの、IPOできる企業は狭き門であることから途中で断念するベンチャー企業も少なくありません。そんななか、IPO以外の出口戦略として大手企業へのM&A(バイアウト)を考えるベンチャー起業家が増えてきました。アメリカでは、ベンチャー企業の出口戦略としてM&Aが用いられることが圧倒的に多く、その影響を受けた日本のベンチャー企業の間でも今後ますます盛んになるでしょう。一般的な企業価値算定結果を上回る譲渡金額がつくこともあります。
いかがでしたでしょうか?
M&Aはもはや大企業だけが考えるものではありません。
事業承継に悩む社長さん、経営の多角化を考えている社長さんが真剣に取り組むべきものなのです。
でも……そんな社長さんも、M&Aについてちゃんと相談できる相手がいないというのが現状です。
そこで! 保険営業マンのあなたの出番です。M&Aの知識をしっかり身につけて、社長さんにとっての「頼れる味方」になりましょう!