『借りやすい決算書の作り方』(永野淳也著)社長に伝えたい銀行資金調達のカラクリ

銀行資金調達のカラクリを知れば、法人契約はすぐそこ

今日は、『借りやすい決算書の作り方』という本、税理士の永野淳也さんという方が書いた本を基に情報を出していきたいと思います。

法人保険において重要なキーワードの一つに「資金調達」という言葉がありますが、どこから資金を調達してくるかといった場合、多くの場合は銀行からです。ですから、資金調達において法人契約のために銀行を理解するということは、非常に重要なファクターであると考えます。今日はまず最初に銀行がどういう組織なのか、銀行というのはどういうものなのか、銀行というのはお金を貸す、貸さないというのをどういうふうに判断しているのかというお話をしていきたいと思っています。

まずは銀行の組織についてです。銀行の組織は基本的にはヒエラルキーがあります。車を買ったことがある方はお分かりになるかもしれませんけれども、例えば車を買いに行って値段が予算より10万円高いとした場合に、ちょっと交渉をしたとしましょう。そうすると営業の担当者だったり、その上司だったり、その支店の支店長だったり、もしくはさらにその上の本社の責任者というように何人かに分かれて人がいます。その担当者には、担当者ごとに割引をしていい決裁権の金額というのが、実は決まっています。一番下の担当者レベルであれば3万円、その上司であればもう3万円、その支店長クラスであればもう5万円までいいですよというようなところで、ランクが決まっています。

だから上の人を引っ張ってくれば引っ張ってくるほど割引が利くというのが、車のディーラーの交渉のコツなんですけれども、実は銀行でも同じようなことがあっります。銀行での交渉というと、融資の金額だったり、適応の金利の部分だとは思いますが、そういったものが、例えば担当者レベルから支店のレベル、そして本部、こういった形でランクが上がっていきます。全てを本店にお伺いを立てなくても、支店の範囲の中で決済できる金額というのがありますから、その範囲の中でどうやってより有利な形で銀行は融資をしていくかというところが、ポイントになってくるというわけです。

銀行がお金を貸す、貸さない、金利をいくらにするかというようなお話ですが、それは信用格付というものに則って判断をしています。金融庁が「金融検査マニュアル」というのを作っていて、全ての金融機関がそれを基にどういうふうに会社をランキング付けして、どういう金利でいくらまでお金を貸すかというのを取り決めています。数字で評価をして、その金額を決めていますが、それが実は実は非常に重要なことなんです。

その信用格付というのは何で評価をしているか、何で点数付けをしてるか。例えば社長の人となりとか、社長の人柄とか、社員に対して思いやりが深いとかっていう、ちょっと評価できないようなものではなくて(一部そういう面もありますが)。厳密に評価されているのは「決算書」です。ですから、赤字の会社がお金を借りづらいというのは、当たり前と言えば当たり前ですが、銀行はただ赤字だから駄目と言っているわけではなく、赤字の理由を数値にして点数にして評価して、だから駄目なんですというのをきちんと内部では計算をしています。

ただ、社長には言いません。社長はそういったことで審査をされていることは基本的には知らないことが多いです。ですから、私たちは銀行が会社をどういうふうに評価しているかというのを知り、決算書がそれによって評価されていることを知り、それを改善することによって、場合によっては今まで断られていた銀行融資を引っ張ってくることができる。今まで高い金利でお金を借りていたものの金利の交渉ができたといったようなことができるようになります。そうすると社長と私たちの関係、どうなりますか?当然良くなります。これによって紹介が出たり、新しい契約がもらえたり、より関係が深まって大きな大きな契約につながったりとするようなことは少なくないと思います。

税理士から出された、決算書の数字を鵜呑みにしている社長を救出せよ!

「借りられない決算書VS借りやすい決算書」についてお話をします。
皆さん、決算書を作るのは誰の仕事かはご存知ですか。本来であれば公認会計士の方が作るのが常ですが、今なかなか中小企業だと、公認会計士を顧問で雇うというのは現実的ではありませんので、税理士の方が作るというのが一般的ではないかと思います。

この決算書の数値というのは基本的には同じものですので、誰が作っても一見同じような決算書が出来上がると思う方が多いのですが、実は実は10人の税理士さんがいて、一つの同じ会社の決算書を作ったとしても、どうやら全部バラバラの決算書が出てくるのが常だそうです。社長にとっても我々にとってもちょっと信じ難い事実です。もちろんそこまでかけ離れた答えが出てくるということではありませんが、中小企業会計に関する指針というのがあり、これが税理士さんによって解釈が違ったりするわけです。別にいい加減に作っているということではなくて、実務担当者は一応会計のプロとして簿記というツールを使ってやっています。ただ、法令、基準、それから今までの慣習(これが結構やっかいな部分ですが)、それらに従って決算書を作っているという事実があります。それによって決算書にばらつきが出てしまうということがあります。これはおかしなことではないということです。

