「お金に働いてもらう」ことの必要性とは?
俣野成敏・中村将人 著 『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』
借金大国・日本の未来
「未来に備える」……保険の大きな役割ですよね。
今回ご紹介する『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』(日本経済新聞出版社)も、未来に備えるための指南書といえるものです。
で、どうやって未来に備えるかといえば、それは「投資」。この本のテーマは「投資の必要性」ということでしょう。
ですから、ジャンルとしては〝投資の本〟ではあるけれど、テクニカルの研究や勝つためのテクニックといった投資のスキルについてはあまり触れていません。あくまでも基本的な「お金のリテラシー」「投資をするにあたってのマインド」的なことを、現代日本の実情に合わせてわかりやすく語っているものです。
なぜ私たちが「お金に働いてもらう」必要があるのかといえば、それはこの本によれば、要するに今後は「日本という国」にはとても頼っていけないから、ということになります。
最たる原因は、日本が抱える莫大な借金、つまり「国債」にあるといいます。この本が発行された2015年6月の時点で、国債、その他借入金による日本の借金は1057兆2235億円という発表が財務省からあり、現在もこの借金は増え続けています。
で、国がそのためにどうするかといえば……国民から少しでも多く税金を取ろうというわけです。
日本ではサラリーマンに対して「源泉徴収」として勤めている会社からまとめて税金を取っています。いわゆる「給与天引き」ですね。著者はこれを「とても良くできた〝取り立てシステム〟」だと評します。そして今後は、導入されたマイナンバー制度によって、すべての人や会社のお金の流れが丸裸になり、さらに〝取り立てシステム〟は強化されるだろうといいます。
暗い未来に追い打ちをかけるのが、「少子高齢化」です。国民の平均寿命は延びるけど、若い人の人口は少ない。年金はアテにできない、退職金だってどうなるものか……とう現実も待っているのです。
まともに働いていても、それだけでは明るい未来はやってこない。だからこそ、「お金に働いてもらう」という発想が今から必要だというわけです。
ハイブリッド・クワドラントを目指せ?
「お金に働いてもらう」=投資とは、「もうひとつ給料袋を持つという発想」だと著者はいいます。ひとつ目の給料袋の中身は、自分自身が働いて稼ぐ、そしてもうひとつの給料袋の中身は、お金が働いて稼ぐ、というわけですね。
こうした働き方をするには、まずは今の自分がどのような働き方をしているかを自覚するべきだ、といいます。そのために著者が引き合いに出しているのが、ベストセラー書『金持ち父さん 貧乏父さん』でおなじみのロバート・キヨサキ氏がいう「クワドラント」(四分割表)という考え方。E=Employee(従業員)、S=self- Employee(自営業)、B=Business owner(ビジネスオーナー)、I=Investor(投資家)というように世の中には4つの働き方がある、というものです。このうちEとSは自分の時間を切り売りして働かなければならず、BとIは他者に働いてもらうことでお金を得ます(Iの場合の他者とは「お金」のことですね)。
著者は、ひとつのクワドラントに居続ける必要はなく、クワドラントとクワドラントを組み合わせた「ハイブリッド・クワドラントもアリだ」といいます(たとえば「サラリーマン大家さん」といわれる人などは、E+Iですよね)。そしていずれにせよ、自分の時間を切り売りしているだけではなく、BやIの側へ行く勇気を説いています。
そして後半では、お金に働いてもらうための心得、つまり投資マインドについて詳しく語っています。
「(投資の)相談は〝家族〟だけにしてはいけない」
「活字の情報には限界がある」
「お金が増えて〝友人が減る〟という覚悟を」
「目の前のスケジュールを変えられる人こそ、自分の人生を変えられる人だ」
などなど。元々サラリーマンとしてさまざまな苦難に直面した末に事業家、お金の専門家になった著者2人ですが、自身の経験に基づいた数々の〝教訓〟は、小難しい話は一切なく、スラスラ読めるでしょう。