危機的状況下で非難や炎上が多発する理由

緊急事態宣言が続く中、休業要請に従わずに営業を続けていたパチンコ店が非難を浴び、営業休止に追い込まれています。それ以外にも様々な企業や有名人が批判や非難を浴びています。ウイルスという共通の敵に対して一つになるべき時に、なぜそれができないのか?その理由は私たちの心の構造にありました。

 

なぜこんな時に炎上騒動が起きるのか?

 

新型コロナウイルスに関して、企業の対応や有名人の発言などに非難が集中しているケースが多々見受けられます。

私たちの身近なところでも家族での買い物や公園での散歩、田舎への帰省など、平常時には問題にならないようなことが大きな批判を浴びることにつながっています。

 

もちろん、感染拡大防止という社会全体のコンセンサスがあるとはいえ、行き過ぎた非難や誹謗中傷が行われる例も増えています。

その行為自体の本来の評価以上に、非難や批判が生まれやすくなっているのです。

その原因は私たちが危機的状況に陥った時に自然とおこる“心理的反応”にあります。

これを理解しなければ、ウイルスの脅威に対して一丸となって立ち向かうべき時であるにもかかわらず、それを妨げるようなトラブルが生み出される可能性があるのです。

前回もお伝えしたアメリカの疾病管理予防センター(CDC)による危機的状況時の人間心理に基づいた対応指針、

「Psychology of a Crisis」。

今回はこの中で取り上げられている危機的状況における心理的反応の中から

「非難」と「恐怖と逃避」

についてご紹介します。

 

「非難」を生み出す「恐怖と逃避」

危機的状況に陥った私たちは、周りの人やモノ、企業に対して、偏見を持ち、「非難」を行う傾向があります。

これは危機的状況に自己防御本能としておこる心理的反応なのです。

例えば電車の中で咳をしただけで、喧嘩になるということは、通常時には考えられませんが、このような状況ではそれが起こりえます。

「Psychology of a Crisis」

では、その原因を私たちが感じる「恐怖」にあるとしています。

私たちはよくわからないもの、未知のものに対して恐怖を感じます。そして、恐怖から逃れたいという想いが、偏見や避難を生み出してしまうのです。

咳によって自分がウイルスに感染するかもしれない。そして、感染することで死んでしまうかもしれない。その恐怖が強い非難の気持ちをつくりだします。

それがもし、既知のウイルスであれば、そこまでの過剰な反応は起こりません。理性がそれを防ぐからです。

しかし、恐怖が強くなると、そこから逃れようとする力は強大になり、理性よりもそこから逃れようとするエネルギーが強くなります。

これを「恐怖と逃避」と呼びます。

医療従事者の家族に対するいじめのニュースが報道されましたが、これも「恐怖と逃避」によって生み出された偏見です。

自分たちが感染することへの恐怖とそこから逃げ出したいという本能が、理性を退け、通常では考えられない言動や行動を生み出しているのです。

 

未知から既知にすることで恐怖はやわらぐ

危機的状況に際しては、このようなメカニズムを理解して、コミュニケーションを取ることが重要です。

心理的反応として、本能的に行われてしまう以上「医療従事者やその家族に対するいじめはやめなさい」と言ったところで、それを止めることはできないのです。

根本にある「恐怖」を解決することが何より重要です。

私たちが未知のものに対して恐怖を感じるのだとすれば、何より大切なのは「情報」です。未知であったものに対処する方法を知った時、私たちの恐怖は急激に小さくなり、理性的な行動がとれるようになります。

ところが、そのような情報は、感情的になっている状態ではなかなか得ることはできません。

緊急避難モードの私たちは危機回避のための一次的な情報により重要性を感じるからです。

意識をして正しい情報を取りに行かなければ、適切な情報が目に留まらないのです。

そこで重要なことは、

「緩和」

です。

高いストレスを感じ、気が張り詰めている状態ではなく、リラックスした状態をつくること。それによって私たちの脳は知性を回復し、冷静な情報を認識できるようになります。

こんな時だからこそ、瞑想をしたり、散歩をしたり、ゆっくりと入浴をしたり、落ち着いて心穏やかに過ごす時間を大切にしましょう。

そして、周りの人に対してもそんな環境をつくるサポートを心がけてみてください。

それが結果として、この危機を乗り越える力を生み出します。

奈良有樹

この記事を書いた人

パフォーマンス・エンハンスメント・コーチング認定コーチ 2happiness代表 町田コーチングスクール主宰 プロコーチチーム「レ・アーリ」代表 コーポレートコーチングチーム「FUTICE COACHING」 代表 社会福祉法人の経理、経営管理として部門別採算制度の導入を主導し、数値の見える化、部門ごとの目標設定サポートなどを通して、1年で赤字2,000万円の事業所を6,000万円の黒字に変える。また、社会福祉法人における会計士監査制度導入への対応など、財務、経営管理の分野で豊富な実務経験を持つ。 他方、コーチとしても就労困難な方の一般就労や社会不安障害の方の社会復帰を実現するなど、過去ではなく未来にフォーカスするコーチングで多くの方の夢の実現をサポートしている。コーポレートコーチングの社内での実践経験も豊富で企業研修や、コーチングセミナー、コーチ向けの勉強会など様々な場所で講師としても活躍している。