ただ一方で、借りられない決算書と借りやすい決算書があった場合、どうせならば借りやすい決算書にしてもらったほうがいいですね。ただ税理士さんは、特に借りやすいか、借りづらいかを考えずに作っているわけです。では何を意識して作ってもらえばいいかと言うと、前回お話しした銀行格付けけ、これを意識して決算書を作るかどうか。これが借りやすい決算書、もしくは借りられない決算書の分かれ目という形になります。

ですから、例えばどの勘定科目を使うのか、ないしは複数の処理の方法が認められている場合にどれを選択するのか。たったこれだけの違いによっても、借りられない決算書が借りやすい決算書に変わっていくということができるということです。これが実は財務を改善するための技、テクニックだったりするわけです。

では、具体的にどんな項目がやりやすいテクニックなのでしょうか。「小手先だけでもできるテクニックがある」とこの本に書いてあります。

法人保険契約につながる、P/L改善の6ステップ

当然のことながら、これはテクニック的な話ですが、粉飾ではありません。粉飾決算をしようという話ではありません。脱税をしましょうという話ではありません。合法かつシンプルにできる方法をどんどんお伝えをしていきます。

ここで「借りやすい決算書にするためには、各段階の利益をできるだけ上に引き上げる必要があります」と書いてあります。この各段階の利益、これについてちょっとまた改めて復習しておこうと思います。このサイトの中で、『なぜ社長のベンツは4ドアなのか?』という本も紹介しています。これに利益について書いてあるページがあり、分かりやすいのでここから紹介します。

利益には売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期利益、この5つがあります。各段階の利益というのは、この5つの利益のことです。この売り上げから売上原価を引いたものが売上総利益。売上総利益から販管費、これを引いたものが営業利益。営業利益から営業外損益、これを引いたものが経常利益、経常利益から特別損益を引いたものが税引前当期利益。そこから法人税、住民税、事業税支払った後のものが当期利益ということで、この5つの段階の利益があります。売上原価、販管費、営業外損益、特別損益、住民税等々の金額、これを減らすことによって利益を増やすことができますということです。すごくシンプルな話ではありますが、実際に経費を削るということではなく、勘定科目を変える、ないしは計上する場所を変える、これだけで損益計算書が十分きれいになるという話です。ちょっと具体的に方法を見ていきます。

まず営業外収益、これを売り上げに振り替えるという方法があります。本業とは違う売り上げというのが多くの場合企業にはあると思います。この場合雑収入という形にしていますが、なぜそういうふうにしているかと言うと、会社の定款にそのビジネスをやりますということがきちんと明記されていないので、本業の売り上げとして計上することはできないためです。例えば保険代理店をやっている車のディーラーだったり、板金の工場だったり、そんな損害保険の代理店をやっている所もあると思います。それから不動産とか家賃収入がある経営者さんなんかも少なくないと思います。こういったものを雑収入として売り上げに上げるのではなくて、きちんと定款にそれが本業ということにすることで売り上げが上がるということで、これだけでも随分大きな損益計算書の変化がありますので、ぜひこういったことも覚えておいていただきたいと思います。

あともう一つよく使われるのが、特別損失。これを上手に使うという方法があります。例えば役員や従業員の退職金が支払われたケースがあったと仮定します。計算ソフトの中には退職金という項目があるので、一般的に退職金ということで入れやすいですけども、実際のところそんなに多く退職が発生したりする会社というのは、多くはないです。特に中小企業であれば尚更です。その場合一時的な特別な費用ということで、特別損失という形に振り替えることができます。これを上手に使うことで、販管費からの金額を減らすことができますので、売り上げが増えるという形になります。販管費が減るということは営業利益が増えるということなので、決算書からしてみるとかなり大きなインパクトがあります。

この他にも例えば社会保険料を適正化するとか、役員の報酬を見直すとか、いくつか方法はあると思いますが、金額を変えずにまずは決算書を変えていく方法というのがいくつか挙げられておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

法人保険契約につながる、1年基準とは?

