英国の保険募集人はナゼ激減した?新NISA導入で募集人の未来はどうなる!?

前回の記事では、NISAのモデルであるISAを導入したイギリスの生保業界について説明してきました。

特に保険募集人への打撃は大きく、その数は1/6にまで激減してしまいました。

何故ここまで減少する事態になってしまったのでしょうか。

今回は保険募集人の今後について考えていきます。

 

どうして英国の保険募集人は激減してしまったのか

 

イギリスの保険流通の花形だった保険募集人。
その花形が絶滅寸前まで追い込まれた時、生命保険会社に為す術はなかったのでしょうか。
それとも何の手立ても用意しなかったのでしょうか。

答えは後者。なんと生命保険会社は仲間である募集人を救う手立てを用意しなかったのです。

実際、生命保険会社が保険募集人のために動いたという事跡は残っていません。
会社としては募集人自身に任せた、というのが正しいでしょう。

当時、イギリスの生命保険会社は「一社専属の保険募集人チャネル」から「IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)チャネル」へ主要チャネルを移動させて、難局を乗り切ろうと動いていました。
それ故に保険募集人に対して何の手立ても用意しなかった訳です。

事実、このチャネル移動によって保険会社は難局を乗り切れました。

生命保険会社は何故このような対応をしたのか。
次の項目で詳しく見ていきましょう。

 

保険会社は保険商品を製造するメーカー

 

どうしてイギリスの生命保険会社は、保険募集人を切り捨てるような手段を選んだのでしょうか。

これについてはメーカーと販売チャネル(販売経路)の関係に例えると理解しやすくなります。
保険会社も「保険商品」を製造するメーカーのようなもの。

今回は身近な例として、飲料メーカーで考えてみましょう。

まず前提として、どの業界のメーカーであっても一番大切なのは売上です
メーカーからすれば販売チャネルはあくまで売上を伸ばすためのツールであり、販売チャネル自体に強い関心はありません。

飲料メーカーであれば、コンビニ、自動販売機、飲食店、オンラインなど…様々な販売経路を持っています。
販売経路を多く持つことは純粋な販路拡大に繋がるため、メーカーにとって必要不可欠な重要事項です。

また、売上を伸ばすためのツールとは言え、販売チャネルに依存しなければメーカーは商品を販売することが出来ません。
販売チャネルを複数持つ、つまり依存先を複数確保することで、その時々の情勢に合わせた柔軟な対応を取れるようになります。

この情勢に合わせた対応が今回の場合、生命保険会社の保険募集人からIFAへ主要チャネルを変えた対応に当てはまります。

メーカーは製造した商品さえ売れれば経営が維持できます。
言い換えれば「どの販売経路でも商品の売上が伸びればOK!けれど売上が期待できなければ駄目」だということ。

情勢とそれぞれの販売チャネルのリスクを鑑み、自社のダメージを最小限に抑えるために取捨選択するのは避けられないことなのです。

実は日本の保険業界でも既に、このような事態が発生したことがあります。

 

2007年 銀行窓口販売の全面解禁

 

保険募集人がチャネルの取捨選択を被った事案、それは2007年の銀行窓口販売の全面解禁です。

銀行窓販は2001年から段階的に緩和され、2007年に全面解禁されました。
全ての保険商品が銀行で販売可能になり、新たな販売チャネルを獲得する千載一遇の好機でした。
この好機を逃すまいと、保険会社は自社商品を取り扱ってくれる銀行を開拓するために奔走します。
そういった動きの中で、それまで会社に貢献してきた募集人や代理店はお座成りな扱いをされます。
募集人、代理店を差し置いて銀行専属の部署が新設され、その部署の傘下に置かれることすらなかったのです。
長年保険営業に尽力してきた保険募集人からすれば、このような対応には幻滅せざるを得ないものです。

とはいえ、保険会社は慈善団体ではなく営利法人。商品を売り上げ、利益を出さねば企業として成り立ちません。
ましてや自社に所属する保険募集人の稼ぎを少しでも増やせるよう、会社側が努力する義務もありません。

資本主義の世界である以上、仕方のないことなのです。

 

保険募集人は保険会社に期待せず、戦う準備をしよう!

 

前回のイギリスの事例、今回の銀行窓販の事例から保険募集人が覚えておくべき点が見えてきました。
それは「いざとなったら保険会社が守ってくれる、助けてくれる」と期待しない方が良いということ。

どんな状況でも、販売チャネルとして能力が無くなったと判断されたら、保険会社の救済は期待できません。

では、保険会社の救済が期待できないとなると、保険募集人は来たる新NISA導入をどう乗り越えればいいのでしょうか?

前回の記事で説明したように、政府は資産所得倍増プランの目玉政策として新NISAを掲げています。
具体的な目標を公表している以上、岸田政権は「成長と資産所得の好循環」を実現するために施策を遂行すると思われます。

仮に反対の声を業界団体が挙げたとしても、おそらく抑え込まれてしまうでしょう。

 

保険募集人はこのまま、暗い未来を待つしかないのでしょうか。

 

そんなことはありません!

 

その実、イギリスではISA導入後、生き残った少数の保険募集人たちが大きな成功を収めています。
ライバルの人数が減ったことで利益を独占できるようになり、ISA導入以前より盛栄することが出来たのです。

実は現在の日本の保険市場においても、NISAの変革を迅速に察知し、先回りして動いている保険募集人達が僅かながらいます。
彼らは現時点で顧客拡大の武器を最大限活用し、新NISAの変革に対抗しようと備えています。

当協会長はそういった方々と手を組み、“保険募集人の絶滅危機”に立ち向かうレジスタンスのような組織を作ろうと考えています。
仲間で協力して知恵を絞り、賢く戦うことでイギリスのような成功を目指します。

いかがでしたか?
前回の記事と合わせて、保険募集人を取り巻く厳しい事実が分かりました。

新NISAの影響がどのように波及するかは、まだまだ未知数です。
イギリスとは異なる変化が起きる可能性も考えられます。
だからこそ、災害対策のように何が起きても対応できる準備をしておくことが大切ではないでしょうか。

是非、今のうちから顧客拡大などの事前対策をしていただければと思います。

2回に渡る長い内容をここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

【編集部】

この記事を書いた人