さて、今回も引き続き「社長が大好き」なテーマ、出張旅費規程のお話です。
前回も言いましたが、これは、私が5年以上にわたって実際にやってみての体験がベースになっています。
身体を張った実体験エピソード(笑)。
それではいってみましょう!
目次
法律上の「出張の定義」は、実は存在しない!?
出張旅費をめぐるルールは、調べれば調べるほど、面白いです。
最大のポイントは、「出張」の定義が「法律では定められていないこと」です。
出張の定義といえば、一般的には、150km以上の移動を伴うものが出張、などと言われたりします。
確かに、私のサラリーマン時代の職場でもそういったルールでした。
しかし、実はそんな定義は、税法のどの条文を探しても、どこにも書かれていないのです。
つまり、「出張」というのは、一定のルールを満たしていれば、会社で独自に定義できるのです。
一定のルールというのは、過去の判例で出張と認められた、この3つのルールのことです。
第1 在勤地から離れること
第2 業務上の目的を持つこと
第3 旅行の費用がかかること
ということは、想像していたより、ずっと広い範囲が対象になりそうですよね。
これが、この規程の使い勝手の良さの一つなのです。
そして、出張旅費の面白さの真髄は、「出張手当」の存在です。
間違いだらけの「出張手当」の使い方
「出張手当」、いわゆる日当は、出張の際「通常であれば支出しなくてよかった費用を補てん」するための「実費弁償に相当する費用」として認められます。
旅先の実費をいちいち精算するとかなり煩雑になりますよね。
その煩雑さを避けて精算事務を簡略化する目的でなら、あらかじめ金額をルールで決めておくことで、費用として認めます、ということです。
これが、「日当」が法人税も所得税も非課税で、かつ社会保険料の対象にならないという法律上の根拠です。
これはすごく重要なことです。
よく誤解されるのですが、日当は出張先での「残業代を充当するもの」ではありません。
ここをしっかり理解しておかないと後で大変なことになる可能性があります。
こう答えたら税務調査で即アウト!
例えば、税務調査が入って、日当の根拠が争点になったとしますよね。
そこで、この根拠が頭に入っていない社長が、「出張先での残業代として設定している」なんて口走ろうものなら、非課税の根拠は崩壊します。
「あ、それではこれは所得ですね」と判定され、過去の日当も全て所得税や社会保険料の対象になってしまい、目も当てられない、なんてことになりかねません。
これが、しっかり背景を理解せずに形だけ導入する場合の危険さです。
このことが、顧問税理士の先生が、出張旅費規程のことを顧問先に教えたがらない理由の一つなのでしょうね。
しかし、こういう落とし穴があるとはいえ、これほど使えるルールを活用しないなんていかにももったいない。
使わない手はありません。
税務当局がルールを変えないワケ
さて、ここまで読んできてあなたは、
「ここまでわかっていて、何で税務当局は、出張旅費の税務処理ルールを変えないんだろうか」と思ったことでしょう。
本当にそうですよね。
私自身もそう思いました。
それには二つの理由があるのではないかと思います。
まず一つ目。
そもそも税務上のチェックポイントとしては、
他にもっと沢山の突っ込みどころがあります。
ここから先は私の想像ですが、
中小企業に対する税務調査の場合、そう何日もかけるわけにはいきません。全体としてほんの小さな存在に過ぎない出張旅費規程に、それほど注目はしていないということがあるでしょう。
実際、私も過去数回、税務調査を受けましたが、出張旅費より手前のポイント(例えば入金が正しく記帳されているか等)のチェックが主でした。
そして、想像ついでにもうひとつ。
実は、彼ら公務員自身も、出張旅費規程で得をしている当事者だから、という理由もあると思います。
彼らとて人間。普通のサラリーマンです。
このルールを変えたりしたら、自分たちのメリットが消滅してしまいます。
だからこのルールには触らない、のではないかと思います。
まあ、ウラをとったわけでない(そもそもとりようがありませんけどね)、私の想像ですから話半分くらいに聞いておいて下さい(笑)
さて、
次回は、顧問税理士さんが社長に出張旅費規程のことを教えたがらない理由とその解決策、です。
注1)出張旅費規程を会社に導入する場合は、必ず税理士などプロのアドバイスを聞いた上でなさってくださいね。
注2)法律的な考え方が苦手な人は、このサイトを参考にして下さい。
↓
*以上の文章は、
旅費規程活用マニュアル
https://yurui-business.com/pgtj
を参考にしています。