ここでは貸借対照表=バランスシート=BSの改善の方法についてお話しをしていきます。

BSを改善していく方法は大きく分けて3つあります。
1、流動比率を改善する方法。
2、自己資本比率を改善する方法。
3、その他。
3つの部類に分かれますが、その中で流動比率をアップする方法について、少しお話しをしていきます。

流動比率をアップする方法は実に6個ということで、結構たくさんあります。ありながら、会計基準を厳格に守ることだけ、それだけで流動比率というのがすごく改善されるので、この本書に言わせると裏技でも何でもないということです。「きちんとした勘定科目に当てはめていきましょう」という話で、見逃しているポイントがたくさんありますので、情報を出していきたいと思います。自己資本比率をアップする方法は2つ、その他というのがあるんですけれども、これはまた次回話をしていこうというふうに思います。

まず流動比率をアップしていく方法についてですが、この流動と固定です。流動資産と固定資産、この考え方をまずちょっと一緒に確認をしておきます。

基本的には1年基準というのがあります。流動資産であれば1年以内に現金化できるか否かというところで、できれば流動資産ですし、できなければ固定資産という形になります。流動負債と固定負債という形では、1年以内に返済が必要であれば流動負債、それ以上かけて返済してよければ固定負債という形になります。つまり、資産は流動性が高ければいいし、負債は流動性が低いほうがいいという形になります。

まずは有価証券と投資有価証券の違いを見ていきましょう。投資有価証券は固定資産と見られがちですが、基本的には有価証券の売買でもって利益を得ようとするのが目的ですから、売却すればすぐに現金化ということは可能になります。ですから、実際のところは流動資産というふうに計上するのが正しいということですが、多くの会社はこの投資有価証券という形で固定資産に入っていることが多いそうなので、この辺をチェックしてみてあげるといいと思います。

次が未払い金と長期未払金です。これは名前の通り、未払い金というのは1カ月程度で決済されるもの、長期未払金というのは1年を超えているものという形になりますので、これも本当にこの未払金がどのタイミングでの負債なのかというところ、流動性のものなのか固定性のものなのか、長いものであれば固定負債に移していきましょうという話です。

それから、預り金と長期預り金です。これも名前の通りです。

次に短期借入金と長期借入金、これを見ていきたいと思います。手形とか当座貸越とか、短期貸付みたいなものが出てくるとは思いますが、短借り、長借り、これによって流動負債なのか固定負債なのかというのが分かれてくるところですが、よくあるのが手形です。手形の借入がずっと返していないからということで、固定負債に入っていることが多いらしいですが、これは回収の期日は必ず記載されているので、3カ月から6カ月というふうになっていますので、短借りとして計上するのが正しい形になります。

あとは役員の借入金です。これについても社長が会社に貸し付けるというのはよくあるということだと思いますが、これは1年以内に必ず返すということがない限りは、固定負債として問題ないというふうに書かれております。実際にはなかなか、すぐ返すすぐ返すと思いながらもそうじゃない現状があると思いますので、その辺もよく見ていっていただきたいと思います。

あとは最後、リース債務というものがあります。支払期間5年とかにならない、契約によって長くなったりするものがありますので、これもやっぱり短期ではなく長期で見ていきましょうというものになっております。

以上5つをざっとご紹介させていただきましたが、本来であれば流動資産であるものが固定資産になっていたり、本来であれば固定負債でいいものが流動負債になっているというものが多々ありますので、その辺細かくチェックしてあげることでアドバイスする。これによって流動比率がアップして会社の貸借対照表が借りやすい決算書に変わっていくという現状があるということです。ぜひその辺をチェックして、社長にアドバイスをしてあげてみてはいかがでしょうか。

役員借入金が保険料の原資になる?

次に、自己資本比率を改善する技というのをお話ししていきます。自己資本比率ですが、この比率が高ければ高いほど会社は安定していると言われています。やっぱり50パーセント以上になってくると、かなりのいい会社と銀行も判断をしてくる数値になりますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

一方で中小企業の決算書を見ていくと、やっぱり役員の借入金、これが巨額になっているケースというのが少なからずあります。今回はこの役員借入金に関して、どういうふうに扱っていくと貸借対照表がきれいになっていくかというお話しをしていきたいと思います。

この役員の借入金は、役員が返済を要求することが明らかな場合を除き、自己資本に加えて自己資本比率を計算してもいいということにはなっています。ただ、これは銀行が実際にそうするかどうかは銀行の判断ですので、一時的な避難措置に過ぎないということです。では具体的にどういうふうにやっていくかと言うと、ここでは2つお話しをしますが、1つが債務免除、もう1つがデッド・エクイティ・スワップという話です。

債務免除というのは、これは会社側からの見た表現になりますが、役員借入金という債務を返さなくていいということです。債務の返済を免除されるということになります。社長から見ると債権を返してもらわなくて債権放棄という形になります。これはどういうメリットがあるかと言うと、返さなくて済んだお金、会社から見て返さなくて済んだお金は会社の利益になりますので、これが資本金に加わっていくということになります。当然のことながら利益になりますから税金がかかる可能性がありますので、この辺は専門家と調整をしていただく上でぜひ考えていただきたいというところですが、社長が債権を放棄するということで、自己資本比率を上げていくことが可能になるということです。これを返してほしい、返してほしくないと思うかは社長次第ですが、おそらくあまり返してもらおうと思っている社長はそんなに多くないのではないかと思います。ですので、十分に有効な手段ではないかと思います。

