「後継者不足や後継者不在の打開策として」「中小企業の成長戦略として」「起業の新しい形として」など、さまざまな視点から注目されているスモールM&A。そのスモールM&Aに取り組むことになった、ある保険営業マンのお話を半フィクション・半ノンフィクションでご紹介します。
後悔しかない…なにもできず倒産してしまったお客様
ある保険営業マン=カワカミ セイジ(仮名)
カワカミさんは、乗合代理店で働いており、保険業界歴は20年ほど。MDRTです。個人40:法人60ほどの割合で、中小企業のお客様が中心。「お客様の課題解決の御用聞きに徹する」をモットーにしています。
ある製造会社の社長:「カワカミさん、いつもありがとうね。悪いんだけど、うちの会社を廃業することにしたんだ。いろいろと相談に乗ってくれてうれしかったよ。ご存知のとおりうちには跡継ぎもいないし、俺も歳を取ったし。そろそろ潮時かと思ってさ」
カワカミさん:「そうですか。御社の製品が好きなので、とても残念です。お力になれなくて申し訳ないです」
ある製造会社の社長:「カワカミさんが気にすることじゃないよ。時代の流れだよね。いつかこの日が来ると思っていたし、仕方ない仕方ない。なんかすまないね…」
カワカミさんは、製造会社の社長から後継ぎ不在について以前から相談を受けていました。とはいっても、一人息子は東京に引っ越してすでに2人のお子さんがいる状況。実家に戻ってくるように説得しようにも、カワカミさん自身は息子さんと会ったことすらない。親子仲は良いものの、会社の後継ぎの話となると、なかなか話し出すきっかけがなくズルズルと時間が過ぎていました。
後継者となるような人材が社内にいるわけでもなく、後継者の問題は奥様にも息子さんにも社員にもしにくい。ましてや、銀行にもできない。情けないと思われたくないから、経営者の友人にもできない。
周りになかなか相談相手がいないので、社長さんはカワカミさんを頼ったわけです。
「お客様の課題解決の御用聞きに徹する」をモットーにしているカワカミさんにとって、お客様の力になれなかったことは後悔しかありません。
それも、倒産・廃業という社長の苦渋の決断。
これほど重い決断をした社長さんの心情を思うと、カワカミさんの胸も苦しくなりました。
スモールM&Aとの出会い
そんな後悔の念が色濃く残っている頃、カワカミさんはある広告を目にします。
「中小企業オーナーの救世主になるために!
日本の“宝”である中小企業を次世代へとつなぎ、
日本再生を実現する三方よし型ビジネスセミナーを開催中!」
と書かれたSNS広告をフェイスブックのタイムラインで見たカワカミさん。
「二度とあんな思いはしたくない。自分が学ぶことで、一社でも多くの中小企業を救えるなら」
と、迷いなく申込みをしました。
セミナーの説明会は、約3時間。
日本の中小企業の実情や後継者問題、人材不足の問題、資金繰りやリスケの問題、市場縮小…など、ネガティブなことばかりで正直気が滅入るような時間でした。
ですが、「悪いことや問題に蓋をして目を背けていたら、いつまでも解決できない。問題を先送りしても、良いことなんてないじゃないか」とカワカミさんは思い直します。
なにもできず、倒産・廃業という道を選ばざるを得なかった製造会社。
「すまないね…」
と寂し気に言う社長の声と表情が、カワカミさんは忘れられません。
セミナーの後半。
- 後継者不足や後継者不在の打開策として
- 中小企業の成長戦略として
- 起業の新しい形として
など、さまざまな視点から、中小企業に特化した“スモールM&A”が盛んに行なわれるようになり、注目を集めているという話がありました。
これまで、大企業同士だけの話と考えられてきたM&Aですが、そのニーズは中小企業の間でも高まっているというのです。
「M&Aって、会社の乗っ取りとか悪いイメージが強かったけど、そういう見方もできるのか。思いこみは良くないな」
「スモールM&Aって、自分にもなにか力になれるのかな? 会社の売買って、不動産の売買以上に難しそうに見えるし、でゅーでりじぇんす? とかわけのわからない言葉も出てきたし、とにかく難しそうにしか見えない…」
「けど、自分がスモールM&Aの知識を身につければ、今のお客様たちの力になれるかもしれない。二度と同じ思いをしなくて済むかもしれない」
セミナー中も、カワカミさんの頭は常に社長たちのことでフル回転していました。あの社長、この社長…自分が力になれるかもしれない社長たちの顔が次々と思い浮かびます。
まずは「スモールM&Aアドバイザーになる」という宣言から
「正直、自信なんてなかった」
と話すカワカミさんですが、スモールM&Aアドバイザーになるという決意をし、ビジネスセミナーに正式に申込を済ませました。
決して安くはない受講料でしたが、カワカミさんのモットーは「お客様の課題解決の御用聞きに徹する」こと。
社長の課題解決に貢献できるなら、自己投資も惜しみなくできる。
社長との信頼関係が深まれば、自己投資したお金はすぐに取り戻せる。
カワカミさんは、そう確信したそうです。
ビジネスセミナーの講座開始は、約3週間後。
それまでの間、日々の仕事をしつつも、カワカミさんはM&Aの勉強を始めます。
しかし、本を読んで勉強しても難解なことばかりが書かれており、ますます難しくなるばかり…。
講座開始が待ち遠しく、質問したい内容をまとめていたカワカミさんですが、自分を奮い立たせるためにある行動に出ます。
それは、「スモールM&Aアドバイザーになる」という宣言をすること。
メールの署名欄やフェイスブックなどのSNSのプロフィール欄、そして名刺に“スモールM&Aアドバイザー”の一行を加えました。
すると、カワカミさんにある変化が。
次回以降も、シロウトM&A奮闘記として、保険営業マン・カワカミさんのスモールM&Aへの取り組みをご紹介します。