私は外資系生命保険会社で営業3年、営業所長を4年ほど行っていました。営業3年で営業所長になれたので、実績はあった方だと思います。年収も2年目からは軽く1,000万は越えていましたし、営業所長になってからは2,000万に届こうかというくらいでした。
私のお客様の見つけ方は主に飛び込みとテレアポでした。そこからそのお客様の友人、知人、親類、家族をご紹介いただいて、マーケットを拡大していく手法です。併せてアッパーマーケットと言われる、いわゆる富裕層へ出会うために紹介取得の方法を探っていた日々でした。商談は大体お客様のご自宅かご職場でさせていただいていました。ご自宅で商談をさせていただくと、大抵ご家族またはご夫婦揃っていらっしゃるので、決断を迫るクロージングもしやすかったですし、ご契約いただける率も高かったです。1度でもお会いして商談させていただいた方には契約の有無に関わらず、季節ごとに葉書(年賀状や暑中見舞いなど)を出したり、誕生日が近くなると電話を入れて近況のお伺いをするというような割と普通のフォローをしていました。
そもそも生命保険業界になぜ飛び込んだかと言うと、価値観の転換があったからです。私自身、生命保険というものに価値を見出していませんでした。生命保険会社に勤める前は不動産営業だったのですが、その時のお客様から「1度説明を聞いて欲しい」とスカウト紛いのことをされ、私も「もしかしたら家を買ってくれるかも」という下心を持ちながら説明を聞きに行きました。そこで見事に「生命保険は必要ない」から「生命保険って大切」と宗旨替えさせられて、入社に至りました。私自身が生命保険は大切なものであると思わされていたので、入社まではトントン拍子で話が進んでいきました。入社前に生命保険というものの価値観を変えられていたので、入社時も「こんなにいいものなのだから、多くの人に勧めよう」という一念しかなかったと思います。この思いで仕事をしていたものですから、とにかくガムシャラに仕事をしていました。ほとんど休日はなかったと思います。会ってもらえる人がいれば休みも返上しましたし、深夜でも早朝でもアポがあれば馳せ参じました。
ただ私は私の真似して働いて下さいね、とか休んでる暇があったら働いて少しでも多くの人に会ってくださいねなどと言うつもりはありません。このことで失敗しましたから…。今になって冷静に考えればこんなこと体が続くわけないんです。楽しいからと思ってモチベーション上げて仕事してたんですけど、体が悲鳴をあげました。ある日の朝起きたら体がとてもだるいんです。熱を測ったら40度を越える高熱が出てました。そしてその高熱はその後1ヵ月ほど続きました。解熱剤で熱を下げても38度を下回らなくなっていて、病院で検査を受けたら何らかのウイルス感染としか原因が見つかりませんでした。
仕事が出来なくなりました。もちろん契約も取れません。当時私が所属していた営業所の見込み売上も下方修正の連続でした。私のせいにされました。最初は心配してくれるのですが、1週間過ぎ、2週間過ぎ体調の回復の兆しが見えないとなると、無理やり解熱剤で熱を下げて出社した際に嫌味を言われたり大げさにため息をつかれたりと精神的にダメージを与えられました。朝礼で吊るしあげられ、さらし者にされました。同僚達から憐れみと嘲笑をいただきました。自己管理が甘かったのだとは思います。しかし、そこから追い込まれて体調の回復が遅れたのも事実だと思います。なぜなら、すがる思いで受診した心療内科でようやく病名がついたからです。「自律神経失調症」でした。このままでは危険なので無理に解熱剤を使って熱を下げるのではなく、思い切って会社を休むように言われ、診断書をもらって休職しました。休職期間の最初のうちは仕事が気になって仕方なかったのですが、段々とそれもなくなり、いつしか熱も下がって体調も万全になっていきました。
休職期間中に色々なことを考えました。転職もかなり本気で検討しました。ただこのまま嫌味を言われっぱなしで逃げるのも癪に障ると思い、「ダメならダメでいいや」と開き直って職場復帰をしました。そこからは自分のペースを考えて、無理のないスケジュールで仕事をこなしていくことを第一に考えました。そこからは突出することはなかったですが、平均以上の数字をコンスタントに積み上げる事ができ、体調も崩すことはなくなりました。よく体は資本と言いますが、まさにその通りだと思います。私は幸いなことに(今思えば)無理をして数字を積み上げていた頃より、コンスタントにコツコツと数字を積み上げていた方が年収も上がりました。営業所長にもなれました。無理をして体を壊して、その後仕事ができない可能性を考えると、ブレーキをかけられたのは結果的に良かったと思います。生命保険営業ってとてもきつい側面があります。もしかしたら良い側面は一面だけで、その他の面は全てきついことなのかもしれません。ただ、色々なことを乗り越えて、継続していると良い事はあるのかなと私は思います。ただきついことを乗り越えるのに無理は禁物ですのでくれぐれもご注意ください。