高圧的なお客様に間違えた見積りを出してしまい…自動車営業の失敗談。

営業マンの体験談

高圧的なお客様に間違えた見積りを出してしまい…自動車営業の失敗談。

私は自動車販売関係の業界で仕事をしていました。
もう10数年前の事に成ります。

個人のお客様、法人様へのアプローチ、飛び込み訪問、店頭接客応対。
車を全然知らない方や、マニアック系の方まで、実に様々なお客様に巡り合いました。
関連業界へ転職しましたので、自動車売買関係の営業職のキャリアは12年位です。
正規販売店在籍時は店舗サブリーダーまで務めました。

労働時間は押しなべて12時間くらい。とは言っても、一日の仕事を凝縮すれば半日で終了する位の量でした。
拘束時間が長いのです。個人のお客様へのアプローチはお客様の都合に合わせる形になるので、どうしても不規則になります。

給料・年収は同年代のそれよりは多かったし、フルコミッションではないので、安定していましたが、ノルマがきつかったのは確かです。

何故こんなきつい仕事に就いたのか。
そんな素朴な疑問もありますが、簡単に言うと、
父親の職場との取引関係における「仲介役」の様な形で入社する事に成りました。

大学生時代は広告業界に就職したいと地元に戻って活動をしていましたが、中々縁がなく(小さい街ですから)、自動車には全く興味がないままに業界に入る事に成りました。

「自動車販売会社って何をやるの?」と言うのが入社した当時の気持ちでした。
恥ずかしい話ですが「タイヤ?ハンドル?査定?オイル交換?車検?商談?」と右も左も分りません。
何度涙を流して悔しい思いをした事か。
「いつ辞めようか」。帰宅して風呂に入りながらずっと考えながら過ごす日々でした。

三年目までは鳴かず飛ばずの成績で、店長や先輩に随分助けて頂きました。日々のノルマの達成の為に一杯一杯で、自分の行動を顧みる余裕などなかったのです。それでも強みである「守り」を中心に顧客のフォローに力を入れて行きました。

丁度、5年目を迎えるあたりから、フォローに力を入れていたお客様からの紹介や担当地域のお客様の来店が増えて、そのご家族の車をはじめとしたリピート受注が増えました。

そうした経緯を踏まえつつ、何となくお客様との接点が増え、喜んでいただける事や役に立っているんだなと実感する場面が増えました。
お客様が困っている時に電話をかけてくれる。
自動車に関する事だけではなく、プライベートな相談も持ち掛けられる。
商売の枠を超えて人間的な繋がりを感じるようになりました。

自動車の営業って、イメージ的には自由な感じを受けると思いますが、如何に自分を律するか勝負です。一日の予定と一ケ月の予定台数を如何にこなすか。それをコンスタントに守っていくかが勝負となります。
在籍していた会社はトヨタ系列の販売店です。会社によって仕事のやり方は違うかもしれませんが、各営業マンには担当地域が割り当てられ、その地域のお客様を定期訪問しながら、受注を獲得して行くスタイルです。
基本的には既存のお客様へのルート的なアプローチをし、店頭の当番をする時は、来店する不特定多数のお客様に対応する様な柔軟な対応も求められます。即断即決型の商談も求められますし、長期的な展開を考えながらのフォロー営業もします。外へ出て訪問する事もあれば、時間帯によってはテレアポも当然あります。どちらかと言うと「売って終わり」ではないので、販売してから人のお付き合いが始まるというスタンスなので、「守り」も必要な要素になってきます。
時には、サービスフロント(修理受付係)的な役割も担いますので、整備以外は何でもこなす。
これが自動車営業の時のスタイルでしょうか。

そんな「花形」の営業職も実は、日々滅茶苦茶地味な活動も強いられます。
所謂クレーム事への対応や失敗の繰り返しから来る社内的なプレッシャーを、どのようにかわしていくか。その連続かも知れません。

あるお客様の商談で大失敗をしました。

非常に高圧的なお客様で最終的には店長に同行してもらい、トラブルを回避しながら受注を上げた訳ですが、見積を作る段階でオプションがどんどん増えて行ったり、メーカーオプションがコロコロ変わったり。。
そうこうしている内に2wdの見積が4wdに代わっていたのです。

金額にして25万円程の差額が出てしまったのです。

これはパソコンで見積書を作る作業でいつの間にかすり替わってしまった可能性がある訳ですが、高圧的なお客様とのやり取りで、緊張しすぎて聞き間違えて見積を作ってしまった可能性が有ります。
お客様は4wdが希望。なのに見積上は2wdな訳ですから、実際には25万円高の金額で成立しなければならない商談が…。
なんやかんやクレームを付けられるような形になり、値段が付かない下取り車に25万円分の差額をオンするような形で社内的に解決しました。

流石にその時ばかりは、始末書もので訓戒の処分を受けました。
意図的にやった訳では無いですが、結果が全ての営業マンですから、やむを得ません。

また、そうしたお客様に販売したという事は、アフターフォローでも細心の注意をしなければならず、退職するまで大変なプレッシャーを受けた事は言うまでもありません。

営業マンであれ、技術職であれ、大なり小なり失敗はつきものです。それは仕事を離れたプライベートな生活の上でも付いて回る事です。小さな失敗や選択ミスも多くあります。
しかし、大概の事は乗り越えられますし、「その程度の事」と割り切り失敗に対する免疫も出来ます。
仕事上で失敗すると、経費的な問題や商売上の人間関係が絡んできますので、重大に受け取られがちですが、日々の生活の中でも同じような事は起きているのです。

自動車販売店に在籍していた当時の常務さんがこんな事を言われました。

「地上で起きている事は地上で解決できる」

言われてみればその通りで、会社で起きている事は会社で処理できるのです。
また、転職した先の会社でこんな事も教えて頂きました。

「人間だもん、失敗するのが当たり前だろ。完璧は無理。」

こうした言葉に、幾度となく助けられ、気持ちが楽になった事か分かりません。失敗はある。でも、それを如何リカバリーするかで成長できるし、真価が問われるのです。
小さな失敗も見逃さず、気を配って行けば、周りが認めてくれる人に成れる。
信頼が構築されるのです。

年齢を重ねて来ると、次第にそうした事がジワジワと分かってきます。実行できるかどうかより、気持ちをそういう風に持てばいいのです。
失敗する事を前提に行動するのは良くないが(安易に失敗しても良いと解釈する事は不味いが)、結果失敗しても、それはそれで対応すれば、巡り巡って成果が付いてくる。

そういうスタンスをとって、自分に自分でプレッシャーをかけるのではなく、
「ゆるい」姿勢で臨む事を、敢えてお薦めします。

そうすると、何か物事が起きても「余白」の部分で対応が出来ます。

でもそれは、一定の経験を積んでからの話ですよ。
最初から緩い仕事の仕方はご法度ですから、勘違いしないでくださいね。

まずは、頑張って額に汗して下さい。
話はそこからです。