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自分が過去に「たまたま経験した些細な出来事」が実に何十年もの間、無意識に自分の行動に影響を与え続けているということがあるものです。
そんな例を一つご紹介したいと思います。
他でもない私の例なのですけども。
正体のわからないモヤモヤに悩まされる
もう何年も前の話です。
プロフィールで触れているように、私は保険営業マンになってから2年間は、成績が上がらず苦しんでいました。フルコミッション制ですから、当然収入も減っていきました。
幸い、あることがきっかけでそこから脱出できた後は、トップセールスの一人として安定した高収入も得られるようになりました。そして、幸福になる・・・・はずでした。
ところがそうはならなかったのです。
毎年行われる社長杯という社内表彰の常連にもなりました。社内外の勉強会に講師として呼ばれることも増えてきていました。そんな華やかな場は、当然嬉しいはずですよね。
でも不思議なことに、なぜか素直に喜べないのです。
表彰式の時なんてことさら笑顔を見せないようにして、
「凄いですね!」なんて言われると、
「いえいえ、とんでもないです。」と手を振って必ず打ち消してしまったものでした。
本心では嬉しい心を無理に抑え込む、決まってそんな感じの反応をしてしまうのです。
なんで素直に喜べないのだろう。
傲慢になってはいけないのはわかるけれども、うまくいっている時期は何年も続いているのだから、少しは成功を楽しんでもいいはずなのに。
例えていうと、こんな感じです。
自分の中のもう一人の自分がこうささやきかけるのです。
と、冷水をぶっかけるようなことを言うのです。
こういうのをセルフトークと言います。
日々こんな具合にささやかれたら、まあ、幸せな気分で仕事をするには程遠いですよね(笑)
というわけで、うまく表現できないモヤモヤを抱えつつ、その正体がわからないまま日々忙しく仕事をしていました。
ところが、或る日突然、もう突然としか言いようがないタイミングでこの謎が解けたのです。
モヤモヤが晴れたらやる気が湧いてきた!
出張のため自分でクルマを運転して羽田空港に向かっているときでした。
クルマを運転している時はとりとめもない思考が転がっていくものです。
自分の中の、引き留めにかかるもう一人の自分、ブレーキを掛け、冷水を浴びせかける自分。
その実体は何だろうと、意識するともなく考えていたのです。
その時、あ!そうか!と唐突に悟りました。
「悟る」としか言いようがないほど明確に分かったのです。
その記憶が余りにも鮮やかなので、どこを走っているときに思い出したか今でもはっきり覚えているほどです。
「幼稚園の卒園式だ!」
これには少し説明が必要ですね。
当時私がいた九州の幼稚園、その卒園時に記念として、園児一人一人のアルバムを幼稚園で作っていました。で、それを卒園式に親に贈るわけです。
園児の成長の記録が写真とともにつづられているようなヤツです。
で、その最初のページ。そこに園児の手形をペタンと押されていました。
これが問題のやつです。
園児は、青いインクを手のひらにべったりつけて、最初のページにペタリと押すのです。
この作業を卒園式の前にやります。
私の頭の中の映像は、園児が並んで自分の順番を待っている情景です。
その時私は、なんだかとても緊張してしまいました。
自分の順番が回ってくるのがとても怖かった。
しかし、自分の番が回ってきました。
手のひらに青いインクをつけ、ページにペタンと押す・・・。
ところが、そこで私は失敗してしまったのです。
説明するまでもなく(笑)、手形を押す時は手のひらをパーにしなければいけませんよね。
ところが、超緊張してしまった私は、片方だけ、グーでやってしまったのです。
「あっ」と介添えしていた先生。
とっても不格好な手形が出来てしまいました。
うーん。
まだまだ人々が貧乏な昭和の時代、アルバムはそれなりに高価でした。
ですからやり直しができなかったのでしょうね。
先生は狼狽し、そのせいでしょう、いつもよりきつく私を叱りました。
いつも優しい先生が、目を吊り上げて怒っている!
私にはとても怖く映りました。
私の前の順番の子や、あとの子は、とても上手にやっていただけに、自分がとてもみじめに思えました。
・・・・この体験だ!
この体験が「(何をやっても)失敗する、ダメな自分」という思い込みを自分の中に作り上げてしまったのです。
この思い込みをコーチングでは「ブリーフ(信念)」と呼びます。
ブリーフは人によっては数万個もあるそうです。
自分を守るために、成功に有頂天にならないように自分にブレーキを掛ける役の「人格」を自分の中に作ってしまった。
それが、事あるごとに顔を出すのです。
これこそがモヤモヤの正体だったのです。
例えば、こうです。
何か新しいことに挑戦するという場面では、
「やめておきなさい。あなたには無理だから。失敗すると傷つくから。」と、
「No」のレバーを押させようとするのです。
過保護なお母さんのように。
そして、成功したあとも、
「今回のは、たまたまだから。いつまでもうまくいくとは限らないから。」
と、ささやき続けるのです
このことを当時受けていたコーチングのコーチに話すと、彼はうんうんと頷きながら、こう言いました。
「でもね、その人格を責めちゃだめですよ。
その人格は、あなたを守るために自分の役割を果たしているんだから。感謝して下さいね。」
この言葉は、なんだか目頭がジーンと熱くなるほど、嬉しかった。
40年前の体験が、自分の中で生き続け、自分に影響を与え続けるなんて!
笑い飛ばしたいような、それでいてちょっと怖いような話です。
冷静に考えてみると、本当に取るに足らないほど些細な事。
私の母親も含めて、幼稚園の先生だってこんな事覚えていないでしょう。
にもかかわらず、私の心の中で生き続け、自分の行動に影響を及ぼし続けてきた。
考えてみればすごい事です。
もしこれに気づかなければ、このモヤモヤにいつまでも悩まされ続けたはず。
その後、私は会社を起こし、大きくしてきました。
このモヤモヤの件が解決していなかったら、多分、そうは行動していなかったでしょうね。
そんな人格。
たぶん、いるんですよ。
気付いていないだけで。
そしてそれが知らないうちに自分の行動に影響を及ぼし続けている。
でも、だからと言って恐れることはないのです。
これって、気づきさえすればいいのです。
気づきさえすれば、もう支配されることはないのです。
理解できないネガティブな感情が湧き上がってきたら、それを避けずに、そして何がそれを起こしているのか、しっかりと向かい合ってみて下さい。
私のように、それが自分を変える大きな転機になるかもしれません。