【シロウトM&A奮闘記 Vol.3】新型コロナの影響下で決断~喫茶店のスモールM&A~

「後継者不足や後継者不在の打開策として」「中小企業の成長戦略として」「起業の新しい形として」など、さまざまな視点から注目されているスモールM&A。そのスモールM&Aに取り組むことになった、ある保険営業パーソンのお話を半フィクション・半ノンフィクションでご紹介します。前回【シロウトM&A奮闘記 Vol.2】保険営業マンがスモールM&Aアドバイザーになると宣言して起こったことの続きです。

まずは信頼関係を得ることに専念

前々回メールの署名欄やフェイスブックなどのSNSのプロフィール欄、そして名刺にも“スモールM&Aアドバイザー”の一行を加えた保険営業のカワカミさん。

カワカミさんは、その後、事業承継に悩む3人の社長と出会いました。

その中のお一人が、喫茶店を営む森岡社長

現在65歳で、34歳の息子さんと31歳の娘さんがいらっしゃいます。

しかし、喫茶店をお子さんに引き継ぐことにはなっていません

お子さんたちにはそれぞれ仕事も家庭もあり、不仲ではないものの、お正月やお盆に会う程度になっています。

カワカミさんは、「何事も、まずは信頼関係が大切」と考え、保険の商談や打ち合わせなどで、森岡社長の喫茶店を利用することにしました。

喫茶店の席数は50席ほど。

かなり広々としたつくりで、雰囲気も落ち着いています。

レトロさがありますが、森岡社長のセンスの良さか古い印象は受けません。

「実は昔、美大に通っていてね。空間デザインを専攻していたんだよ。だから、内装は自分で考えたんだ」

「今は喫茶店を3店舗やっているんだけど、3店舗目は学生時代の同級生を呼んでペンキを塗ったりしたんだよ」

森岡社長は、親しくなってくるとそんな話をしてくれました。

「自分で考えて、自分でつくったお店だから。やっぱり愛着があってね。カワカミさんみたいに、商談とか打ち合わせで使ってくださるお客さんも多いし、どの店舗も常連さんが
多いから、おかげさまで売上は安定しているよ」

「本当は、息子が継いでくれたら嬉しいんだけどなぁ」

新型コロナウイルスの影響で経営悪化

お客として喫茶店を利用し、森岡社長とのコミュニケーションが深まる中で本音をお聞きできるようになったカワカミさん。

カワカミさん自身も、すっかり喫茶店が気に入り、愛着を持つようになりました。

「素敵なお店を閉めてしまうのはもったいない。できることなら、変わらずあの場所に残っていてほしい」

そう思ったカワカミさんは、「次にお会いしたら、事業承継やM&Aの話を切り出してみよう」と決めます。

しかし、ここに来て新型コロナウイルスの蔓延が日本全体、世界全体に影響を及ぼし始めます。

外出自粛が続く中、カワカミさんは森岡社長の喫茶店にも足を運べずにいました。

商談もできない日々

こんな日々がいつまで続くのか。

だれも予想がつかず、先の計画を描けない状況です。

そんな中、森岡社長からカワカミさんに電話が入ります。

「あぁ、カワカミさん。最近どうしてる? まったく困ったもんだよな。
 まさかこんなことになるとはね。うちは、ほとんど開店休業状態だよ」

「そうですよね。私も商談ができないですし、お店にも行けずすみません。
 終息したら、また伺いたいです。おいしいコーヒーを飲ませてくださいよ」

「いや、そうなんだけどさ。ちょっと相談したいんだけど、いま長話する時間あるかな? 」

「はい、大丈夫ですよ。今日のアポも、全部キャンセルになっちゃったので」

「そうか。カワカミさんも大変だね。まぁどこもみんな大変だよね。
 それでさ、相談っていうのは、うちも店をもう閉めようかと思ってね」

「…え?」

スモールM&Aアドバイザーとして買い手探しに奮闘

「お店をもう閉めようかと思ってね」

という言葉を聞いて、絶句してしまったカワカミさん。

どんな言葉を返せば良いのか、なかなか言葉になりません。

「コロナでこんな状況だし、後継者もいないからね。
 65も過ぎたし、そろそろ潮時かなって思ってね。
 ある意味、コロナが良いきっかけかもしれないよ。
 これくらいのことがないと、長く続けてきた店を辞めようなんてなかなか思えない。
 連絡先を知っている常連さんには、一人ひとりに伝えたいと思ってね」

「素敵なお店で、私も気に入っているので、なにか力になりたいです」

カワカミさんは、思わずそう口にしていました。

森岡社長と同じように、後継者不在に悩む経営者が多いこと。
身内以外にも、誰かに事業を引き継げる可能性があること。
M&Aアドバイザーとして、森岡社長のために動きたいこと。

電話口で、カワカミさんはその熱意を森岡社長に伝えました。

「身内以外に事業を売却するか。正直、自分の店や会社に値段が付くなんて考えたこともなかったよ。本当に引き継いでくれる会社なんているのかな? けど、可能性が少しでもあるならその可能性にかけてみたい」

カワカミさんは、買い手探しに奮闘することになります。

次回以降も、シロウトM&A奮闘記として、保険営業マン・カワカミさんのスモールM&Aへの取り組みをご紹介します。

次の記事:【シロウトM&A奮闘記 Vol.4】コロナ倒産を回避するために~喫茶店のスモールM&A~

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中島宏明

この記事を書いた人

2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。 2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の会社の顧問・経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。 マイナビニュースでは、仮想通貨に関する記事を連載中。 https://news.mynavi.jp/series/cryptocurrency -アーリーステージ、保険営業歴3年未満の方向けに、 売れ続けお客様から愛される 「無敵の保険営業」になるためのノウハウを発信- メールマガジン【週刊!無敵の保険営業】はこちらから