コロナ対策の毎日でストレスがたまる本当の理由

長期の外出自粛が続く中、様々な行動を取る人々とそれに対する批判の応酬が日常的に行われてきています。このような状況は私たちの心に無意識のうちにストレスを与えています。
その原因は私たちの緊急時における心理的反応にありました。それを知ることが、そこから抜け出す大きなヒントになります。

緊急時における人間の心理的反応

アメリカの疾病管理予防センター(CDC)は
アメリカ国内・国外を問わず、人々の健康と、安全の保護のために研究を行っている政府機関です。

このCDCが提供している「Crisis & Emergency Risk Communication (CERC)」プログラムの中に「Psychology of a Crisis」というガイドラインがあります。

これは危機的状況下における人間の心理的動きを前提として
コミュニケーションのマネジメントをすることで、

災害等の発生時に二次的被害を防止したり、
社会のリソースの無駄な消費を避け、
深刻な危機を乗り越えるための
緊急対応の指針です。

危機的状況下では、
平常時とは私たちの心の働きが異なります。

それを理解することなく、
いつもと同じ感覚でコミュニケーションを取ろうとした結果、
思わぬトラブルやリスクを生み出してしまう可能性があります。

例えば、
芸能人がテレビで
今回のコロナ感染症を題材にして
ジョークを言ったとして、

普段なら笑いになるところが
猛烈な批判を浴びて炎上することがありますね。

平常時には問題がないと思われることが、
危機的状況下では通用しない。

その前提の上で、
物事をとらえ、思考しなければならないのです。

「Psychology of a Crisis」の中では、
危機的状況に追い込まれた時の私たちの心理的反応として以下の5つをあげています。

  • 代理リハーサル
  • 否認
  • 非難
  • 恐怖と逃避
  • 引きこもり、絶望感、無力感

前回は代理リハーサルと否認についてお話しました、

今回はそれ以外の3つについて見ていきましょう。

批判や非難が生み出されるメカニズム

「非難」とは
実際に脅威が発生した時、実際にその脅威に近い人よりも、
離れた人の方が非合理な行動をとるという現象です。

高度情報化社会においては
文字情報や映像によって
離れた場所にいる人も、

実際の危機に直面しているかのような
仮想的な体験をすることになります。

しかし、実際に危機に直面している人に比べて、
代理体験者は危機に対して時間的余裕を持っているため、

緊急時の対応について批判を始めたり、
推奨される行動を取らなかったりします。

これらの行動は
事態の回復と対応に負担をかける結果を生み出します。

次に「否認」とは
受け入れ難い状況を認めないことで
自分自身を守ろうとする心理的防御反応です。

「自分は大丈夫」
「自分にはそんなことは起こらない」

と考えることで
恐怖から逃れようとします。

その結果、
推奨された行動や警告を無視したり、

自分自身の身を守る行動が遅れたり、
取れない可能性があります。

実際に東日本大震災の時、
避難勧告が出ているにも関わらず、
非難せずに被災した人は多数に上ります。

このような反応は私たちが危機的状況に陥ったとき、
自らを守るために自動的に行われます。

だからそれ自体を批判しても意味がありません。

それよりも、
「人間とはこのような行動を取るものだ」

ということを前提として、
対応策を検討し、適切な行動計画を策定したり、
情報発信を行う必要があるというのが、

「Psychology of a Crisis」の考え方です。

冷静な思考が二次被害を防ぐ

もしあなたが、
新型コロナウイルスに感染している、
もしくは、家族が感染しているような状況であったり、

治療にあたる医療従事者であるなら、
当事者として目の前の問題に対応する必要があります。

しかし、
もし、そうではないとするならば、

あなたは直接の当事者ではなく、
代理的な参加者であるのです。

代理的な参加者が取るべき行動は、
直接的な当事者とは異なります。

それを理解し、
自らの行動を冷静に見直すことが必要です。

まず事実として、
ウイルスの感染は
ウイルスとの接触を避ければ100%防ぐことができます。

今、しきりに
「自宅にいる」ことが推奨されていますが、

本質的には
「自宅にいることが重要」なのではなく、

「ウイルスと接触する機会を絶つ」

ことが重要です。

だから
自宅にいない人をいたずらに非難しても
意味はありません。

ひとりひとりが
ウイルスに接触しないために
必要なことを徹底する。

それに尽きるのです。

その基本に立ち返って、
今取るべき行動は何なのか、
冷静に検討してみてください。

感情的な情報に流されるのではなく、
落ち着いて本質について思考し行動する。

それがあなたやあなたの周りの人を守ることにつながり、

社会全体の資源の過剰利用も防ぐことになります。

私たち一人一人がそのような行動を取ることで、
事態の早期収束と早期回復を可能にするのです。

建設的に前向きに問題と向き合うことで、
私たちはどんな危機も乗り越えることができます。

それが人の持つ本来の強さなのです。

奈良有樹

この記事を書いた人

パフォーマンス・エンハンスメント・コーチング認定コーチ 2happiness代表 町田コーチングスクール主宰 プロコーチチーム「レ・アーリ」代表 コーポレートコーチングチーム「FUTICE COACHING」 代表 社会福祉法人の経理、経営管理として部門別採算制度の導入を主導し、数値の見える化、部門ごとの目標設定サポートなどを通して、1年で赤字2,000万円の事業所を6,000万円の黒字に変える。また、社会福祉法人における会計士監査制度導入への対応など、財務、経営管理の分野で豊富な実務経験を持つ。 他方、コーチとしても就労困難な方の一般就労や社会不安障害の方の社会復帰を実現するなど、過去ではなく未来にフォーカスするコーチングで多くの方の夢の実現をサポートしている。コーポレートコーチングの社内での実践経験も豊富で企業研修や、コーチングセミナー、コーチ向けの勉強会など様々な場所で講師としても活躍している。