新NISA導入で生保業界がピンチ!
英国のISA導入から見えてくる保険営業の未来とは!?

来年、2024年から新しいNISAが始まります。

岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の目玉政策です。

この新NISAによって、保険営業の世界はどうなるでしょうか。

NISAのモデルとなったイギリスのISA制度。
実はこのISAによって、イギリスの生保業界は大変なことになっているのです!

今回は“イギリスの生保業界がISAによってどうなったか”について見ていきます。

 

近代生命保険業発祥の地であり、世界第3位の生保市場だった英国

 

近代生命保険業はイギリスから始まったと言われています。

17世紀。セントポール寺院の牧師たちは、自身の死後に残された家族の生活を心配していました。
もしもの時があっても、家族の生活を守れる体制を作ろう。
こうして牧師全員で作られたのが「香典前払い組合」です。
組合員の牧師たちが毎月一定の金額を払い、積み立てていき、遺族に渡す香典の額を大きくする仕組みです。

これが近代生命保険の始まりとされています。

このような背景から、イギリスの生保市場は非常に元気。
生命保険料の市場占有率が8.9%、世界第3位の時もありました。
(2020年時点では3位は日本10.5%、4位はイギリス8.5%)

そして1999年、イギリスに変化が訪れます。

当時のイギリスの生命保険加入率は約70%程の水準でした。
日本の90%以上には及ばないとは言え、非常に高い数値です。
この高い加入率が、同年にISAが導入されてから急激に下落していきます。

なぜ急落したのか。大きな理由として英国民の投資熱が活発になったことが挙げられます。
国民に投資熱が湧いたことで、それまで生命保険に充てられていた資金が、ISA等の資産運用に回され始めたのです。
これにより、90年代半ばから徐々に下降していたイギリスの生命保険加入率は、更に勢いを増して下落していきます。
データにより差異がありますが、約70%あった加入率は20~40%程度まで落ち込んでしまいました。

 

保険募集人の試練

 

FP・保険募集人は、ISA導入前は正に全盛を誇っていました。
イギリスの保険流通では、保険会社所属の保険募集人が大多数を占めており、生命保険業界の花形でした。

しかしISAが導入された2000年代以降、イギリスの生命保険市場はドンドン縮小していきます。
これにより、彼ら保険募集人の収入が激減してしまい、多くの保険募集人が次々と辞めていく事態に。

最終的に、保険募集人の数は全盛期の1/6まで減ってしまう結果になりました。

これは保険募集人だけでなく、FPにも大きく関わる問題です。
保険以外の仕事があるとは言え、保険営業の仕事を失うのは大きな痛手です。
もし保険営業の仕事が壊滅的ダメージを受けたら…想像するだけでゾッとしてしまいますね。

 

イギリスと同じ試練が日本にもやって来る!?

 

2022年11月、岸田政権は「資産所得倍増プラン」を発表しました。
プランの目標では「5年間で少額投資非課税制度(NISA)の総口座数を3400万、投資額を56兆円までそれぞれ倍増させる」としています。
2023年3月時点での総口座数は約1873万口座、投資額は約31兆円です。

また、一般NISAと積立NISAを一本化し、恒久化することも表明されています。

政府は上記の制度の拡充によって、家計金融資産の50%以上を占める現預金を投資に移行させ、「成長と資産所得の好循環」を実現させたいと考えています。

このような具体的な政策目標が発表されているため、保険業界に影響が出るのは確実でしょう。

保険だけでなく証券や資金調達、財務など、守備範囲が広いFPは立ち回りを工夫できますが、20万人の専業保険募集人はそうはいきません。

イギリスのように、何の助けもないまま、真っ暗な未来に進むしかないのでしょうか?

次回の記事では、新NISA導入で保険募集人の今後がどうなるかを詳しく考えていきますので是非ご覧ください。

それでは次回の記事でお会いしましょう。

 

【編集部】

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