もう1つがデッド・エクイティ・スワップという方法ですが、デッド=債務です。エクイティ=株式です。これをスワップする=交換するということですが、債権者、社長からしてみると現物出資による増資というような形に差し替えるという形になります。多くの中小企業の場合、社長が100パーセント株主であるケースがあると思いますので、社長から借入金の債務を資本金、株式として交換していくということです。社長がこれを返せと言わない限りは実質的には何も変わらないのですが、会社は返済義務のある役員借入金を、返済義務のない資本金にすることができる。これによって自己資本が増加する。そして自己資本比率もアップしていくという手法があります。これもいろいろ注意事項がありますので、この本を読んでもらうか専門家と相談していただいてやっていただければと思います。うちの会社もこの手法を取り入れて、決算書をきれいにしたという話を聞いておりますので、ご興味があれば直接大坪に聞いてもらうというのもいいかもしれません。ぜひ専門家と相談した上で、こういう手法があるということを社長に提案していただければと思います。

昔は良かったけど、最近苦労している社長の救い方

次に3つ目のポイント、積立金の取り崩しということについてお話しをしていきます。この貸借対照を改善する意味ですが、やはり銀行に対して強い影響力を持つ必要があるということです。決算書も税理士に任せて作っておくと、例えば金融検査マニュアルに則った銀行格付けの評点が高くなるような形で作っているかと言うと、全然そんなことはなくて、これまでの慣習に則ってやっているだけなのです。例えば勘定科目をどれにするか、これを流動資産にするのか固定資産にするのか、たったこれだけの違いでも、銀行が見る決算書の評価というのは大きく変わってきます。ですから、これをわれわれ保険営業マンが知ることで、この情報を社長に発信することで大きな保険の契約・商談というところが一歩前進します。なぜなら会社が良くなるから、決算書が良くなるから、お金が借りやすくなるから。そうしたら会社はいろんなことに資金を投入して、会社を大きくするチャンスがあるからです。ぜひその機会を得るために、こういった決算書の財務改善の手法を取り入れていっていただいて、社長にアドバイスしてほしいと思います。

では、借りやすい決算書を作るための貸借対照表を改善する技として、最後積立金の取り崩しということについてお話をしていきたいというふうに思います。

会社の決算書を見てよくあるのが、自己資本はプラスだけれども、繰り越し余剰金、繰越利益剰余金がマイナスになっている会社です。この理由としては、最近は景気がちょっと低迷しているということもありますので、赤字が続いている会社も少なくないと思います。ただ、昔景気が良かった頃に頑張っていて利益が出ていましたと、過去利益が出ていた際に、純資産の部でその利益を別途積立金として積み立てているというような会社は多分少なくないと思います。銀行ではこの繰越利益剰余金、これがマイナスであるということを「繰り損あり」というふうに言うらしいのですが、この繰り損以上に積立金があれば、基本的には問題ありません、実質的には。ただ一方で銀行的、決算書的、格付け的に言うとどうかと言うと、問題があるということです。

どういうことかと言うと、格付けを良くするという観点からいくと、損益計算書の各段階の利益、それから貸借対照表の純資産の部、いくつか部門がありますけれども、どこを取ってもマイナスというのはないに越したことはないということです。それが繰越利益剰余金のマイナスであったとしても、ということです。純資産の部のトータルと、繰越利益剰余金、このマイナス、これがトータルでプラスならいいじゃないかというふうに考えがちかもしれませんけれども、もしトータルでプラスになるのであれば、ここでは積立金を取り崩して、繰越利益剰余金のマイナスを解消しておいたほうが決算書としてはいい。きれいになるし、格付け、それから借りやすいケースが非常に近づくということです。

いかがでしょうか。こういった形で貸借対照表を改善していく方法がいくつかあります。すごく簡単な方法もありました。社長にこういったところをお伝えすることで、ぜひ関係を近づけていただく、法人に貢献して元気になってもらう、その結果保険が売れるという流れに進めていっていただきたいと思います。

(今野洋)

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今野 洋

この記事を書いた人

【保険営業&ネットプロモーションコンサルタント】 -アーリーステージ、保険営業歴3年未満の方向けに、 売れ続けお客様から愛される 「無敵の保険営業」になるためのノウハウを発信- メールマガジン【週刊!無敵の保険営業】はこちらから



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