世の中に「天才はいない」ことを教えてくれる1冊
ここでは、「天才!成功する人々の法則」という本をご紹介します。マルコム・グラッドウェルが書いた本です。どんな本かということを一言で言うと、「世の中に天才はいないよ」ということが書いてある本です。僕は当然天才ではありませんから、この本を読んだときにすごく救われたというのを改めて思いました。
例えば生まれ持った環境とか才能とか、ご本人が行った努力か、極めたいと思うことに対しての情熱、こういったものが結果を左右するということは言わずもがななんですけども。本当に極々一部の天才を除いては、それはあることをすることによって、その差は埋められるし、必ず誰しも天才になれるチャンスはあると書いてあります。
これは実際のいくつかの職業をサンプリングすることによって、普通のところからプロフェッショナル、更には天才と言われるレベルまで、どういう人たちがそこまでいけて、どういう人たちがいけていないのか、実際の数字に落として紹介してくれています。いくつか具体的な職業をご紹介すると。ここでは作曲家、小説家、チェスの名人なんかも出てきます。スポーツ選手だと、バスケットボールのプロの選手とか、アイスホッケー、アイススケートといったような競技のことも出てきます。
1つ特徴的なのは、大犯罪者と言われる、犯罪に手を染めた人までも、この「あること」をやるかやらないかによって、その技術、習得のレベルが変わってくるということが書いてあるんです。面白いですよね。
これに関して言うと、ここでは「マタイ効果」、それから「1万時間の法則」、この2つのことがメインに書かれています。これらの具体的な事例を含めて解説をしながら、皆さんの営業に役立つ情報をお伝えしたいと思います。
神から与えられた好機?努力の結果によって得られた好機?
ところでこの本は2部制になっています。第1部のテーマは「好機=opportunity」という言葉でくくられています。この本に出会ったことが好機なのか、それともこの本を読み進めることで好機を得られるのか。どういったものがあなたに待っているのかということを踏まえながらお話をしていこうと思います。
まずは、この「好機」という言葉の意味について考えてみます。「好機」と漢字で書くと分かりやすいですけども、英語では「Chance」と言いがちですよね。でもここには「Chance」ではなく「Opportunity」と書かれているわけです。実はこの言葉がすごく重要、ポイントなので解説をしていこうと思います。
Chanceというのは、一般的には神様、天から与えられた好機です。それを得るか得られないかはあなた次第、アンテナ次第、そこに手を出せるかどうかという話だと思います。一方でこのOpportunityというのは、努力の結果によって得られた好機、得られた機会というような言い方をするんですよね。この本の中には、天才というタイトルではあるんですが、世の中には天才はいないと書いてあります。何をもってChanceなのか、何をもってOpportunityなのか、この後具体的に解説をしていきます。
「アウトライアー」並外れた成功を収めた人々
解説の前に、まず本書の根底、ベースについて触れたいと思います。
「木よりも森を見よ」という一節があります。よく聞く言葉ではあるんですが、改めて本書なりのマインドセットを、一文を載せて紹介します。
「本書では、アウトライアーと呼ばれる並外れて成功した人々について考察し、様々なアウトライアーたちを紹介していく。天才大物実業家、ロックスター、ソフトウェアのプログラマー、成功した弁護士の秘密に迫り、優秀なパイロットと、飛行機を墜落させたパイロットとの違いを探り、アジア人が数学に強い秘密を解き明かす。そして、技術を持つ、才能に恵まれた、何かに打ち込んだなどの非凡な人々の人生に注目し、これまで私たちが成功を理解してきた方法に大きな間違いがあることを示していく」
これが、この本に書かれている「天才はいない」というものの根拠になるわけです。続いてこんな文章があります。
「毎年、億万長者や起業家が、ロックスター、セレブたちが、自叙伝を出すが、話の筋はいつも同じだ」。
つまりこの本では、既に高く育った木、要は成功した人について書かれた本ではありませんよということが書いてあります。森について書かれた本ですということです。その森というのは、たった1人をピックアップして結論を出すのではなく、全体を見たところで数字で分析をして、その結果を伝えていくというのが、この本のスタイルということになります。
最初に事例に出てくるのはアイスホッケーです。これはカナダのプロリーグのアイスホッケーが事例として出てきます。この事例が実に複雑ではあるんですが、興味深い内容が書かれています。
選ばれたのは個人の実力?
この本の中には、大きく2つ、「マタイ効果」と「1万時間の法則」について書かれていることは前述の通りですが、まず「マタイ効果」について見ていきます。
「誰でも持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまで取り上げられる」(マタイによる福音書)
と書かれています。これがどういうことか、カナダのプロリーグのアイスホッケーの事例に基づいてお伝えします。
アイスホッケーに限らず、スポーツのプロリーグのシステムを見てもらえば分かると思います。サッカーでもプロ野球でも、メジャーリーグでも、小さい頃から始めていって、ユースチームとかクラブチームとか、若い頃から頑張っていって最終的にプロになるというような形です。それはカナダのアイスホッケーチームでも一緒なんですけども。その評価、プロになれる選手、選ばれた選手は、個人の実力が全てなのかということが疑問視をされております。
「アイスホッケーでの成功は個人の実力に基づく。個人と実力、そのどちらの単語も重要だ。選手は他の誰でもなく、彼ら個人のプレーによって、また他の何かによってではなく彼ら自身の実力によって判断される。だが、選ばれたのは本当に個人と実力なのだろうか」と問いかけます。
この本の中では、天才はいないと書いてありますが、生まれ育った環境、そのシステムによって差が生じるということが書かれています。このシステムの狭間で成功できる選手とそうでない選手。それが努力で埋まるものと埋まらないものがあるということです。(続く)